コンテンプト・オブ・コート 2-2
アンカレッジ。
テラ・インフラテック本社は、市街地でも目立つ高層ビルの一角にあった。
総合建設企業として州内の大型工事をいくつも請け負い、行政関係者とのつながりも深い。最上階にある社長室には、街を見下ろす大きな窓があった。
ケンドリック・コールは窓際に立っていた。
デスクの前には二人の男がいる。
一人は弁護士のオースティン。
もう一人はジョニーだった。
ジョニーはポケットから一枚の名刺を取り出した。
「これです」
コールが振り返る。
ジョニーは名刺をデスクの上に置いた。
そこには、
マイク・ハンター
弁護士・私立探偵
と書かれていた。
コールは名刺を手に取った。
「マイク・ハンター……」
名前を読む。
ジョニーはソファに座ったまま、コールを見ていた。
「こいつを探してます」
「法律を無視するお前がなぜ弁護士を探す?」
「別に依頼するわけじゃありません」
ジョニーが笑った。
「ニューヨークで活躍した私立探偵がアンカレッジに来た理由を知りたくて」
コールの表情が変わった。
名刺をもう一度見る。
「こいつは探偵なのか?」
「ニューヨークじゃ有名でしたよ。弁護士の資格も持ってるみたいですが、やってることは探偵に近い」
「何を調べている?」
「それが分からないんです」
ジョニーは肩をすくめた。
「アンカレッジに来たことは分かった。でも、何のために来たのかは分からない」
コールがジョニーを見る。
「なぜ、そこまで調べる?」
「気になるんですよ」
ジョニーはオースティンを見る。
「ニューヨークで俺をあそこまで追い込んだ男ですからね」
コールは名刺をデスクに戻した。
「お前はマイク・ハンターを恨んでいるのか?」
「恨みはあります」
ジョニーは笑った。
「でも、それだけじゃない」
「では何だ?」
「興味がある」
コールは黙った。
ジョニーは立ち上がった。
「俺を仲間に入れてください。あなたのために働きます」
オースティンが鼻で笑った。
「コールCEOはギャングじゃない。お前みたいなゴロツキと一緒にするな」
ジョニーはオースティンを睨んだ。
「ゴロツキだからできる仕事もあるでしょう」
「仕事?」
「汚い仕事がいっぱいあるでしょう。俺に任せてくださいよ」
オースティンは呆れたように息を吐いた。
「ここは企業だ。お前が考えているような場所じゃない」
「企業だからこそ、表に出せない仕事がある」
ジョニーの目がコールに向いた。
「俺は口も堅い。金さえ払ってくれれば、何でもやります」
コールは椅子に座った。
ジョニーをしばらく見た。
「マイク・ハンターを追うだけなら、勝手にしろ」
「じゃあ――」
「ただし」
コールが言葉を止める。
「俺の名前を使うな」
ジョニーは一瞬黙った。
「分かりました」
「問題を起こすなら、自分で始末しろ」
「もちろんです」
コールはデスクの名刺を指で押さえた。
「マイク・ハンターが何をしにアンカレッジへ来たのか。それを調べろ」
ジョニーの口元が上がった。
「任せてください」
オースティンは黙って二人を見ていた。
ジョニーはコールに頭を下げる。
「今日から、あなたのために働きます」
コールは返事をしなかった。
窓の外では、アンカレッジの街が広がっていた。
ジョニーはその景色を一度見てから、社長室を出ていった。
ドアが閉まる。
オースティンがコールを見る。
「本当に使うつもりですか?」
「使えるならな」
コールはデスクの上の名刺を見た。
「マイク・ハンター……」
その名前を、もう一度口にした。
