コンテンプト・オブ・コート 7-1
アンカレッジ。コールの選挙事務所。
事務所の壁に設置された大型モニターには、開票速報が映し出されていた。
スタッフや支持者が画面を見つめている。机には飲みかけのコーヒーと、配布用の選挙資料が積まれていた。電話は鳴り続け、スタッフは結果を問い合わせる支持者への対応に追われていた。
コールは事務所の中央に立ち、腕を組んでモニターを見ていた。
画面には各候補の得票数が表示されている。
コールの名前の横にある数字は、二位以下を大きく引き離していた。残る開票分を考慮しても、逆転の可能性はほとんどない。
「もう決まりですね」
選挙対策責任者が近づいてきた。
「他の候補は追いつけません。これだけ差がつけば、結果は明らかです」
コールは画面から目を離さなかった。
「まだ公式発表が残っている」
「はい。しかし、これだけの差です。勝利は確実でしょう」
コールは小さくうなずいた。
やがて、モニターの映像が選挙管理委員会の会見場に切り替わった。
壇上には委員会の責任者が立っていた。手元の書類を確認し、集まった報道陣に向かって口を開く。
「アンカレッジ市長選挙の開票結果について、選挙管理委員会から発表します」
事務所の話し声が止まった。
「開票の結果、ケンドリック・コール候補が他の候補を大きく上回る得票を獲得しました。これをもちまして、コール候補の初当選が確定しました」
一瞬の静寂。
次の瞬間、事務所に歓声が上がった。
スタッフが立ち上がり、互いに握手を交わす。拍手が広がり、誰かがコールの名前を叫んだ。
コールはゆっくりと腕を解いた。
スタッフたちが次々に近づき、コールと握手を交わす。
「ありがとう。ここまで支えてくれた全員のおかげだ」
彼は集まったスタッフを見渡した。
「だが、仕事はこれからだ。選挙に勝つことと、街を動かすことは違う。市民が期待しているのは結果だ。私たちはそれに応えなければならない」
「市長、勝利演説の準備ができています」
広報担当者が告げた。
コールはうなずき、壇上へ向かった。
カメラが一斉にコールを捉える。フラッシュが光り、記者たちが質問を投げかけた。
コールは両手を上げ、会場を静めた。
「アンカレッジの皆さん。私を選んでくださった市民の皆さんに、心から感謝します」
拍手が起きた。
「この街には、まだ多くの課題があります。雇用、産業、老朽化したインフラ。そして、長年放置されてきた土地の再開発です」
コールは一度言葉を切った。
「私は公約を実行します。アンカレッジを新しい時代へ導く。そのために、あらゆる力を尽くすつもりです」
再び拍手が起きた。
コールは笑顔を崩さなかった。
カメラの向こうにいる市民たちは、コールの言葉を新しい市長の決意として受け取るだろう。
だが、彼にとって市長の座は目的ではなかった。
それは、計画を完成させるための手段に過ぎない。
壇上のコールは、支持者たちに向かって深く頭を下げた。
