コンテンプト・オブ・コート 3-12
アンカレッジ刑務所。
午後。
面会室。
ローリーはアクリル板の向こうに座っていた。
向かいにはマイクがいる。
マイクは椅子に背を預け、ローリーを見ていた。
「公判延期を拒否されたわ」
マイクは少し笑った。
「わざわざ頼みにいったのか?」
「行ったわよ」
「ありがとう」
「何がありがとうよ」
マイクは机の上に手を置いた。
「君がいるから、何も心配してない」
ローリーは眉をひそめた。
「マジでどうするつもり?」
「何が?」
「公判よ」
ローリーは持ってきたファイルを机の上に置いた。
「あなたは拘束されてる。公判は予定どおり進む。カーターには弁護人が必要。でも、私は業務停止中」
「そうだな」
「そうだな、じゃないでしょう」
ローリーはファイルを開いた。
「証拠も多い。凶器、血液、指紋、靴跡。証人もいる」
「知ってる」
「しかも、裁判官は延期するつもりがない」
「それも知ってる」
ローリーはマイクを見る。
「だったら、何か考えてよ」
「考えてる」
「何を?」
「君なら何とかする」
「私が?」
「ああ」
「どうやって?」
「それを考えるのが君の仕事だ」
ローリーは呆れた顔をした。
「刑務所に入ってまで人を使うのね」
「使ってない」
「使ってるわよ」
「信じてるだけだ」
ローリーは黙った。
マイクは落ち着いたままだった。
「ローリー」
「何?」
「君はカーターが無実だと思ってるんだろ?」
ローリーは答えなかった。
「だったら、それで十分だ」
「何が十分なのよ」
「弁護する理由だ」
ローリーはファイルを閉じた。
「あなたは簡単に言うけど、私は法廷に立てないのよ」
「なら、立たなくてもできることを考えろ」
「例えば?」
「調べる。証人を探す。証拠を集める」
「それだけ?」
「それだけじゃない」
マイクは少し身を乗り出した。
「カーターが何を隠しているのかも調べろ」
ローリーの表情が変わる。
「何か知ってるの?」
「知らない」
「じゃあ、なぜ?」
「あいつは何か隠してる」
ローリーは黙った。
マイクは続けた。
「事件の証拠だけを見るな」
「どういう意味?」
「証拠を集めた人間も見ろ」
ローリーはその言葉を考えた。
「捜査側?」
「そうだ」
「州警察も?」
「全部だ」
ローリーはファイルを開き直した。
事件資料を一枚ずつ確認する。
凶器。
血液。
指紋。
靴跡。
証人。
捜査記録。
「……分かった」
マイクは頷いた。
「何か思いついたか?」
「まだ」
「なら、これからだ」
ローリーは頭を抱えた。
「本当に無茶苦茶ね」
「よく言われる」
「笑ってる場合じゃないでしょう」
「俺は心配してない」
「どうして?」
マイクはローリーを見る。
「君なら何とかする。信じてるよ」
ローリーはしばらくマイクを見ていた。
そして、ため息をついた。
「……分かった」
ファイルを閉じる。
「何とかしてみる」
マイクは笑った。
「それでいい」
「でも、失敗したら?」
「その時は考える」
「本当に無責任ね」
「知ってるだろ」
ローリーは時計を見た。
それから、もう一度ファイルを開く。
事件資料の一番上にあるカーターの名前を見つめる。
「まず、証拠を全部洗い直す」
「そうしろ」
「それから、証人を調べる」
「そうだな」
「捜査資料も確認する」
ローリーはペンを取り出した。
ページの余白に書き始める。
凶器。
血液。
指紋。
靴跡。
証人。
捜査担当者。
ローリーは一つずつ項目を並べた。
「……どこかに穴があるはず」
マイクは黙ってローリーを見ていた。
ローリーは顔を上げない。
頭を抱えたまま、次の一手を考え始めていた。
