コンテンプト・オブ・コート 3-10
アンカレッジ。
テラ・インフラテック本社。
コールの執務室では、秘書が書類を整理していた。
デスクの上には、いくつもの封筒と郵便物が並んでいる。
その中に、一つだけ差出人のない荷物があった。
秘書が手を止める。
「社長」
窓際に立っていたコールが振り返った。
「何だ?」
「これが届いています」
秘書が荷物を持ち上げる。
「差出人はありません」
コールが近づく。
「俺宛てか?」
「はい」
「開けろ」
秘書は荷物をデスクの上に置いた。
ナイフで封を切る。
中から薄い封筒が出てきた。
秘書が封筒を取り出す。
「これだけです」
「開けろ」
秘書が封筒を開く。
中から数枚の写真が出てきた。
秘書の手が止まった。
「社長……」
コールが写真を見る。
「何だ?」
「写真です」
「見せろ」
秘書は写真をコールに渡した。
コールは一枚ずつ確認した。
表情は変わらない。
すべて見終えると、机の上に並べた。
秘書が尋ねる。
「ご存じのものですか?」
コールは答えなかった。
写真を裏返す。
どれにも差出人の名前はない。
封筒にも何も書かれていない。
コールはしばらく写真を見ていた。
「誰が送ってきた?」
「分かりません」
「他には?」
「ありません」
コールは椅子に座った。
写真を指先で揃える。
「俺が市長選に出馬することを知って送り付けてきたのか?」
秘書は答えなかった。
「上等だ」
低い声だった。
秘書が少し間を置いて尋ねる。
「どうしますか?」
「調べろ」
「送り主を?」
「ああ」
「分かりました」
秘書が写真をまとめる。
そのとき、コールが言った。
「それは俺が預かる」
「はい」
秘書は写真をコールに渡した。
コールは封筒に戻した。
そして、デスクの上に置かれていた別の書類へ目を向けた。
マイク・ハンター。
その名前が書かれている。
秘書が気づく。
「社長」
「何だ?」
「マイク・ハンターについてですが」
コールは書類を手に取った。
「何か分かったのか?」
「まだ大きな動きはありません」
「そうか」
コールは書類を閉じた。
「しばらく泳がせておけ」
「はい」
「手は出すな」
「分かりました」
コールは椅子から立ち上がった。
窓の前まで歩く。
アンカレッジの街が眼下に広がっている。
「マイク・ハンターは、まだ何も分かっていないだろう」
秘書は黙っている。
「今は好きにさせておけ」
「はい」
コールは振り返った。
「俺が市長になったら片付ける」
「承知しました」
秘書が頭を下げる。
コールは再び窓の外を見る。
二十年前の写真。
誰が送ったのか。
なぜ、このタイミングなのか。
それについてコールは考え続けていた。
だが、焦る様子はなかった。
コールは封筒を引き出しにしまった。
「市長選の準備を進めろ」
「はい」
秘書が部屋を出ていく。
コールは一人になった。
窓の外には、アンカレッジの街が広がっていた。
