コンテンプト・オブ・コート 3-19
アンカレッジ市内。
午後。
市街地の一角に、小さな小売店があった。
古い看板。
狭い店内。
棚には日用品や食品が並んでいる。
ローリーは店の前で足を止めた。
手元の資料を確認する。
カーター刑事の名前。
証人の住所。
店の名前。
ローリーはドアを開けた。
店内にベルの音が響く。
カウンターの奥に男がいた。
年齢は五十代。
ローリーを見る。
「何か?」
「初めまして」
ローリーは名刺を出した。
「カーター刑事の裁判を担当しています。ローリー・ブルックスです」
男は名刺を見た。
そして、カウンターの上に置いた。
「……ああ」
「少しお話を聞かせてください」
「もう証言した。これ以上言うことはないよ」
男は商品を整理し始めた。
ローリーは店内を見た。
「市長が殺害された午後十一時ごろ」
男の手が止まった。
「あなたは、この店でカーター刑事と一緒にいましたよね?」
男は顔を上げた。
「帰れ」
「最初の供述では、あなたはカーター刑事と一緒にいたと話しています」
「帰れと言っただろ」
「その後、証言が変わっています」
男は黙った。
ローリーは一歩近づいた。
「カーター刑事が嫌いなのは分かります」
「分かる?」
男が笑った。
「何も知らないくせに」
「だから、話を聞きに来ました」
「話すことはない」
「カーター刑事は殺人事件の被告人です」
男はローリーを見る。
「だから何だ?」
「無実の人を刑務所に送るわけにはいきません」
男の表情が変わった。
「笑わせるな」
店内に声が響いた。
「無罪だって?」
「はい」
「あいつはクズだ」
男はカウンターを叩いた。
「何度もここに来た」
ローリーは黙って聞いている。
「金をせびってきた」
「いくらですか?」
「そんなことはどうでもいい」
「何度も?」
「ああ」
男の声が荒くなる。
「断ったら殴られた」
ローリーの表情が変わった。
「殴られたんですか?」
「何度もな」
男は腕をまくった。
古い傷跡が残っていた。
「これもあいつにやられた」
ローリーは傷を見る。
「それでも、あなたは最初にカーター刑事と一緒にいたと話した」
男は答えない。
「なぜ、証言を変えたんですか?」
「もういい」
男はカウンターから出てきた。
「話は終わりだ」
「待ってください」
「帰れ」
「あなたが見たことを話してくれれば――」
男がローリーの肩を押した。
「帰れ!」
ローリーは一歩後ろへ下がった。
「私は、あなたを責めに来たんじゃありません」
「なら帰れ!」
男はさらに強く押した。
ローリーの背中が入口のドアに当たる。
「カーター刑事が何をしたとしても」
ローリーは男を見る。
「私は弁護します」
「勝手にしろ!」
男がドアを開けた。
ローリーは店の外へ押し出された。
「もう来るな!」
ドアが閉まる。
鍵をかける音が聞こえた。
ローリーは店の前に立った。
手にした資料を見る。
証人の供述書。
捜査記録。
そして、カーターのアリバイ。
ローリーは資料を閉じた。
男はカーターを嫌っている。
それは分かった。
だが、それだけでは説明できない。
最初は一緒にいたと言った。
それが、途中で証言を変えた。
ローリーは店のドアを見た。
「……何があったの?」
答えは返ってこなかった。
