◎東部ドネツク州マリウポリはロシア軍に包囲されており、壊滅の危機に瀕している。
EU加盟国の外相は21日、ウクライナに対するロシア軍の侵攻を「戦争犯罪」と非難したが、ロシアのエネルギー部門に対する制裁には消極的な姿勢を示した。
ドイツのベアボック外相は記者団に、病院を含む民間施設への攻撃が増加していると述べたうえで、ロシアの行為を戦争犯罪と糾弾した。
外相会議の議長を務めたジョゼップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表もマリウポリで起きていることを戦争犯罪と厳しく非難した。「ロシア軍は街を破壊し、爆撃し、市民を無差別に殺しています...」
東部ドネツク州マリウポリはロシア軍に包囲されており、壊滅の危機に瀕している。市当局によると、これまでに民間人少なくとも2,300人以上の死亡を確認し、その一部は集団墓地に埋葬せざるを得なかったという。
ハーグの国際刑事裁判所(ICC)は戦争犯罪の証拠を集めているが、ロシアはICCの管轄権を認めていない。
アイルランドのコベニー外相は、「今ウクライナで起きている残虐行為の説明責任を追及する必要がある」と記者団に語った。
またコベニー外相は、「EU市民はなぜ戦争を止められないのかと激怒している」と述べ、残虐行為の説明責任を追及しなければならないと強調した。
コベニー外相はジョー・バイデン大統領の到着前にEUは新たな制裁を策定するだろうと予想した。G7、NATO、EUの首脳は24日にブリュッセルで会談する。
EU諸国の対応は後手に回ることが多いが、今回のウクライナ侵攻に関しては、ウラジーミル・プーチン大統領、高官、親クレムリンのオリガルヒを含む数百人、企業、団体、銀行に厳しい制裁を科してきた。
しかし、多くのEU諸国がロシアの天然資源に依存していることを考えると、ロシアのエネルギー部門に制裁を科すかどうかは不透明と言わざるを得ない。
コベニー外相は、「エネルギー制裁が今週(サミット)の議題に上ることはないだろう」と述べた。
ドイツを中心とする国々は燃料価格の高騰やロシアが欧州への天然ガス輸出を停止するのではないかという懸念があるため、新たな制裁は当面見合わせるべきと示唆している。また、生物化学兵器の使用など、新たな残虐行為に備えて制裁を温存しておくべきという意見もある。
しかし、ロシアおよびベラルーシと国境を接するリトアニアのランズベルギス外相は、「制裁の出し惜しみ」に不快感を示した。「出し惜しみしている時間も余裕もありません。子供が爆撃され、撃たれ、殺されています。ウクライナへの援助に疲れを感じている時間などどこにもありません」
ランズベルギス外相は、「EUはロシアの主要な収入源である石油をターゲットにしなければならない」と述べた。
またランズベルギス外相は、「EUは厳しい制裁に移行する判断基準となるレッドラインを設定しなければならない」と強調した。「都市部や住宅への砲撃がイエローであれば、レッドは何ですか?生物化学兵器?無差別爆撃?」
バルト三国のリトアニア、ラトビア、エストニアは、東欧のNATO加盟国の防衛力を強化する必要があると述べている。
ランズベルギス外相は「ウクライナ戦争で東部地域の安全保障は激変したため、それを踏まえてバルト三国の防衛計画を精査する必要がある」と語った。
ボレル上級代表によると、EUはウクライナへの兵器供給や人道支援のための追加予算5億ユーロ(約660億円)を承認した。