コンテンプト・オブ・コート 6-11
翌朝。
事務所の奥では、エイダンの部下が木箱を開けていた。中には拳銃や予備の弾倉、整備用の工具が収められている。男は一つずつ状態を確認し、手元の用紙に記録していた。
マイクは机で書類を読んでいた。市長殺害事件の公判資料と、カーターの過去を調べた報告書。ページをめくるたび、別の問題が浮かび上がってくる。
「ちょっといいか」
部下が声をかけた。
「何だ」
「仕事の話だ。あんたはエイダンより羽振りがよさそうだ。何かやってほしいことは?」
マイクは書類から目を上げた。
「金の話か?」
「そういうわけじゃない。仕事があるなら引き受ける。俺たちは暇を持て余してるわけじゃないが、手が空いてる時もある」
「なら、今手元にある武器の手入れをしっかりやってくれ」
男は木箱に目を落とした。
「それだけでいいのか?」
「使う時に動かなければ、ただの鉄屑だ。弾倉も含めて確認しておけ」
男は工具を取り、作業に戻った。
「ずいぶん慎重だな」
背後から声がした。
エイダンだった。入口に立ち、二人の会話を聞いていたらしい。
「慎重にやって困ることはない」
マイクは書類を机に置いた。
「何か問題でもあるのか?」
「問題になる前に話しておくことがある」
エイダンは部下に視線を向けた。男は手を止めず、二人の会話から距離を取るように作業台の反対側へ移った。
エイダンは声を落とした。
「アヴァロン・ディフェンス・システムズのCEOがコールとつながっていることは知ってるよな」
「ああ。クレイグ・ヒギンズだろ」
「奴が絡むとろくなことにならない」
マイクはエイダンの顔を見た。冗談を言っている様子はなかった。
「クレイグCEOのことはよく知らない。名前と会社を知ってる程度だ。戦争にならないことを願うよ」
「戦争?」
「コールの周りには金と権力が集まってる。そこへ武器を扱う会社まで絡んでいる。誰かが一線を越えれば、裁判だけでは済まなくなる」
エイダンは答えず、作業台の木箱を見た。
「だから手入れを頼んだのか」
「備えは必要だ。使わずに済むなら、それが一番いい」
「同感だ」
エイダンは腕を組んだ。
「だが、相手がそう考えているとは限らない」
マイクは椅子の背にもたれた。窓の外では、通りを走る車が交差点を曲がっていく。いつもと変わらない朝だった。
「クレイグは表に出てこない。コールのように自分の計画を語るわけでもない。何を考えているのか分からない相手ほど厄介だ」
「なら、こっちから刺激しなければいい」
「こっちから手を出すつもりはない。ただ、向こうが来たら話は別だ」
エイダンは短くうなずいた。
「その時は俺たちが何とかする」
「頼りにしてるよ」
エイダンは部下のほうへ歩いていった。木箱の中で金属が触れ合う音がした。部下は拳銃の状態を確認し、記録用紙に数字を書き込んでいる。
マイクは再び書類を手に取った。
裁判でコールを追い詰める。そのために必要な証拠を集める。それが今の仕事だった。
だが、コールの背後には、表に出てこない人間がいる。企業、金融機関、報道機関。名前を知っていても、どこまで関わっているのか分からない者たちだ。
クレイグ・ヒギンズも、その一人だった。
マイクは報告書を閉じ、机の端に置いた。
今はまだ、手を出す時ではない。
それでも、備えだけはしておく必要があった。
