◎西側諸国はロシアの警告を一蹴し、ウクライナ支援を強化している。
ロシア政府は1日、ウクライナに長距離兵器供与を決めたバイデン(Joe Biden)大統領を厳しく非難し、米国との全面戦争もあり得ると示唆した。
米国はウクライナ支援の一環として、高機動ロケット砲システム「ハイマース」の供与を決定した。射程は70~80kmと伝えられている。
ロシアのペスコフ(Dmitry Peskov)報道官は1日、「米国は火に油を注いでいる」と指摘し、ウクライナへの長距離兵器供与は米ロの直接対決に発展するリスクを高めると警告した。
またペスコフ氏は、さらなる兵器供与は和平交渉にも深刻な影響を与えるという見方を示した。
西側諸国はロシアの警告を一蹴し、ウクライナ支援を強化している。
ドイツのショルツ(Olaf Scholz)首相は1日、ウクライナに防空システムを供与すると発表した。
ショルツ氏は議会演説の中で、「IRIS-Tシステムはドイツが保有する最も近代的なシステムのひとつで、ロシアの空爆からウクライナの街全体を守ることができるだろう」と語った。
ロシアのラブロフ(Sergei Lavrov)外相は訪問先のサウジアラビアで米独の兵器供与に反対し、「バイデン大統領の発表は第三国を紛争に巻き込む可能性を高める」とけん制した。
一部の専門家はハイマースの威力に太鼓判を押している。それはウクライナの地上部隊に遠く離れたロシア軍を攻撃する力を与える。
バイデン氏は戦争が第三国に飛び火する可能性を恐れ、ロシア領内を攻撃できる兵器の供与を渋っていた。
しかし、ブリンケン(Antony Blinken)国務長官によると、ウクライナはロシア領内に攻撃を仕掛けないと確約したという。
バイデン氏は1日、強力な支援はロシアに対するウクライナの交渉力を強化し、外交的解決の可能性を高めると述べた。
カール(Colin Kahl)国防次官はハイマースについて、「射程距離を伸ばした精密誘導システムであり、ウクライナ軍を危険にさらすことなく標的を攻撃できるため、非常に有益と考えている」と説明している。
ハイマースは70~80km先の標的を正確に狙い撃つことができるとされ、ウクライナ軍が使用している大砲や西側から供与された榴弾砲よりはるかに遠くの敵を攻撃できる。また、ロシア軍が使用している同等品より精度が高いとされる。
ロイター通信はホワイトハウス当局者のコメントを引用し、「ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領からこの兵器でロシア領内を攻撃しないという確約を得たため、供与が決まった」と報じている。
バイデン氏も「米国はロシアを攻撃するロケットシステムをウクライナに送るつもりはない」と明言しており、ゼレンスキー氏は1日に放送された米メディアのインタビューの中で、これを認めた。
ゼレンスキー氏は米ニュースマックス(Newsmax)のインタビューの中で、「我々はウクライナ領内にしか興味がない」と述べている。
しかし、ペスコフ報道官はゼレンスキー氏の発言を信用しないとした。また米国の兵器供与については、「米国はウクライナに最後のひとりまでロシアと戦うよう促し、火に油を注いでいる」と指摘した。
ハイマースは1日に公式発表される7億ドルの追加軍事支援の目玉になる予定。今回の軍事支援にはヘリ、対戦車兵器、戦術システムを搭載した車両、予備部品なども含まれる。
米議会が可決、成立したウクライナ支援予算は530億ドルを超えている。