コンテンプト・オブ・コート 7-2
アンカレッジ市内。マイクの事務所。
壁際のテレビには、コールの勝利演説が映っていた。
画面の中で、コールは支持者たちに向かって頭を下げている。背後には選挙スタッフが並び、会場には拍手が響いていた。
マイクは机に腰を預け、腕を組んで画面を見ていた。
ローリーは窓際に立ち、エイダンとジムはソファに座っている。
「当選したな」
エイダンが言った。
「圧勝ね」
ローリーはテレビから目を離さなかった。
「当選しようがしまいが、やるべきことは変わらない」
マイクは短く答えた。
コールの演説が続いていた。雇用の創出、産業の再生、インフラ整備。聞こえてくる言葉は、どれも選挙公約としては珍しくない。
「前市長はマリベルたちの強硬なやり方に反対していた」
マイクが言った。
エイダンはマイクに視線を向けた。
「だから消されたと?」
「そうだ」
「市長を殺したのはコールだったな」
「ああ。だが、あれは単独の判断じゃない。マリベルの意向があった」
ローリーが振り返った。
「コールは違う。あいつは裁判官の言いなりよ」
「やつは再開発事業を完成させ、この街をまるごとマリベルに献上するつもりだ」
マイクはテレビを見たまま言った。
画面の中で、コールが再び笑顔を見せた。市民に向けた言葉と、実際に進めようとしている計画。その間には大きな隔たりがある。
エイダンが腕を組み直した。
「コールは会社を手放したはずだ。テラ・インフラテックの経営から退くと公表していた」
「表向きはな」
マイクは机から離れた。
「裏で影響力を行使すればいい。やり方はいくらでもある。名義を変えることも、別の人間を使うこともできる」
「ドミニクね」
ローリーが言った。
「そうだ。おそらく、あいつが会社を動かす。コールは市長の立場から、別の方法で計画を進める」
ジムがテレビを見ながら口を開いた。
「市長になった以上、表立って動くのは難しくなるんじゃないか?」
「だからこそ、周囲の人間が必要になる」
マイクは答えた。
「裁判所、検察、銀行、報道機関。連中は全て押さえている。コールが市長になったことで、組織全体が動きやすくなる」
ローリーは机の上に置かれた資料に目を落とした。
「カーター刑事は、これからどうなるの?」
マイクはすぐには答えなかった。
カーターは市長殺害事件で無罪となった。妻を亡くしたばかりの男が、これから何をするのかは分からない。
だが、彼がコールの組織について知っていることは少なくない。二十年前から関わり、命令を受け、裏側で動いてきた。コールにとって都合の悪い事実を握っている可能性もあった。
「彼はコールの弱点となる材料を持っているはずだ」
「それで、今までカーター刑事を殺せなかったと?」
ローリーはマイクを見た。
「それを敵に奪われたら……」
「彼は殺される」
マイクは言い切った。
テレビでは、コールの演説が終わり、支持者たちの拍手が続いていた。
エイダンは立ち上がった。
「カーターの居場所を確認しよう」
マイクは携帯電話を取り出した。
ローリーは画面の中のコールを見つめる。
新しい市長の誕生を祝う歓声が、テレビのスピーカーから流れてくる。
その裏で、消されることを恐れている人間がいる。
そして、その男を探す者たちがいた。
