コンテンプト・オブ・コート 3-23
アンカレッジ刑務所。
医務室を出たマイクは、廊下を少し歩いてから立ち止まった。
財務担当者の話が頭に残っていた。
ノース・ホライズン・シティ。
二十年前に止まった再開発計画。
それが最近になって再始動した。
そして、市長の殺害。
マイクは引き返した。
医務室の扉を開ける。
財務担当者は、まだベッドに座っていた。
「戻ったんじゃなかったのか?」
「聞き忘れたことがある」
財務担当者はマイクを見る。
「何だ?」
マイクは椅子に座った。
「市がノース・ホライズン・シティを再開した」
「そうだ」
「テラ・インフラテックが、その中心にいる」
「そうだ」
「そして、その直後に市長が殺された」
財務担当者は何も言わなかった。
マイクは続けた。
「……コールは、市長が再開発計画に反対したから殺したのか?」
財務担当者の表情が変わった。
「……分からない」
「さっき、計画が再開したと言ったな」
「ああ」
「コールは、その計画を完成させたい」
「そうだろうな」
「市長が邪魔だった」
財務担当者はマイクを見た。
「お前がこの事件を追う理由は知らない」
「……」
「知りたくもない」
「なぜ?」
「知ったところで、俺には何もできない」
「金の流れを知っているんだろう」
「知っているからこそ、余計なことは言えない」
財務担当者はベッドから立ち上がった。
医務室の窓を見る。
外には刑務所の高い壁が見える。
「ここに入れば安全だと思っていた」
「違ったな」
財務担当者は首の傷に触れた。
「刑務所の中まで手が届く」
「コールの手か?」
財務担当者は答えない。
マイクは少し黙った。
「……カーター刑事のことは?」
財務担当者が振り返る。
「何の話だ?」
「市長殺害の犯人に仕立てられた理由だ」
「俺には分からない」
「コールがやったのか?」
「知らない」
「誰がカーターを選んだ?」
財務担当者は黙った。
マイクは立ち上がった。
「市長の死だけじゃない」
「……」
「カーターも消されるかもしれない」
財務担当者の顔が変わった。
「お前、何を知っている?」
「カーター刑事も刑務所で襲われた」
財務担当者は黙った。
「誰かがカーターを殺そうとした」
「……」
「偶然だと思うか?」
財務担当者は答えなかった。
マイクは窓の外を見た。
「市長を殺して、カーターに罪を着せる」
「……」
「そのあと、カーターも消す」
財務担当者は目を伏せた。
「俺は何も知らない」
マイクは医務室の扉を開けた。
財務担当者が呼び止める。
「おい」
マイクが振り返る。
「一つだけ言っておく」
「何だ?」
「ノース・ホライズン・シティは普通の公共事業とは違う」
マイクは黙った。
「どういう意味だ?」
財務担当者は首を横に振った。
「それ以上は言えない」
「誰が関わっている?」
「知らないほうがいい」
マイクはしばらく財務担当者を見た。
「俺は知りたい」
財務担当者は答えなかった。
マイクは医務室を出て扉を閉めた。
財務担当者は一人になった。
しばらくして、窓の外を見る。
財務担当者は、誰かに見られているような気がしていた。
