コンテンプト・オブ・コート 3-32
アンカレッジ連邦地方裁判所。
証人が証人席の前に立つ。
傍聴席には多くの市民と記者が並んでいた。
最前列では、事件の関係者が証人を見つめている。
マリベル裁判長が確認する。
「宣誓を」
証人が宣誓する。
マイクは証人を見た。
アトキンソン検事も証人を見ている。
コールは傍聴席の中央に座っていた。
その隣には秘書がいる。
法廷内が静かになった。
マリベルがマイクを見る。
「弁護側から質問を」
マイクが立ち上がる。
「はい」
マイクは証人の前へ進んだ。
傍聴席の視線が一斉にマイクへ向く。
「市長が殺害された時刻、あなたは小売店で誰といましたか?」
証人は少しだけ息を吐いた。
そして、はっきり答えた。
「被告人と一緒にいました」
傍聴席から小さなどよめきが起きた。
記者たちが一斉にペンを動かす。
カーターが証人を見る。
表情は変わらない。
ただ、握っていた手がわずかに動いた。
コールは傍聴席から証人を見つめていた。
隣の秘書がコールを見る。
コールは何も言わない。
マイクは証人を見たまま続ける。
「確かですか?」
「はい」
「間違いありませんか?」
「ありません」
再び傍聴席がざわつく。
マイクは一度だけカーターを見る。
カーターは前を向いていた。
それから証人へ視線を戻す。
「裁判長、質問は以上です」
マリベルが頷く。
「検察は反対尋問を」
アトキンソンが立ち上がった。
証人席へ向かう。
その途中、アトキンソンは傍聴席を一度見た。
記者たちが証人を見ている。
アトキンソンは証人の前で足を止める。
「証人」
「はい」
「先ほど、被告人と一緒にいたと証言しましたね?」
「はい」
「市長が殺害された時刻も?」
「はい」
アトキンソンは資料を確認した。
「間違いありませんね?」
「ありません」
アトキンソンは証人を見た。
「証人に聞きます」
少し間を置く。
「弁護人に脅迫されましたか?」
傍聴席がざわついた。
証人の顔がこわばる。
カーターがアトキンソンを見る。
コールも視線を上げた。
マイクがすぐに立ち上がった。
「異議あり」
マリベルがマイクを見る。
「理由は?」
「検察は、証人と弁護人の名誉を汚しています」
アトキンソンが振り返る。
「証言が突然変わった理由を確認しているだけです」
「脅迫したという前提で質問しています」
「事実確認です」
傍聴席から再びざわめきが起きた。
マリベルが手を上げる。
「認めます」
マリベルは続けた。
「発言に注意するように」
「申し訳ありません」
アトキンソンは一礼した。
そして、証人へ向き直る。
「では、質問を変えます」
証人は黙っている。
傍聴席では、記者たちが手元の資料を確認していた。
アトキンソンが証人に尋ねる。
「これまでの供述と、今日の証言が違う理由を説明できますか?」
証人は答えなかった。
アトキンソンが再び口を開く。
「証人?」
法廷は静まり返っていた。
証人は何も答えない。
アトキンソンは資料に目を落とした。
