コンテンプト・オブ・コート 2-13
アンカレッジ市内。
午後。
市長殺害事件の現場となった倉庫の前には、黄色い規制線が張られていた。
州警察の車両が数台止まっている。
制服警官が周囲を警戒していた。
マイクとローリーが車から降りた。
ローリーは倉庫を見る。
「ここね」
「ああ」
「入れるの?」
「入る」
マイクは規制線へ向かった。
ローリーが後を追う。
「ちょっと、マイク」
マイクは止まらない。
規制線をまたいだ。
ローリーも仕方なく続く。
「あなた、本当に弁護士?」
「一応な」
倉庫の入口を抜ける。
中は広かった。
床には血痕が残っている。
倒れた机。
散らばった書類。
壁際には警察が設置した番号札が並んでいる。
ローリーが周囲を見る。
「ここまで入ったら、本当に問題になるわよ」
「問題にする奴がいればな」
マイクは床を見ながら歩く。
靴跡。
血痕。
机の位置。
出入口。
一つずつ確認する。
「何を見てるの?」
「現場」
「それは見れば分かるわ」
マイクは答えない。
奥へ進んだ。
そのとき、背後から声がした。
「ここは立ち入り禁止よ」
マイクとローリーが振り返る。
エルマ・アトキンソンが立っていた。
その隣に州検事ラングドン。
さらに州警察の担当刑事がいる。
アトキンソンがマイクを見る。
「誰?」
マイクは名刺を取り出した。
「初めまして、弁護士のマイク・ハンターです」
アトキンソンは名刺を見る。
「弁護士?」
「そうです」
「被告の弁護士じゃないでしょ」
「まだな」
アトキンソンの表情が変わる。
「ここは捜査中よ。勝手に入っていい場所じゃない」
「現場を見ただけです」
「それが勝手に入ったっていうの」
ラングドンが口を挟んだ。
「君、カーターの事件を調べてる弁護士だな」
マイクはラングドンを見る。
「ご存じでしたか」
「アンカレッジは狭いんだよ」
ラングドンが一歩近づく。
「帰りなさい」
「その前に一つ聞きたい」
「何だ?」
マイクはアトキンソンを見る。
「被告のアリバイは?」
アトキンソンが答える。
「捜査中の情報を、部外者に話す必要はないわ」
「アリバイがあるのか、ないのか」
「あなたには関係ない」
マイクはラングドンを見る。
「つまり、確認できていない?」
ラングドンの顔から笑みが消えた。
「うるさい」
「質問しただけです」
「君は被告の弁護士じゃない」
「今はな」
アトキンソンがマイクに近づく。
「これ以上ここにいるなら、逮捕するわよ」
ローリーがマイクを見る。
「マイク、もう行きましょう」
マイクは動かなかった。
床に残った靴跡を見る。
それから壁を見る。
最後に、倉庫の出入口を確認した。
「分かった」
マイクが振り返る。
「今日は帰ります」
アトキンソンが言う。
「最初からそうして」
マイクは歩き出す。
ローリーが続く。
倉庫を出る直前、マイクが振り返った。
「また裁判で会いましょう」
アトキンソンが睨む。
「何ですって?」
マイクは淡々と言った。
「私が弁護を担当することになります」
ラングドンが鼻で笑った。
「あいつは終わりだよ。帰りなさい」
マイクは答えなかった。
ローリーとともに規制線の外へ出る。
二人は車へ向かった。
ローリーが口を開く。
「どうしてあんなこと言ったの?」
「何が?」
「私が弁護を担当することになります、って」
マイクは車のドアを開けた。
「決めたからだ」
「いつ?」
「今」
ローリーは呆れた顔でマイクを見る。
「勝手な人ね」
「知ってるだろ」
マイクが車に乗り込む。
ローリーも助手席に乗った。
車が倉庫を離れる。
現場では、州警察の捜査が続いていた。
