コンテンプト・オブ・コート 2-15
アンカレッジ連邦地方裁判所。
午後。
オースティンはマイクたちと別れ、廊下を歩いていた。
足を止める。
周囲を見る。
誰もいない。
オースティンは携帯電話を取り出した。
その様子を、裁判所の外にある駐車場からエイダンとジムが見ていた。
車の中。
ジムがモニターを確認する。
画面には、裁判所の上階にいるオースティンが映っている。
「電話だ」
エイダンが操作機器を見る。
「録音するか?」
「ああ」
ジムが録音機器を起動する。
「入った」
エイダンはドローンをその場に静止させた。
ジムはヘッドホンをつける。
雑音の中から、オースティンの声が聞こえてきた。
「私です」
オースティンが続ける。
「先ほど、マイク・ハンターと接触しました」
ジムがエイダンを見る。
エイダンは何も言わない。
「カーターの事件に関わるつもりのようです」
オースティンは廊下を歩きながら話している。
「ええ。問題ありません」
少し間があった。
「カーターの裁判は私に任せてください。うまくやりますよ」
ジムが録音状態を確認する。
エイダンは画面を見続けている。
電話の向こうから声がした。
「奴を刑務所に閉じ込めてくれれば報酬を払う。簡単だろう」
ジムが小さく息を吐く。
「金の話をしてる」
「ああ」
エイダンは短く答えた。
オースティンが笑った。
「カーターは馬鹿ですよ」
少し沈黙する。
「あと、気になることがあるんですが……」
オースティンの声が低くなる。
「カーターに弱みでも握られてるんですか?」
電話の向こうから声が返ってきた。
「……証人が証言するそうだが、どう処理するつもりだ」
ジムが音量を上げる。
オースティンが答えた。
「心配しないでください」
一呼吸置く。
「カーターに有利な証言はしませんよ」
ジムは録音を続ける。
オースティンは周囲を確認した。
誰もいない。
「分かりました」
短い会話のあと、オースティンが電話を切った。
携帯電話をポケットへ入れる。
そのまま廊下を歩いていく。
エイダンはドローンをその場に留めたまま、オースティンの姿を追った。
やがて、オースティンが画面から消える。
ジムが録音機器を確認した。
「取れた」
「内容は?」
「カーターを有罪にするつもりだ」
「証人の話も出た」
「ああ」
エイダンがドローンを操作する。
機体がゆっくり裁判所から離れていく。
ジムが録音データを保存する。
「マイクに送るか?」
「戻って直接渡そう」
「分かった」
ドローンが駐車場へ戻ってくる。
エイダンが機体を着陸させた。
ジムが録音機器をケースにしまう。
二人は車に乗り込んだ。
エイダンがエンジンをかける。
裁判所では、何も知らない人々が行き交っていた。
その中でオースティンは、何事もなかったように歩いていた。
