コンテンプト・オブ・コート 2-21
アンカレッジ刑務所。
午後。
カーターは看守に連れられ、シャワー室へ入った。
鉄製の扉が閉まる。
室内には、数人の受刑者がいた。
カーターは壁際の棚に着替えを置いた。
シャツを脱ぐ。
傷の残る腕を確認する。
左腕には、古い傷跡が残っていた。
カーターは何も言わず、シャワーの蛇口をひねった。
熱い湯が頭から落ちてくる。
数分後。
シャワー室にいた受刑者たちが一人ずつ出ていった。
カーターはその場に残った。
湯の音だけが響いている。
カーターは目を閉じた。
そのときだった。
背後に人の気配がした。
カーターが振り返る。
誰もいない。
再び前を向いた。
次の瞬間、首にタオルが巻きついた。
「!」
男が背後からタオルを引いた。
カーターの首が締まる。
呼吸が止まった。
カーターは両手をタオルにかけた。
男は力を緩めない。
カーターは肘を後ろへ振った。
男の体に当たる。
しかし、男は離れない。
カーターはもう一度肘を振った。
「ぐっ……」
男が声を漏らす。
カーターは体を低くした。
タオルをつかんだまま、男の腕を引く。
二人の体が壁にぶつかった。
カーターは息を吸おうとした。
だが、喉が締めつけられている。
視界が狭くなる。
カーターは足を後ろへ引いた。
男の足を踏みつける。
男の力が一瞬だけ緩んだ。
その隙にカーターは体をひねった。
タオルを両手でつかむ。
一気に引き抜いた。
男が後ろへよろめく。
カーターは壁に手をついた。
激しく咳き込む。
「……誰だ」
男は答えない。
顔を隠すようにタオルを拾った。
カーターは男へ向かって踏み込んだ。
男が逃げようとする。
カーターは腕をつかんだ。
「待て!」
男が振り向く。
カーターの拳が男の顔面に入った。
男の体が吹き飛ぶ。
床に倒れた。
カーターは男の上に乗ろうとした。
しかし、男は素早く立ち上がった。
カーターが腕を伸ばす。
届かない。
男はシャワー室の出口へ走った。
扉が開く。
廊下へ出ていく。
カーターも追った。
「おい!」
廊下の角を曲がる。
男の姿は消えていた。
看守の声が響く。
「どうした!」
カーターは立ち止まった。
首に手を当てる。
呼吸を整える。
数人の看守が駆けてくる。
「何があった?」
カーターは廊下の奥を見る。
「襲われた」
「誰に?」
カーターは答えなかった。
シャワー室を見る。
床には、濡れたタオルが落ちている。
看守の一人が拾い上げた。
「犯人の顔は?」
「見ていない」
「身長は?」
「俺より少し低い」
「何人いた?」
「一人だ」
看守が無線を手に取る。
「シャワー室で暴行事件。医務室を呼んでくれ」
別の看守がカーターを見る。
「首を見せろ」
カーターは動かなかった。
「大丈夫だ」
「大丈夫には見えない」
「本当に大丈夫だ」
看守は首の赤い跡を確認した。
カーターは再び廊下の奥を見る。
男はもういない。
誰が自分を殺そうとしたのか。
カーターには分からなかった。
だが、偶然ではない。
誰かが自分を消そうとしている。
カーターは首を押さえたまま、黙って歩き出した。
その日の夜。
刑務所の独房で、カーターはベッドに座っていた。
首には赤い痕が残っている。
カーターは天井を見上げた。
昼間の男の動きを思い出す。
そして、マイクの言葉を思い出した。
「オースティンは、あなたを刑務所に入れたいんだよ」
カーターは目を閉じた。
まだ、あの男を信用することはできなかった。
だが、マイクの話を無視することもできなくなっていた。
