コンテンプト・オブ・コート 6-31
アンカレッジ連邦地方裁判所。
最終公判。被告人席にはカーターが座っていた。
マリベル裁判長が顔を上げた。
「弁護側、質問を続けてください」
マイクは立ち上がった。手元の資料には、これまでの公判で提出された証拠と証人の記録がまとめられていた。
「裁判長、提出した証拠と証人は全て棄却されました。そして、有力な容疑者は私の目の前で自殺……」
「裁判長、本件とは関係のない意見です」
エルマ・アトキンソンが口を挟んだ。
マリベルはマイクを見た。
「認めます。弁護人、質問を続けなさい」
「承知しました」
マイクはカーターの前に移動した。
「被告人。なぜ、あなたは犯人にされたと思いますか?」
カーターはすぐには答えなかった。正面の裁判官席を見て、それからマイクに目を戻した。
「因果応報です」
「因果?」
「……私は刑事という立場を利用して悪事を働いてきました」
カーターの声は低かった。傍聴席のざわめきが消えた。
「妻の治療費が必要だった。だからといって、家族が病気だからといって、言い訳にはなりません。私は自分の立場を利用して、やってはいけないことをしてきた」
カーターは両手を組み直した。
「長い間、コールCEOの犬として働いてきました」
法廷の空気が変わった。傍聴席の記者が一斉にペンを走らせる。エルマはカーターを見据え、マリベルは表情を変えずに口を開いた。
「被告人。根拠のない発言をした場合、責任を問われることになりますよ」
カーターは口をつぐんだ。
マイクがマリベルに視線を移す。
「裁判長。これまでの公判で、コールCEOの名前が二度出ています」
「それで?」
「本件の背景を明らかにし、裁判の公平性を確保するためにも、コールCEOを証人として呼ぶべきです」
エルマが椅子から身を乗り出した。
「弁護側は、被告人の一方的な発言だけで第三者を証人に呼ぼうというのですか」
「一方的な発言かどうかは、証言を聞いてから判断すればいい」
マイクはエルマを見ずに答えた。
「被告人がコールCEOの指示で動いていたと述べた以上、その関係を確認する必要があります。証人として呼ぶことに何の不都合があるのでしょうか」
エルマは口を閉じた。マリベルはしばらく黙り、手元の書類に目を落とした。
法廷内の視線が裁判官席に集まった。
やがて、マリベルが顔を上げた。
「……コールCEOを証人として認めます」
傍聴席がざわついた。記者たちは急いで手元の端末に何かを打ち込んでいる。エルマは表情を崩さなかったが、机の上の書類を押さえる指に力が入った。
マリベルは木槌を手に取った。
「証人の出廷準備を含め、二十分間休廷します。再開時刻までに関係者は所定の場所で待機してください」
木槌が鳴った。
マイクは椅子に座り、ファイルを開いた。カーターは被告人席から動かなかった。
