コンテンプト・オブ・コート 6-27
マリベルはアクセルを緩め、路面に倒れた男を見た。車を止めても、降りるつもりはなかった。
携帯電話を取り出す。登録された番号を呼び出した。
数回の呼び出し音のあと、男が出た。
『はい』
「仕事よ」
マリベルは携帯電話を助手席に置いた。エンジンはかけたまま、フロントガラス越しに男を見た。男は動かない。車の通る音も、話し声も聞こえなかった。
数十分後、一台の車が道路の向こうから現れた。
黒い車は現場の手前で速度を落とし、マリベルの車の後ろに止まった。ケンドリック・コールが降り、周囲を見回した。道路脇のセダンと、地面に倒れた男。それから、車内のマリベルに目を向けた。
コールは運転席の窓を軽く叩いた。
マリベルが窓を下げる。
「大丈夫ですか?」
コールは倒れた男に視線を移した。
「あなたがやったんですか?」
「そうよ」
マリベルは前を向いたまま答えた。
コールは彼女の顔を見た。驚いた様子はなかった。理由を尋ねることも、男の身元を確かめることもしなかった。
「まだ生きているかもしれないわ」
マリベルが言った。
コールは男のそばまで歩いた。膝をつき、顔を近づける。男の胸がかすかに動いた。
コールは立ち上がった。
上着の内側から拳銃を抜く。男に向けて構えた。
銃声が数回、周囲に響いた。
コールは撃ち終えても、すぐには動かなかった。男の体は路面に横たわったままだった。先ほどまであったかすかな動きも、もう見えない。
コールは拳銃を下ろし、マリベルの車へ戻った。
窓越しに、二人は向き合った。
「処理して」
マリベルが言った。
コールは短くうなずいた。
「この件は誰にも言いません」
「違うわ」
マリベルは彼を見た。
「これはあなたがやったの」
コールは黙った。
「私がここにいたことも、あなたが何をしたかも、誰にも話す必要はない」
「分かりました」
マリベルは窓を上げた。コールは一歩下がり、車の前を空けた。
エンジン音が高まる。マリベルの車がゆっくりと動き出した。
そのとき、道路脇から小さな物音がした。
コールが振り向いた。
木立の向こうに目を凝らす。風に揺れる枝のほかに、動くものは見えなかった。
マリベルの車は速度を上げ、道路の先へ消えていった。
コールはしばらく木立を見つめていた。やがて拳銃をしまい、倒れた男へ目を戻した。
