コンテンプト・オブ・コート 3-33
アンカレッジ連邦地方裁判所。
証人は証人席に座ったまま、黙っていた。
アトキンソン検事が手元の資料を確認する。
そして、一枚の書類を取り出した。
「裁判長」
マリベルが顔を上げる。
「何ですか?」
「証人の以前の供述調書を証拠として提出します」
アトキンソンが係員へ書類を渡す。
係員が受け取り、マリベルの前へ運ぶ。
マリベルは書類を確認した。
「受理します」
「ありがとうございます」
アトキンソンは証人へ向き直った。
「証人は以前、参考人として供述しましたね?」
「はい」
「そのとき、犯行時刻に被告人と一緒にいなかったと供述しています」
「……はい」
「なぜ今になって、供述を変えたのですか?」
証人はしばらく黙っていた。
やがて、小さな声で答えた。
「その時は……ウソをつきました」
法廷が静かになる。
「本当は、カーター刑事と一緒にいたんです」
傍聴席から小さなどよめきが起きた。
カーターは証人を見た。
マイクも黙っている。
アトキンソンは証人から目を離さない。
「もう一度聞きます」
声が低くなる。
「弁護人に脅迫されて、証言を変えたのですか?」
「違います」
マイクが立ち上がった。
「異議あり」
マリベルがマイクを見る。
「理由は?」
「検察側は、証人が脅迫されたという前提で質問しています」
アトキンソンが振り返る。
「証言が変わった理由を確認しているだけです」
「質問の仕方に問題があります」
マリベルが手を上げる。
「認めます」
アトキンソンが一礼する。
「失礼しました」
マリベルは証人を見る。
「ただし、証人」
「はい」
「あなたは以前、事実と違う供述をしたのですね?」
「はい」
「もし、あの時に宣誓していたなら、偽証罪に問われますよ」
証人は黙ってうつむいた。
マリベルは続ける。
「虚偽の供述をした人の言葉を、今度は信じろというのですか?」
証人は答えなかった。
マイクが立ち上がった。
「裁判長」
「何ですか?」
「証人の発言を裏付ける証拠映像を、証拠として提出します」
アトキンソンがすぐに反応する。
「裁判長、証拠申請されていません」
マイクはアトキンソンを見る。
「昨日、証人を説得しました」
「昨日?」
「はい」
マイクは続けた。
「そして、開廷直前に確認しました。証言だけでは足りないので、今申請します」
アトキンソンが反論する。
「そんなものを今になって提出されても、こちらは確認できません」
「確認すればいい」
「手続きが違います」
マリベルが二人を見る。
「分かりました」
法廷が静かになる。
マリベルは少し考えた。
「こうしましょう」
マイクを見る。
「この場で映像そのものは確認しません」
「はい」
「どのような映像なのか、内容を示したものを提出してください」
「分かりました」
マイクは鞄から数枚の写真を取り出した。
映像から切り出した場面だった。
一枚目には、小売店の店内。
二枚目には、時計。
三枚目には、カーターと証人。
時刻は、午後十時五十七分。
マイクは写真をまとめ、マリベルへ差し出した。
「こちらです」
マリベルが写真を確認する。
アトキンソンも見る。
傍聴席から、記者たちが身を乗り出した。
マリベルは一枚ずつ確認した。
「……証拠映像の真偽を確認したうえで、証拠として採用するかを検討します」
「分かりました」
アトキンソンは何も言わなかった。
マリベルは法廷を見渡す。
「本日はここまでとします」
記者たちが一斉に動き始めた。
カーターはマイクを見る。
マイクは何も言わなかった。
ただ、提出した写真を見つめていた。
法廷の外へ向かう人の流れの中で、コールも席を立った。
秘書が後ろから続く。
コールは一度だけ振り返り、マイクを見た。
