◎イラン革命防衛隊はヘリコプターで石油タンカーを急襲した。
2019年4月19日/トルコの港に停泊するギリシャ船籍の石油タンカー(Dursun Çam/AP通信)

イラン当局は27日、ペルシャ湾でギリシャ船籍の石油タンカー2隻を押収したと発表した。

国営メディアによると、イラン革命防衛隊はヘリコプターで石油タンカーを急襲したという。

この襲撃は米国が地中海でイラン船籍の石油タンカーを押収したことに対する報復のようにみえる。米当局は今週、ギリシャと協力してイランの原油を押収した。

米国は2018年にイラン核合意から撤退し、イランの外国資産を凍結したうえで、イランの原油、天然ガス、石油化学製品などに対する投資を禁止した。しかし、イランは制裁発動後も中国などの同盟国に原油を輸出し続けている。

イラン核合意をめぐる欧州主導の交渉は完全に行き詰まっており、イランが兵器級のウラン濃縮を開始するという懸念が高まっている。

国際原子力機関(IAEA)が3月初めに公表したレポートによると、イランは60%の高濃縮ウランを30kg以上の保有し、その量を増やし続けている。

<ウラン(U-235)の濃縮度>
▽0.7%:標準
▽2~5%:原子炉燃料(軽水炉用)
▽3.67%以下:イラン核合意の規定値
▽20%以上:高濃縮ウラン
▽90%以上:核兵器用

イラン当局は石油タンカー2隻の違反行為を非難し、押収を正当化した。国営メディアによると、革命防衛隊による急襲が行われる数時間前、イラン政府は米国の押収を支援したギリシャに懲罰的行動を取ると予告したという。

ギリシャ外務省はアテネのイラン大使に強く抗議し、押収を「海賊行為」と非難した。

同省はタンカーと乗組員の即時解放を求め、「押収は二国間関係や、EUとイランの関係にも悪い結果をもたらす」と警告している。

同省によると、イラン軍のヘリコプターはイラン沿岸から約22海里離れた国際水域でギリシャ船籍の「デルタ・ポセイドン(Delta Poseidon)号」を急襲したという。

同省は「武装した男たちが乗組員を拉致した」と述べている。もう1隻の乗組員も同様の手口で拘束された。

AP通信はギリシャ政府関係者のコメントを引用し、「押収されたのはデルタ・ポセイドン号とプルーデント・ウォリアー(Prudent Warrior)号」と報じている。

ギリシャ当局は乗組員の国籍は明らかにしていない。2隻はイラクの石油ターミナルで原油を積み、ギリシャに向かっていたと伝えられている。

一方、米CNNニュースなどによると、米国防総省の関係者はこの2隻について、「イランの領海に近づいたが、入ってはいないようだ」と述べたという。ギリシャは国際水域でシージャックされたと主張している。

イランは自国のタンカーや船舶の押収に何度もシージャックで反撃している。

2019年にジブラルタル海峡で石油タンカーをイギリスに押収された際には、英ステナ・インペロ(Stena Impero)号を国際水域で拿捕した。イギリスはその後石油タンカーを解放したため、イランもそれから数カ月後に解放した。

イランは昨年、韓国に数十億ドルの海外資産を凍結された報復として、韓国籍タンカーを押収し、数カ月間拘束した。

また、UAE(アラブ首長国連邦)沖でパナマ船籍のタンカーを襲撃して一時拿捕したほか、11月にもベトナムのタンカーも拘束している。

2022年2月11日/イラン、首都テヘランの広場で開催された1979年の革命を祝うイベント、米国の国旗を燃やす人々(Getty Images/AFP通信)
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