コンテンプト・オブ・コート 3-14
アンカレッジ。
テラ・インフラテック本社。
最上階の社長室。
コールは窓の前に立っていた。
デスクの上には、北部地区の開発計画に関する書類が並んでいる。
その横に、アンカレッジ市長殺害事件の資料が置かれていた。
コールは資料を開いた。
被告人、カーター。
担当弁護士、マイク・ハンター。
コールは写真を見つめた。
「面倒な男だ」
携帯電話が鳴った。
コールは画面を確認する。
秘書からの連絡だった。
「はい」
「ジューン・アトキンソンから資料が届いています」
「分かった」
「確認されますか?」
「あとでいい」
コールは電話を切った。
机の上の資料へ視線を戻す。
マイク・ハンターが事件を調べている。
それだけなら問題ない。
問題は、あの男が何を掴んでいるのか分からないことだった。
コールは携帯電話を取り出した。
登録された番号を表示する。
ジューン・アトキンソン。
一度、画面を見た。
それから発信する。
数回の呼び出し音。
電話がつながった。
「はい」
ジューンの声だった。
コールはすぐに本題に入った。
「裁判官に相談したいことがある」
「何の話?」
「市長殺害事件だ」
ジューンは少し黙った。
「裁判官は忙しいの」
「分かっている」
「私に話しなさい」
「いや」
コールは即答した。
「裁判官本人に話したい」
電話の向こうで沈黙があった。
「コールCEO」
「何だ?」
「内容を聞かせて」
「お前じゃだめだ」
ジューンの声が低くなる。
「どういう意味?」
「そのままの意味だ」
「裁判官に会いたいの?」
「ああ」
「今は無理よ」
「いつならいい?」
「こちらから連絡するわ」
コールは黙った。
窓の外を見る。
アンカレッジの街が広がっている。
「アトキンソンさん」
「何?」
「俺は急いでる」
「それはあなたの都合でしょう」
「市長殺害事件は、俺の会社にも関係する」
「分かってるわ」
「なら、裁判官に話を通してくれ」
「話はする」
「直接話したい」
「今は無理」
コールはしばらく黙った。
やがて、短く言った。
「お前じゃだめだ」
ジューンは何も答えなかった。
コールは続ける。
「また連絡するよ」
「待って」
だが、コールは電話を切った。
社長室に静けさが戻る。
コールは携帯電話をデスクに置いた。
そのまま椅子に座る。
机の上の資料を見る。
カーター。
マイク・ハンター。
そして、マリベル。
コールは椅子の背に体を預けた。
「直接話さなければならない」
小さく呟く。
窓の外では、アンカレッジの街が動いている。
市長殺害事件。
北部地区の開発計画。
マイク・ハンターの動き。
いくつもの問題が重なっていた。
コールは再び資料を手に取った。
マイク・ハンターの写真を見る。
「先に片付けるか」
そう言って、資料を閉じた。
