コンテンプト・オブ・コート 6-15
マイクは携帯電話を机に置いた。ローリーは向かいの席で書類を整理していた。
「カーターと話したの?」
ローリーが尋ねた。
「ああ。コールが刑務所まで来たらしい」
マイクは椅子の背にもたれた。
「カーターに、市長の殺害現場を捏造する映像を見せたそうだ。ここから出すとも約束した」
「それで、カーターは?」
「断った」
ローリーは手を止めた。
「コールの提案を?」
「そうだ。俺に電話してきた。映像がなくても裁判に勝てるか、と聞かれたよ」
マイクは机の上のファイルを引き寄せた。カーターの記録。現場写真、鑑識報告、証拠品の一覧。どれも検察側が提出したものだった。
「……君の接見が効いたようだ」
ローリーはマイクを見た。
「カーターはあなたに賭けたのね」
「そう考えるのが自然だろうな」
マイクはファイルを開いた。市長が殺害された現場の写真が並んでいる。規制線、警察車両、現場を記録する捜査員。現場は警察の管理下に置かれていた。
「コールは、カーターの無実を証明できる証拠を持っている」
「捏造された現場の映像ね」
「そうだ。だが、映像を見せただけじゃない。コールは、それを使えばカーターを釈放させられると考えている」
ローリーは腕を組んだ。
「映像が本物なら、誰かが現場を細工したことになる」
「警察が現場を押さえた後、無関係の人間が入り込むのは難しい。規制線を越えれば、記録にも残る。警察官か、捜査に関わる人間なら話は別だ」
「つまり、捜査関係者が現場に手を加えたと?」
「その可能性が高い」
マイクは写真を一枚、ローリーの前に置いた。地面に残された足跡。証拠品として記録された血痕。現場で採取された物証は、カーターを犯人と結びつけるために使われていた。
「誰かが証拠を捏造した。しかも、検察に提出される前に、それを確認できる立場にいた人物だ」
「警察の捜査員、鑑識、あるいは検察」
「全員を調べる時間はない」
ローリーは写真を見つめた。
「捏造した人間は、カーターを犯人に仕立てる必要があった。市長を殺した真犯人を守るために」
「コールを守るためだろう」
マイクは写真を裏返した。
「コールが映像を持っているなら、捏造した人間とつながっている。問題は、そいつが誰なのかだ」
ローリーは黙った。捜査資料を思い返す。現場に最初に到着した警察官。証拠品を採取した鑑識。報告書を作成した捜査員。そして、検察に資料を渡した担当者。
捜査のどこかで、意図的に事実をねじ曲げた人間がいる。
「……ひとり心当たりが」
マイクは顔を上げた。
「誰だ?」
「まだ断定はできない。でも、確認する方法はあるわ」
ローリーは椅子から立ち上がり、机の上のファイルを閉じた。
「検察庁へ行きましょう」
マイクは上着を手に取った。
「ラングドンか」
ローリーは答えなかった。
二人は事務所を出た。階段を下り、通りへ出る。ローリーは先に車へ向かい、マイクが助手席に乗り込むのを待った。
エンジンがかかる。
「どう出るか、見ものだな」
マイクが言った。
「本人に会って確かめましょう」
ローリーは車を発進させた。
市長殺害現場の捏造に関わった人間が、捜査関係者の中にいる。二人の疑いは、ひとりの検事へと向かっていた。
