コンテンプト・オブ・コート 6-14
アンカレッジ刑務所。面会室には、固定されたテーブルと椅子が並んでいた。壁際には監視カメラがあり、扉の外には看守が立っている。
カーターは椅子に座り、両手をテーブルの上に置いていた。
扉が開き、コールとオースティンが入ってくる。二人は向かい側に座った。
コールはカーターの顔を見て、満足そうにうなずいた。
「よくぞ決断した」
カーターは答えず、オースティンに目を向けた。
「なぜ呼んだか分かるか?」
コールは眉を動かした。
「話をするためだろう」
「電話を貸せ」
カーターはオースティンに手を差し出した。
オースティンは一瞬コールを見た。コールがうなずくと、携帯電話を取り出して渡した。
カーターは画面を操作し、番号を入力した。呼び出し音が数回続いた。
「マイク・ハンター」
電話がつながると、カーターは相手の名を告げた。
『拘置所の番号じゃないな。脱獄でもしたか?』
マイクの声には警戒があった。
「今、目の前にコールがいる。よく聞け」
カーターはコールを見た。コールは表情を変えず、二人のやり取りを聞いていた。
「コールは俺に、市長殺害現場を捏造する映像を見せた。ここから出してやるとも言った」
オースティンの表情がわずかに硬くなった。
「お前は映像がなくても裁判に勝てるか?」
電話の向こうで、短い沈黙があった。
『勝てる』
カーターは目を伏せた。ほんの一瞬だった。
「その言葉が聞きたかった」
カーターは通話を切り、携帯電話をオースティンに投げ返した。
オースティンは慌てて受け止めた。
カーターはコールに向き直った。
「失せろ。このクソ野郎」
コールの笑みが消えた。隣のオースティンは口を挟まず、携帯電話をポケットにしまった。
「……最後に一つだけ聞く」
コールの声は低かった。
「なぜ死に急ぐ?」
カーターはしばらくコールを見つめていた。かつて自分が何をしてきたか、その結果として何を失ったか。刑務所に入ってから、考える時間だけは十分にあった。
「……しばらく忘れていたが、やっと思い出した」
カーターは背筋を伸ばした。
「俺は、お前のようなクズを逮捕するために刑事になった」
コールは黙っていた。
「お前は終わりだ」
面会室に沈黙が落ちた。
コールは椅子から立ち上がり、上着の前を整えた。怒鳴ることも、脅すこともしなかった。ただ、カーターを見下ろす目から、先ほどまでの余裕が消えていた。
「後悔するぞ」
「もう十分してきた」
カーターは視線をそらさなかった。
コールはオースティンに目配せした。オースティンは何も言わずに立ち上がり、扉へ向かった。
看守が扉を開ける。
コールは出る直前に振り返ったが、カーターはもう見ていなかった。テーブルに両手を置き、正面の壁を見つめていた。
扉が閉まった。
カーターは息を吐き、椅子の背にもたれた。自分が何を選んだのかは分かっていた。ここから出る機会を捨てたのかもしれない。コールを敵に回せば、刑務所の中にいても安全ではないだろう。
それでも、覚悟は揺るがなかった。
『勝てる』
その一言で十分だった。
カーターは目を閉じた。刑事になった理由を、長いあいだ忘れていた。今さら過去を取り戻せるわけではない。自分が犯した罪も、消えることはない。
だが、市長殺害事件の真犯人を逃がすわけにはいかなかった。
