コンテンプト・オブ・コート 6-28
アンカレッジ警察本部。
ローリーとマイクは受付で身分を告げ、刑事課へ向かった。廊下には警察官が行き交い、電話の音と無線の声が途切れずに響いていた。
カーティス刑事は机に向かい、書類を読んでいた。二人に気づくと、椅子の背にもたれた。
「どうしたんだ?」
ローリーは机の前に立った。
「急にすみません。キッチンカーの店主が自殺した事件について聞きたくて」
カーティスは手元の書類を閉じた。
「それがどうした?」
「捜査資料を見せてもらえませんか」
カーティスはローリーの顔を見た。それから隣のマイクに視線を移した。
「そっちは?」
「マイク・ハンターです。弁護士をしています」
「あなたは、カーターの弁護人ですね」
「その事件と関係があります」
マイクは机の端に手を置いた。
「市長が殺害された現場にキッチンカーが止まっていた可能性が出てきました。調べていたら、その情報が出たんです」
「キッチンカーが市長殺しとどうつながる?」
「まだ分かりません。だから調べています」
カーティスは二人を交互に見てから、椅子を引いた。
「ちょっと待っててくれ」
彼は奥の書庫へ入った。金属製の棚を開け、ファイルを何冊か取り出す。戻ってくると、一冊を机に置いた。
「これが記録だ。運転手の遺体は郊外の崖下で見つかった。車は現場から離れた場所で発見された。検視の結果も含め、自殺として処理されている」
「遺書は?」
ローリーが尋ねた。
「見つかってる」
「現場に争った形跡は?」
「ない。記録を全て見せることはできないが、その件もここに書かれている」
カーティスはファイルを開き、数枚の書類をめくった。挟まれていた写真を抜き、二人の前に並べる。
古いキッチンカーが写っていた。車体には店名らしい文字があり、側面には料理の写真とメニューが掲示されている。塗装は色あせ、フロントガラスには汚れが残っていた。
ローリーは写真を手に取った。
「これが運転手の車ですか?」
「そうだ。登録記録もある」
マイクは写真の車体を覗き込んだ。側面の文字は、経年劣化で一部が読みにくくなっていた。
「拡大した写真はありませんか?」
カーティスは別の写真を探し、机の上に置いた。車体側面を撮影したものだった。店名の文字が、今度ははっきりと確認できた。
ローリーは文字を読み上げた。
「……ノーススター・キッチン」
マイクは携帯電話を取り出し、店名をメモした。
ローリーは写真を机に戻した。車体の側面をもう一度見る。
「この会社の車が、市長殺害現場にとまっていた可能性があるんです」
カーティスの表情が変わった。
「それを裏づける証拠は?」
「今はありません。だから、まず車両を特定したいんです」
カーティスはファイルを閉じた。
「写真の複写なら手続き次第で出せる。正式に請求してくれ」
「分かりました」
ローリーはうなずいた。
マイクは店名を確認し、携帯電話をしまった。
二人は礼を言って刑事課を出た。
廊下を歩きながら、ローリーは写真のキッチンカーを思い返していた。運転手は自殺したとされている。だが、なぜその車が市長殺害現場の近くにいたのか。偶然と片づけるには、確認すべきことが多すぎた。
「まずはノーススター・キッチンを調べる」
マイクが言った。
「ええ。会社の記録と、運転手の身元。それから、車が現場にいた理由も」
ローリーは歩調を速めた。
