コンテンプト・オブ・コート 1-51
アンカレッジ刑務所の面会受付を通り、マイクとローリーは面会室へ向かっていた。
廊下の両側には鉄格子の扉が並んでいる。
看守が二人の前を歩いていた。
ローリーは周囲を見回した。
「本当に刑務所なのね」
「見れば分かる」
「あなたは慣れてるみたいだけど」
「初めてじゃない」
「何人ぐらい弁護したの?」
「数えてない」
「弁護士らしい答えね」
マイクは何も言わなかった。
看守が一つの扉の前で止まった。
「ここです」
「分かった」
看守が扉を開けた。
その先に、小さな面会室があった。
テーブルと椅子が置かれている。
マイクが中へ入った。
ローリーも続いた。
二人が椅子に座る。
ローリーがマイクを見る。
「それで、誰なの?」
「アンカレッジ市長殺害事件の被告だ」
ローリーの表情が変わった。
「……市長殺害?」
「ああ」
「まさか、あの事件?」
「そうだ」
「ニュースで見た」
マイクはテーブルの上に手を置いた。
「今度の仕事だ」
「仕事って……」
「この裁判を担当するぞ」
ローリーはマイクを見た。
「本気?」
「ああ」
「まだ事務所に入ったばかりなのよ」
「だから何だ?」
「市長殺害事件よ。普通の事件じゃない」
「知ってる」
「検察も本気で来るでしょうね」
「当然だ」
「あなた、本当に勝つつもり?」
「勝つために弁護する」
ローリーは黙った。
マイクは続けた。
「君は法廷に立った経験がある」
「あるけど」
「なら使える」
「私一人で?」
「俺もいる」
「あなたと組めってこと?」
「そういうことだ」
ローリーは椅子の背にもたれた。
「昨日まで刑務所に入れられてた私が、今日は市長殺害事件の弁護人?」
「そうなる」
「展開が早すぎる」
「アンカレッジでは普通だ」
「普通じゃないでしょ」
マイクは時計を見た。
「もうすぐ来る」
「誰が?」
「被告だ」
廊下の向こうから足音が聞こえてきた。
金属製の扉が開く音がした。
ローリーはそちらを見る。
看守が誰かを連れて近づいてくる。
マイクは椅子に座ったまま、扉を見ていた。
「マイク・ハンター」
「何だ?」
「一つ聞いていい?」
「何だ?」
「どうして、この事件を選んだの?」
マイクはローリーを見た。
「選んだんじゃない」
「じゃあ?」
「向こうから来た」
ローリーが眉を寄せた。
その時、面会室の扉が開いた。
看守に付き添われ、一人の男が入ってきた。
男は無言のまま椅子へ向かった。
マイクは男を見た。
ローリーも男を見た。
看守が男を椅子に座らせる。
「面会時間は限られています」
「分かった」
看守が扉の外へ出る。
扉が閉まった。
部屋に三人だけが残った。
マイクが男に声をかける。
「俺はマイク・ハンター。弁護士だ」
男はマイクを見た。
ローリーも続けて名乗ろうとした。
だが、その前にマイクが言った。
「こっちはローリー・ブルックス。俺のパートナーだ」
ローリーはマイクを見た。
まだ、その言葉に慣れていなかった。
男は二人を黙って見ていた。
面会室の時計が動いている。
市長殺害事件の裁判が、動き始めようとしていた。
