コンテンプト・オブ・コート 3-27
アンカレッジ刑務所。
面会室。
カーターは椅子に座っていた。
向かいにはマイクがいる。
机の上には、弁護人選任の書類が置かれている。
カーターはマイクを見た。
次の瞬間、椅子を蹴るように立ち上がった。
「この野郎!」
カーターが机を回り込み、マイクの胸ぐらをつかもうとする。
マイクは立ち上がり、身を引いた。
カーターの拳が頬をかすめる。
「俺を騙したな!」
カーターがもう一度、拳を振る。
マイクは腕で受けた。
「さすが刑事」
マイクがカーターを見る。
「勘だけは冴えてるな」
「ふざけるな!」
カーターが胸ぐらをつかむ。
「俺を襲わせたのも、お前だろ!」
マイクはカーターの手を外した。
「さあな」
「嘘をつくな!」
「シャワー室の男か?」
カーターの動きが止まった。
「知ってるのか」
「ああ」
「誰だ?」
「俺の仲間とつながりのある男だ」
カーターの顔が変わる。
「エイダン・フォックスか?」
マイクは答えなかった。
カーターはマイクを睨む。
「やっぱり、お前が仕組んだのか」
「そうだ」
カーターは黙った。
マイクは机の上の書類を指した。
「コールはお前を消したくて仕方がない」
「……」
「俺は、それを利用しただけだ」
カーターは椅子に戻った。
「お前、何をするつもりだ」
マイクも椅子に座る。
「お前をここから出す」
カーターは鼻で笑った。
「簡単に言うな」
「文句があるなら、この場で殺してもいい」
カーターの表情が変わる。
マイクは淡々と続けた。
「俺の言うとおりにしろ」
カーターは黙った。
「市長殺害事件の犯人はコールだよ」
カーターが目を細める。
「分かっている。あいつはクソだ」
「ああ」
「証拠は?」
「裁判で出してやる」
マイクは机の上の書類を見る。
「だが、コールもただの操り人形にすぎない」
カーターは黙った。
「俺は黒幕しか見てない」
マイクの声が低くなる。
「あとは全員雑魚だ」
「黒幕?」
「ああ」
カーターが身を乗り出す。
「誰だ」
マイクはカーターを見た。
「アンカレッジ市民が尊敬する司法の番人」
一拍置く。
「マリベル・ヴァレンタイン裁判官だよ」
カーターの表情が止まった。
「……裁判官?」
「ああ」
「あの女が黒幕?」
「そうだ」
カーターは何も言わなかった。
マリベル・ヴァレンタイン。
市民から信頼され、法廷では冷静な判断を下す裁判官。
カーターも、これまで何度もその法廷に立ってきた。
その人物が黒幕だと言われても、すぐには信じられない。
「証拠はあるのか?」
「ある」
「何を知ってる?」
「お前に話すつもりはない」
「なぜ断言できる?」
マイクはカーターを見た。
「お前が知らないところで、いろいろつながってる」
「コールも?」
「当然」
「オースティンも?」
「もちろんだ」
カーターは拳を握った。
「俺を陥れたのは、あの女なのか?」
「そうだ」
「市長を殺したのも?」
マイクは立ち上がった。
「お前は裁判に集中しろ」
「俺は何をすればいい?」
「生きろ」
カーターがマイクを見る。
「それだけか?」
「それが一番難しい」
マイクは面会室の出口へ向かった。
カーターが呼び止める。
「おい」
マイクが振り返る。
「本当に俺を出すつもりか?」
「ああ」
「その後は?」
マイクは少し黙った。
「以前言ったとおりだ」
カーターはマイクを見つめた。
「……分かった」
マイクは扉へ向かった。
カーターはその背中を黙って見ていた。
マリベル・ヴァレンタイン。
自分が何度も法廷で見てきた裁判官。
カーターは初めて、その名前を疑った。
