コンテンプト・オブ・コート 1-50
マイクの車は、アンカレッジの街を走っていた。
助手席のローリーは、窓の外を見ていた。
事務所を出てから、二人ともほとんど話していない。
マイクは前を向いたまま運転していた。
しばらくして、口を開いた。
「ローリー」
「何?」
「恋人はいるのか?」
ローリーはマイクを見た。
「……は?」
「恋人」
「何でそんなことを聞くの?」
「別に」
「仕事と関係ある?」
「ない」
「じゃあ聞かないで」
「気になっただけだ」
「あなた、本当に弁護士なの?」
「資格はある」
「それで私を雇った初日に、恋人がいるか聞くの?」
「問題あるか?」
「ある」
ローリーは前を向いた。
「あなたって、女性なら誰にでもそういうことを聞くの?」
「誰にでもじゃない」
「じゃあ、どういう基準?」
「興味がある相手」
ローリーは黙った。
数秒後、低い声で言った。
「最低」
「そうか?」
「そうよ」
マイクは気にした様子もなく、ハンドルを切った。
信号を抜け、車は幹線道路へ入った。
ローリーは腕を組んだ。
「一つ言っておく」
「何だ?」
「私はあなたを信用してない」
「知ってる」
「それに、あなたのやり方も気に入らない」
「それも知ってる」
「なのに、昨日は私を刑務所から出して、今日は仕事に連れてきた」
「そうだな」
「何を考えてるの?」
「仕事だ」
「それだけ?」
「それ以外に何がある?」
ローリーは答えなかった。
マイクは前を見たまま続けた。
「君は弁護士だ」
「だったら?」
「俺も弁護士だ」
「それは知ってる」
「なら、仕事をしろ」
ローリーは鼻で笑った。
「お前みたいな弁護士の真似事をする奴が一番嫌い」
マイクが横目でローリーを見る。
「俺は弁護士だ」
「資格があるだけでしょ」
「それでも弁護士だ」
「弁護士なら、もっとまともな仕事をすれば?」
「まともな仕事って何だ?」
「法廷で依頼人を守る仕事」
「それをやる」
「本当に?」
「ああ」
ローリーは黙った。
車内にエンジン音だけが響いた。
やがて、前方にアンカレッジの刑務所へ向かう道路標識が見えた。
ローリーがそれを確認した。
「刑務所って、誰に会うの?」
「これから分かる」
「さっきは依頼人になるかもしれない男って言ってた」
「そうだ」
「犯罪者?」
「刑務所にいる」
「それだけじゃ答えになってない」
「会えば分かる」
「あなた、説明する気ないでしょ」
「必要になったらする」
「本当に嫌な男」
「よく言われる」
ローリーは窓の外へ目を戻した。
道路の先に、刑務所の施設が見えてきた。
マイクは速度を落とした。
門の前を通り、案内表示に従って車を進める。
ローリーは施設を見上げた。
「ここでいいの?」
「ああ」
マイクは車を止めた。
エンジンを切る。
「降りるぞ」
「分かった」
ローリーがドアを開けた。
二人は車を降り、刑務所の入口へ向かった。
マイクは歩きながら言った。
「ここからが仕事だ」
ローリーは何も答えなかった。
ただ、マイクの後ろを歩いた。
やがて二人の前に、刑務所の入口が現れた。
