コンテンプト・オブ・コート 3-7
アンカレッジ。
総合建設企業テラ・インフラテック本社。
最上階の社長室。
大きな窓の向こうに、アンカレッジの街が広がっている。
ケンドリック・コールはデスクの前に立っていた。
向かいにはジョニーがいる。
ジョニーは壁際に立ったまま、コールを見ていた。
コールは手にしていた書類をデスクへ置いた。
「弁護士一人に歯が立たないとは」
ジョニーは黙っている。
「何をしていた?」
「……すみません」
「すみません?」
コールが顔を上げる。
「それだけか?」
ジョニーは少し間を置いた。
「もう一人いました」
「もう一人?」
「マイク・ハンターと一緒にいた男です」
コールの眉が動く。
「弁護士か?」
「違います」
「何者だ?」
「元軍人です」
「それで?」
「暴力的な男です」
コールはジョニーを見た。
「言い訳するのか」
「違います」
「なら何だ?」
「事実を話しています」
コールはデスクの引き出しを開けた。
中から小さな折り畳み式のナイフを取り出す。
ジョニーがそれを見る。
「CEO……」
コールは何も言わなかった。
ナイフを開く。
次の瞬間、ジョニーの太ももに刃が刺さった。
「ぐっ……!」
ジョニーの体が大きく揺れる。
コールはナイフを抜いた。
ジョニーがその場に膝をつく。
両手で太ももを押さえる。
「……何を……」
「言い訳をするな」
コールはナイフを閉じた。
ジョニーは床に手をついた。
呼吸が荒くなる。
コールは冷静に見下ろしていた。
「弁護士一人に苦戦した理由を聞いている」
「……あいつらには後ろ盾がいます」
「誰だ?」
ジョニーは顔を上げた。
「マイク・ハンターには、ヒューイ・フリーマンという男がついています」
コールの表情が止まった。
「ヒューイ・フリーマン?」
「はい」
「何者だ?」
「民間軍事会社を率いている男です」
コールは黙った。
その名前に聞き覚えはなかった。
「その男を知っているのか?」
「マイクの後ろ盾として動いています」
「マイク・ハンターと、どんな関係だ?」
「詳しいことまでは分かりません。ただ、あいつがニューヨークで揉めた時にも関わっていました」
コールはジョニーを見た。
「お前は知っていたのか?」
「はい」
「なら、なぜ最初に言わなかった?」
ジョニーは答えに詰まった。
コールはナイフをデスクの上に置いた。
「次からは最初に話せ」
「分かりました」
コールは椅子に座った。
「ヒューイ・フリーマン……」
その名前をもう一度口にする。
「民間軍事会社の人間が、なぜマイク・ハンターを支援している?」
「分かりません」
「調べたのか?」
「そこまでは」
コールはジョニーを見る。
「調べろ」
「はい」
「マイク・ハンターが何をしようとしているのかもだ」
「分かりました」
コールは窓の外へ目を向けた。
「お前に重要な仕事を任せるつもりだ」
ジョニーが顔を上げる。
「俺に?」
「ああ」
コールはジョニーを見た。
「次はしくじるな」
ジョニーは太ももを押さえながら立ち上がった。
「分かりました」
コールは返事をしなかった。
ジョニーは壁に手をつきながら、社長室を出ていく。
ドアが閉まる。
コールは一人になった。
窓の外へ視線を戻す。
アンカレッジの街が広がっている。
マイク・ハンターの背後に、別の男がいる。
コールはヒューイ・フリーマンという男の名前を頭に刻んだ。
