コンテンプト・オブ・コート 6-29
アンカレッジ連邦地方裁判所。
市長殺害事件の最終公判が始まろうとしていた。
法廷の傍聴席には記者や市民が集まっていた。検察側の席には書類が積まれ、弁護側のテーブルには証拠資料が並んでいる。廷内の空気は張り詰めていた。
カーターは被告人席に座っていた。両手を組み、正面の裁判官席を見ている。顔には疲労が浮かんでいたが、落ち着きを失った様子はなかった。
マイクが弁護人席に座る。手には薄いファイルを持っていた。
カーターはマイクを見た。
「彼女の姿がないな」
「ローリーか?」
「ああ。いつも一緒に動いていただろう」
マイクは傍聴席に目を向けた。
「別の仕事をしている」
「この大事な日にか?」
「遊びに行ったわけじゃない」
マイクはファイルを机に置いた。
「エイダンたちとキッチンカーを追っている。お前の無実を証明するための手掛かりだ」
カーターは眉を寄せた。
「キッチンカー?」
「お前が見た映像にトラックが映っていたろ。そこからキッチンカーにたどり着いた」
「見つかったのか?」
「会社は特定した。だが、それだけじゃ足りない」
カーターは黙った。期待を口にすることはなかった。証拠が見つかる保証などないことは、本人が一番よく分かっていた。
「間に合うのか?」
「あいつらはやる」
マイクは即答した。
カーターは口を閉じた。しばらくして、視線を落とした。
「俺は、あんたを信用していいのかまだ分からん」
「信用しろとは言っていない」
マイクは声を抑えた。
「俺は弁護士だ。依頼人が犯していない罪を着せられているなら、それを覆す。お前が過去に何をしたかは別の話だ」
カーターの目が動いた。
「俺が無罪になったあと、お前は俺を殺すんだろ」
マイクは答えず、ファイルを開き、証拠品の一覧を確認した。現場写真、鑑識報告書、証言記録。検察側が積み上げた証拠。だが、その根幹に捏造があるなら、崩せばいい。
「今日の公判で、検察は証拠を押し通すだろう。こっちはそれを全部ひっくり返す。お前は質問に正確に答えろ。余計なことは言うな」
「分かっている」
法廷の扉が開き、書記官が入ってきた。検察側が席につき、傍聴席のざわめきが静まっていく。
マイクはファイルを閉じた。
「判決を聞く覚悟はできているか?」
カーターは正面を向いた。
「できている。できれば自分の足でここを出たい」
「そのために証拠を探している」
カーターは傍聴席を見た。ローリーはいない。彼女は母親の失踪に関わっている自分のために動いている。
