◎エルサルバドルは昨年9月、世界で初めてビットコインを法定通貨に採用した。
エルサルバドルの進歩主義者であるブケレ(Nayib Bukele)大統領は30日、法定通貨のビットコインを150万ドル以上買い増し、国民に「ビットコインは未来だ!」と呼びかけた。
エルサルバドルは昨年9月、世界で初めてビットコインを法定通貨に採用した。
ブケレ氏は暴落中のビットコインを1万9000ドルで80枚購入できたとツイートし、世界の投資家に感謝した。「安く売ってくれてありがとう!」
ブケレ氏によると、現在のビットコイン取引価格は政府がこれまでに購入した1億560万ドルの半分以下だという。
エルサルバドル政府のビットコイン取引を追跡している「Nayib Bukele Portfolio Tracker」によると、エルサルバドル政府が昨年9月以降に購入したビットコインの平均価格は「1ビットコイン=約4万6000ドル」で、5900万ドルの損失を出しているという。
ただし、ブケレ氏は手持ちのビットコインを売却していないため、損失は確定していない。
ブレケ氏は今月中頃にビットコイン価格が2万ドルを下回った際、国民にチャートを見ないよう呼びかけた。「皆さん、チャートを見ないで人生を楽しみましょう。あなたの資金は安全です。その価値は弱気市場の後に跳ね上がり、あなたの資産を倍増させるでしょう」
「いいですか。鍵は忍耐です。完璧な株式は際限なく上昇し続けます。あなたはそれを持っているだけでいいのです」
ブケレ氏は昨年、ビットコインを法定通貨に採用した世界初の指導者となり、今年5月には「底値で買うことが重要」と自慢していた。しかし、取引価格は下落し続け、チャートを突き抜けた。
ゼラヤ(Alejandro Zelaya)財務相は30日、「政府はビットコインを売却していないため、損失は出ていない」と述べ、国民の不安を払拭しようとした。
しかし、ほとんどの企業はたとえ不良資産を売却していなくても、会計士が「未実現損失」と呼ぶ価値を評価減するものだ。
ゼラヤ氏は、ビットコインの急落は重要な問題ではないと主張し、その投資額は政府予算の0.5%未満であると説明した。
しかし、ブケレ氏を信じてビットコインに投資した一部の低中所得者層は頭を抱えているようにみえる。なお、エルサルバドルの人口の20%は1日5.50ドル未満で生活する貧困層である。
国際通貨基金(IMF)は今年1月、エルサルバドル政府にビットコインを法定通貨から除外するよう勧告した。ブケレ氏はこの勧告を拒否している。
IMFはブケレ氏がビットコインを法定通貨に採用すると、1億5000万ドルの信託基金を廃止し、その未使用資金を返還するよう勧告した。
IMFは株式のように激しく変動するビットコインは法定通貨に向かず、犯罪にも利用される可能性が高いと懸念を表明している。
しかし、ブケレ氏はビットコインを称賛し、専用銀行口座を開設した人に30ドル相当のビットコインをプレゼントし、ドルではなくビットコインで買い物をするよう呼びかけている。
エルサルバドルは中米で最も貧しい国のひとつであり、2020年の名目GDPは前年比10%減だった。2021年は若干盛り返している。