コンテンプト・オブ・コート 7-13
ローリーは箱の蓋を開けた。
中には、厚さの異なるファイルや封筒が整然と収められていた。書類には会社名、人物名、日付、金額などが記されている。古い新聞記事の切り抜きや、契約書のコピー、銀行取引に関する資料もあった。
ローリーは一番上のファイルを取り出した。
「ずいぶん集めていたのね」
マイクはローリーの隣にしゃがみ、別の書類に目を通した。
「テラ・インフラテックだけじゃない。関連企業の名前もある」
「コールの会社と取引している企業?」
「それだけじゃない。資金の流れや土地の取得に関する記録もある」
マイクは書類を一枚めくった。そこには複数の会社名と、取引の日付、金額が記されていた。関連する資料が別のファイルにも分けられている。
「コールと、その周辺の人間を調べていたんだろう」
「これだけの資料を、カーターが一人で?」
「警察にいた頃から集めていたのかもしれない」
ローリーは別の封筒を開いた。中には写真と手書きのメモが入っていた。写真には建物の外観や車両、人物の姿が写っている。裏面には撮影日らしき数字が書かれていた。
「何か分かる?」
「まだ判断できない。資料の出所も、記録の正確さも確認する必要がある」
マイクは写真を戻した。
「だが、調べる価値はある」
ローリーはファイルを閉じ、箱の中を見た。
「カーターは、これを私たちに渡すつもりだったの?」
「……その可能性が高い」
そのとき、ローリーの携帯電話が鳴った。
画面に表示された番号を見て、彼女は眉を寄せた。知らない番号だった。
「出てみろ」
マイクが言った。
ローリーは通話ボタンを押した。
「もしもし」
『ローリー・ブルックスか』
聞き覚えのある声だった。
「カーター刑事?」
ローリーはマイクを見た。
「どこにいるの?今、あなたの車のところにいるわ」
『分かっている』
電話の向こうで、短い沈黙があった。
『それは弁護料だ。役に立つはず』
ローリーは足元の箱に目を落とした。
「あなたは一人でどうするつもり?」
『その資料はマイク・ハンターではなく、あんたにやる。コールを甘く見るな。手掛かりになるはずだ』
ローリーは声を強めた。
「そんなことを聞いてるんじゃない。あなたは何をするつもりなの?」
『やらなければならないことがある』
「コールに会うつもり?」
返事はなかった。
ローリーは箱の脇に立ち、駐車場の周囲を見回した。
「殺されるわ。いますぐ合流して。マイクもいる。あなた一人で動く必要はない」
『……』
「聞いているの?」
『聞いている』
「なら、来て。これまでのことを話して。私たちで方法を考えましょう」
マイクがローリーに手を差し出した。電話を代わるつもりだった。
しかし、ローリーは首を横に振った。
「カーター、あなたはもう警察官じゃない。誰かの命令に従う必要もないでしょう」
『分かっている』
「だったら、無茶はやめて」
電話の向こうで、かすかに息を吐く音がした。
カーターは駐車場から少し離れた建物の立体駐車場にいた。上階から見下ろすと、白いセダンのそばにマイクとローリーの姿が見えた。
カーターは携帯電話を耳に当てたまま、二人を見つめていた。
もう戻るつもりはなかった。
妻は死んだ。警察も辞めた。これまでコールのためにしてきたことを、なかったことにはできない。
カーターは視線を駐車場から外した。
『ローリー・ブルックス、最後に一つだけ言う』
「何?」
『最初からあんたに借りはない』
通話が切れた。
ローリーは携帯電話を耳に当てたまま、しばらく動かなかった。
「切られたのか?」
マイクが尋ねた。
「ええ」
ローリーは画面を見た。折り返しても、もう出ないだろう。
「彼はコールのところへ行くつもりよ」
「だろうな」
マイクは白いセダンの周囲を見た。カーターの姿はない。電話をかけてきた場所も分からなかった。
ローリーは携帯電話を下ろした。
「止めないと」
「探す。だが、今はこの資料を持ち出すのが先だ」
マイクは箱の蓋を閉じた。
ローリーは納得していない様子だったが、反論しなかった。
二人は資料を車に積み込んだ。
カーターがどこにいるのかは分からない。だが、彼がコールと決着をつけようとしていることだけは明らかだった。
マイクは車のドアを閉め、運転席に乗り込んだ。
「急ごう」
ローリーも助手席に座った。
車が駐車場を出ていく。
高所からその様子を見ていたカーターは、携帯電話をポケットにしまった。
