コンテンプト・オブ・コート 3-35
アンカレッジ連邦地方裁判所。
法廷を出たマイクとローリーは、廊下を歩いていた。
ローリーは手にした資料を見ている。
「マイク」
「何だ?」
「これで、カーター刑事の無実を証明できるわ」
「映像だけならな」
ローリーがマイクを見る。
「どういう意味?」
「裁判長が証拠として認める保証はない」
「でも、カーター刑事が犯行時刻に店にいたことは確認できる」
「ああ」
「証人の証言もある」
「それでもだ」
マイクは歩きながら答えた。
「映像の入手経路、撮影された場所、映像が加工されていないか。全部確認される」
「時間がかかるってこと?」
「そういうことだ」
ローリーは資料を閉じた。
「まだ気は抜けないぞ、ってことね」
「そうだ」
二人は裁判所の入口へ向かった。
外へ出る。
冷たい風が吹いていた。
ローリーがコートの襟を直す。
「それでも、最初よりはかなり状況が変わったわ」
「まだ分からない」
「あなた、いつもそうね」
「何が?」
「良い材料が出ても喜ばない」
「喜ぶのは勝ってからでいい」
ローリーは苦笑した。
そのとき、道路の向こうから一台の車が近づいてきた。
黒い車だった。
マイクの前で止まる。
運転席の窓が開いた。
エイダン・フォックスだった。
「乗れ」
ローリーが車を見る。
「いきなり?」
マイクがローリーを見る。
「行くぞ」
「ちょっと待って」
マイクが助手席に乗り込む。
ローリーは後部座席に座った。
ローリーがエイダンを見る。
「何があったの?」
「発信機だ」
「発信機?」
エイダンが携帯電話の画面を見せる。
そこには、移動する一つの位置情報が表示されていた。
「裁判所を出た」
マイクが画面を見る。
「秘書か?」
「ああ」
「どこへ向かってる?」
「まだ分からない」
エイダンは車を発進させた。
「発信機はうまく機能してる」
「追うぞ」
ローリーが前の二人を見る。
「誰を追ってるの?」
「コールの秘書だ」
「どうして?」
マイクは携帯電話の画面を見る。
「コールに何か指示されたんだろう」
ローリーの表情が変わった。
「何を?」
「それを調べる」
ローリーは黙った。
「秘書を追えば――」
「コールが何を知っているのか、何をするつもりか分かるかもしれない」
エイダンがマイクを見る。
「嫌な予感がする」
「どうした?」
「あいつら、何か隠してるぞ」
マイクは前方を見る。
「……どこへ行くのやら」
車は幹線道路に入った。
はるか前方を、黒いセダンが走っている。
マイクが目を細める。
「いた」
ローリーも前を見る。
「どれ?」
「あのセダンだ」
エイダンが車間距離を取る。
黒いセダンは速度を上げた。
エイダンも速度を合わせる。
「気づかれないように」
ローリーが言った。
「分かってる」
エイダンはハンドルを切る。
マイクはセダンを見た。
「……追われていることに気づいてない」
「どうして分かるの?」
「速度が変わってない」
ローリーもセダンを見る。
「どこへ行くの?」
「分からない」
マイクは答えた。
「だから追う」
車は市街地を抜け、交通量の少ない道路へ入っていった。
エイダンが位置情報を確認する。
「発信機は生きてる」
「なら問題ない」
マイクは前方の黒いセダンから目を離さなかった。
その先に何があるのか。
まだ誰にも分からない。
ただ一つ。
コールの秘書が向かう場所には、何かがある。
マイクたちは一定の距離を保ったまま、黒いセダンを追い続けた。
