コンテンプト・オブ・コート 7-11
テラ・インフラテック本社。
コールは執務室のデスクに向かっていた。引き出しを開け、中に保管していた現金を取り出す。紙幣は束ねられ、いくつかの封筒に分けてあった。
コールは一つずつ中身を確かめ、用意していた鞄に移した。金額を数え直すことはしなかった。必要な分は揃っている。
最後の封筒を入れたところで、ドアがノックされた。
「入れ」
ジョニーが入ってきた。いつものように周囲を確かめてから、デスクの前に立つ。
「市長、報告があります」
コールは鞄の口を閉じた。
「カーターのことか」
「はい。追跡していましたが、途中で見失いました。行き先を確認できていません」
「いつからだ?」
「幹線道路を外れたあたりです。こちらの車も何台か使いましたが、見つけられませんでした」
コールは鞄をデスクの脇に置いた。
「携帯の位置は?」
「確認できていません」
コールは窓の外に目を向けた。高層ビルの間を車が走り、交差点では人々が信号を待っている。市長に就任してから、まだ日が浅い。だが、街の動きはすでに自分の手の届くところにある。
「どうしますか。人を出して捜させますか?」
ジョニーが尋ねた。
コールは首を横に振った。
「若い連中を集めろ」
「全員ですか?」
「動ける奴を集めればいい」
ジョニーはうなずいた。
「お前は来るな」
「はい?」
ジョニーの表情が変わった。
「俺が行きます。カーターを見つけたら、すぐに片づけます」
「お前は来るなと言った」
コールの声に、先ほどまでの軽さはなかった。
ジョニーは口を閉じた。
「ヤツの狙いは俺だ。向こうから会いにくるだろ」
「しかし、誰かと組んでいる可能性もあります」
「あいつは一人だ」
「それでも、武装している可能性があります」
コールは鞄を手に取った。
「だから若い連中を集めるんだ。お前はここに残って、連絡を待て」
ジョニーは納得していない様子だったが、反論はしなかった。
「分かりました。すぐに集めます」
「余計な騒ぎは起こすな。こちらから探し回る必要はない」
「承知しました」
ジョニーは一礼して部屋を出た。
ドアが閉まる。
コールは鞄を持ったまま、しばらくその場に立っていた。
カーターは警察を辞めた。もう組織の中に逃げ込むことはできない。これまで自分のために働いてきた男が、今度は自分に銃を向けるつもりなのだろう。
それなら、正面から受けて立てばいい。
コールはデスクの上に残った書類を引き出しにしまい、執務室を出た。
