コンテンプト・オブ・コート 2-25
マイクの事務所。
夜。
窓の外には、アンカレッジの街明かりが見えていた。
マイクは一人で机に座っていた。
机の上には、カーターの事件に関する資料が並んでいる。
捜査報告書。
証拠一覧。
検察側が提出した資料。
そして、弁護人選任に関する書類。
マイクは資料を一枚ずつ確認していた。
すぐに電話がかかってくるとは限らない。
マイクは椅子の背もたれに体を預けた。
机の端に置いた携帯電話を見る。
しばらく何も起きなかった。
やがて、携帯電話が鳴った。
マイクは携帯電話を取った。
「もしもし」
相手はしばらく黙っていた。
それから、カーターの声が聞こえた。
「マイク・ハンター」
「何だ」
「俺はまだ死ねない」
マイクは黙って聞いていた。
「お前に弁護を委任する」
「……そうか」
マイクは机の上の書類に目を落とした。
カーターが続ける。
「俺には、まだやることがある」
「奥さんか?」
「ああ」
「そうか」
短い沈黙があった。
カーターが言う。
「俺に不利な証拠が揃っている」
「ああ」
「検察も俺を犯人だと思っている」
「分かってる」
「オースティンは、俺に不利な証拠に何も反論しなかった」
「それも知ってる」
「お前なら、どうする?」
マイクは資料の一枚を手に取った。
「一つずつ崩す」
「簡単じゃないぞ」
「簡単だなんて言ってない」
カーターは黙った。
「オースティンは俺を有罪にするつもりだった」
「ああ」
「お前は違うのか?」
マイクは少し黙った。
「俺は、お前を無罪にする」
「なぜだ?」
「理由はもう話しただろ」
カーターは何も言わなかった。
マイクは続ける。
「これからは俺のやり方でいく」
電話の向こうで、カーターが息を吐いた。
「本当に大丈夫なんだろうな?」
「ああ」
「俺を刑務所から出せるのか?」
「無実を証明する」
「簡単に言うな」
「簡単だとは言ってない」
カーターは黙った。
「……無罪になれば、刑務所を出られる」
「ああ」
「そのあと、お前は俺を殺す」
「そのつもりだ」
カーターは答えなかった。
マイクは机の上の資料を見つめる。
「だから、それまで死ぬな」
「……」
「誰かに殺されても困る」
「分かってる」
「襲ってきた男のことは?」
「まだ分からない」
「思い出したら連絡しろ」
「ああ」
しばらく沈黙が続いた。
カーターが低い声で言った。
「マイク・ハンター」
「何だ」
「俺を出せるんだな?」
「ああ」
「本当に?」
「無実を証明する」
カーターはしばらく黙っていた。
「……分かった」
マイクは資料を一枚めくった。
「報酬は、お前の命だ」
電話の向こうで、カーターが息を吐いた。
「ああ」
電話が切れた。
マイクは受話器を置いた。
しばらく、そのまま動かなかった。
やがて、机の上にあるカーターの事件資料を一つずつ並べ直す。
証拠写真。
捜査報告書。
証人一覧。
どれもカーターを犯人にするための材料だった。
マイクは一枚の写真を手に取った。
殺害現場。
血痕。
凶器。
そして、カーターの指紋。
マイクは写真を机に戻した。
「ここからだ」
小さく呟く。
マイクは椅子から立ち上がった。
事務所の奥にある窓へ歩く。
アンカレッジの街を見下ろす。
二十年前に始まったことが、ようやく動き始めた。
マイクは窓から離れた。
机の上に残された資料を見る。
カーターは弁護を委任した。
これで、マイクは正式に事件へ入る。
その先には、二十年前の事件がある。
マイクは資料を閉じた。
