◎デモ隊は致命的な経済危機を招いたラジャパクサ大統領に辞任を要求している。
スリランカのラジャパクサ(Gotabaya Rajapaksa)大統領は14日、新内閣の大臣4人の就任を承認した。
ラジャパクサ大統領の兄であるラジャパクサ(Mahinda Rajapaksa)首相は今週、大統領府近くで抗議していたデモ隊と親政府勢力の乱闘で死者が出たことを受け、辞任した。
ラジャパクサ大統領は野党のベテラン政治家であるラニル・ウィクラマシンハ(Ranil Wickremesinghe)氏を新首相に任命し、デモ隊の様子を伺っている。
4人の新大臣は全員与党スリランカ人民戦線(SLPP)から選出された。
SLPPの議員数人は14日にラジャパクサ大統領と会談したと伝えられている。
SLPPの報道官は地元メディアの取材に対し、「議員たちはラジャパクサ大統領にウィクラマシンハ首相を支持すると伝えた」と語った。
ラジャパクサ大統領は先月、野党に挙国一致内閣の発足を提案したが、最大野党はこの提案を却下し、兄弟に引退を勧告している。
スリランカは1948年の独立以来最悪の経済危機に直面し、500億ドルにのぼる対外債務のうち70億ドル近くを今年中に返済しなければならない。しかし、外貨準備は底をつきかけている。
政府は輸入品の代金を支払うことができず、食料、燃料、医薬品、その他のありとあらゆる日用品が不足している。国民は食料品店に列を作り、調理用のガスを探し求めている。
ラジャパクサ大統領は、国際通貨基金(IMF)との支援交渉が終わるまで対外債務の処理を停止すると発表し、投資家の不安をあおった。
デモ隊はラジャパクサ大統領に辞任を要求し、その一部は大統領府近くの広場に野営していた。
政府は先週末に今年2回目の非常事態を宣言したものの、デモ隊は9日から始まった夜間外出禁止令を無視し、政府高官の自宅などに火を放った。
今週初めに勃発したデモ隊と親政府勢力の乱闘では少なくとも9人が死亡、200人以上が負傷したと伝えられている。
ラジャパクサ大統領は放火や暴力が各地で続いていることを受け、治安部隊に暴力に加担したとみなされる者を射殺するよう命じた。
一方、ウィクラマシンハ首相は就任以来、19カ国の外交官と協議し、スリランカの経済危機を緩和する新たな国際的枠組みを形成する可能性について議論したとされる。
首相府によると、ウィクラマシンハ首相は米国、中国、日本、ドイツ、インド、EUの外交官らとの会談でスリランカの経済状況について説明し、新たな枠組みの概要を紹介したという。
ウィクラマシンハ首相は14日に公開したビデオメッセージで、「同盟国から良い反応を得たが、合意にはさらなる議論が必要」とした。
またウィクレメシンゲ首相は、「今後2〜3週間は燃料や肥料などの不足が続き、経済的に最悪な状態になる」と警告する一方、国際的な支援が得られれば、2〜3ヵ月後には危機を緩和できるという見方を示した。