コンテンプト・オブ・コート 3-18
アンカレッジ刑務所。
面会室。
ローリーはアクリル板の向こうに座っていた。
カーターが入ってくる。
椅子に座る。
「今日は何だ?」
ローリーはカーターを見る。
「奥さんと話しました」
カーターの表情が変わった。
「妻と?」
「はい」
「……妻の容体はどうだ?」
ローリーは少し黙った。
「病状は進んでいます」
カーターは目を伏せた。
「……そうか」
「薬も、以前ほど効かなくなっているそうです」
カーターは何も言わなかった。
「奥さんから伝言があります」
カーターが顔を上げる。
「何だ?」
「あなたは人殺しじゃない」
カーターは黙っている。
「無実が証明されるまで死ねないと言っていました」
カーターの目がわずかに動いた。
「……あいつらしいな」
「それから」
ローリーはカーターを見る。
「知っていることを全部話してください」
カーターは答えなかった。
「奥さんは、あなたが何かを隠していると思っています」
「何も隠してない」
「本当に?」
「ああ」
ローリーは持ってきた資料を開いた。
「では、検察側の証人について聞きます」
カーターの表情が変わる。
「証人?」
「市長が殺害された時、あなたと一緒にいたと証言するはずだった人です」
カーターは黙った。
ローリーは続けた。
「証人は、市長が殺害された午後十一時ごろ、あなたと一緒にいたんですよね?」
「ああ」
カーターは即答した。
「俺はあいつの店にいた」
「間違いありませんか?」
「間違いない」
「あなたは、その人と一緒にいた」
「そうだ」
「なのに、彼は検察に対し、あなたとはいなかったと供述した」
カーターは答えなかった。
ローリーは資料を閉じた。
「彼は嘘をついたんですね」
「……」
「なぜですか?」
カーターは椅子に座ったまま、何も言わなかった。
ローリーは待った。
しばらくして、カーターが口を開く。
「人には、それぞれ事情がある」
「それだけですか?」
「ああ」
「脅されたんですか?」
カーターは答えない。
「金を渡された?」
沈黙。
「誰かに言われたんですか?」
カーターはローリーを見た。
「お前は知らなくていい」
「また、それですか」
ローリーは声を落とした。
「何度もそう言いますね」
「本当に知らないほうがいい」
「あなたが何も話さないから、証人も黙ってしまう」
カーターは視線を落とした。
「俺が話せば、別の人間が巻き込まれる」
「誰ですか?」
「関係ない」
「奥さんですか?」
カーターの顔が変わった。
ローリーはその反応を見逃さなかった。
「奥さんを守るために、何か隠しているんですか?」
カーターは答えなかった。
ローリーはしばらくカーターを見つめた。
「あなたが無実なら、証人の嘘には理由があります」
「……」
「その理由を探さないと、あなたは無罪になれません」
カーターは椅子の背にもたれた。
「分かってる」
「なら、教えてください」
カーターは答えなかった。
ローリーは待った。
しかし、カーターは何も言わない。
やがて、ゆっくりと天井を見上げた。
白い天井。
蛍光灯の明かり。
ローリーはその横顔を見ていた。
「カーター刑事」
返事はない。
「何を隠しているんですか?」
カーターは天井を見たままだった。
ローリーはそれ以上、聞かなかった。
扉の向こうから看守の声が聞こえる。
「時間です」
ローリーは資料を閉じた。
立ち上がる。
「また来ます」
カーターは答えない。
ローリーはドアへ向かった。
その背後で、カーターはまだ天井を見上げていた。
