コンテンプト・オブ・コート 3-26
アンカレッジ。
ローリーの車が市街地を走っていた。
運転席にはローリー。
助手席にはマイクが座っている。
窓の外を、アンカレッジの街並みが流れていく。
しばらく二人とも黙っていた。
ローリーはハンドルを握ったまま、前を見ている。
やがて、口を開いた。
「マイク」
「何だ?」
「証人のこと」
「どうなった?」
「証言してくれるわ」
マイクがローリーを見る。
「本当か?」
「ええ」
ローリーは前を向いたまま続けた。
「カーター刑事が市長殺害の時間帯に、その店にいたことを証言してくれる」
「アリバイになるな」
「そうよ」
「説得したのか?」
「そう」
「どうやって?」
「奥さんと一緒に行ったの」
マイクが少し黙る。
「カーターの奥さんを?」
「ええ」
「それで?」
「真実を話してほしいって頼んだ」
「証人は?」
「最初は拒否したわ」
ローリーは信号で車を止めた。
「でも、奥さんが直接頼んだの」
マイクは黙ってローリーを見る。
ローリーは信号を見ている。
「カーター刑事は殺していない」
マイクは答えなかった。
「証人は、それを知っていた」
「だから証言する?」
「ええ」
信号が青になる。
車が走り出す。
ローリーは続けた。
「ただ、条件がある」
「何だ?」
「家族を守ること」
「当然だな」
「証人保護を申請するつもり」
「それなら問題ない」
「簡単にはいかないわ」
「分かってる」
マイクは窓の外を見た。
「でも、これで一つ崩れた」
「何が?」
「カーターを犯人にするための証拠」
ローリーは横目でマイクを見る。
「まだ証拠はたくさん残ってる」
「そうだな」
「凶器もある。指紋もある。血液もある。靴跡もある」
「ああ」
「証人一人で全部は消せない」
「それでも十分だ」
ローリーは少し考えた。
「どうして?」
「証拠は一つずつ崩せる」
「あなた、何か考えてるでしょう」
「考えてる」
「何を?」
「さあな」
「またそれ?」
「必要になったら話す」
ローリーはため息をついた。
「本当に人の話を聞かないわね」
「聞いてる」
「聞いてるだけでしょう」
「そうとも言う」
ローリーは少し笑った。
だが、すぐに表情を戻した。
「マイク」
「何だ?」
「カーター刑事を、本当に助けるつもりなの?」
マイクは答えなかった。
ローリーは横目でマイクを見る。
「あなた、最初から何か知ってたでしょう」
「何のことだ?」
「この事件」
「そうかもしれない」
「それで、私を巻き込んだ」
「君ならできると思った」
ローリーは前を向いた。
「私は弁護士よ」
「ああ」
「依頼人を守るために仕事をする」
「分かってる」
「だったら、あなたも同じでしょ」
マイクは答えなかった。
ローリーがハンドルを握り直す。
車は交差点を曲がった。
しばらくして、マイクが口を開いた。
「カーターを信じるんだな」
「彼はやってない」
マイクはローリーの横顔を見た。
短い沈黙があった。
それから、前を向く。
「勝負はここからだ」
ローリーはハンドルを握る手に力を入れた。
「必ず勝たないと」
