喫煙経験のない人にも広がる「電子たばこ」依存、英国で100万人超が使用
かつては禁煙を支援する手段として普及した電子たばこが、若者を中心に新たなニコチン依存の問題を引き起こしている。
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イギリスで「紙巻きたばこ」を吸った経験がないにもかかわらず、「電子たばこ(ベイプ)」を日常的に使用する人が増えている。英国家統計局(ONS)の調査によると、喫煙経験のない電子たばこ使用者は約110万人に上る。かつては禁煙を支援する手段として普及した電子たばこが、若者を中心に新たなニコチン依存の問題を引き起こしている。
21歳のグレイシー・ムングル(Grace Mungle)さんはその一人だ。学生時代には電子たばこを嫌悪していたが、学校で使用する同級生が増え、16歳のころから自らも使い始めた。最初はむせていたものの、繰り返すうちに習慣化し、現在は仕事の合間にも頻繁に吸っている。手持ち無沙汰や対人関係の不安を和らげるために使うこともあり、やめることを考えると怖さを感じるという。
電子たばこへの依存には、ニコチンの作用だけでなく、心理的な習慣も関係している。ニコチンは依存性が高く、体内から減少すると、いら立ちや不安などの離脱症状を引き起こす。専門家は、患者の中には感情を調整する手段として電子たばこに頼り、意識しないまま使用を繰り返す人がいると指摘する。
元リアリティー番組出演者で活動家のマリアン・アンダーソン(Marian Anderson)さんも、ストレスの多い別れを経験した際、気持ちを落ち着かせるために使用を始めた。やがて電子たばこが常に手元にある状態となり、意欲の低下も感じるようになったため、今年5月に使用をやめた。マンチェスター在住の26歳の女性も、外出先での使用から始まり、次第に自宅で仕事をしながら吸うほど習慣化したと話している。
ONSによると、イギリスでは16歳以上の電子たばこ使用者が約540万人に達する一方、紙巻きたばこの喫煙者は約490万人となり、減少傾向が続いている。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究者サラ・ジャクソン(Sarah Jackson)氏は、電子たばこによって、より有害な紙巻きたばこを始めずに済んだ人がいる可能性を指摘する一方、本来ならニコチンを使用しなかった人が新たなリスクにさらされていると指摘する。
カラフルな包装や甘い香りのフレーバーも、若者を引き付ける要因として問題視されている。イギリスでは使い捨て電子たばこの販売が2025年に禁止され、政府は若年層への訴求を抑える追加策を検討している。18歳未満への販売も禁止されているが、依存性が低く安全だという誤解が広がっているとの懸念は根強い。
英国民保健サービス(NHS)は喫煙経験のない人や17歳以下の若者に電子たばこを使用しないよう勧告している。使用をやめる方法としては、ニコチン濃度を段階的に下げる、使用間隔を延ばす、ニコチン代替療法を利用するといった手段がある。ただし、電子たばこの禁煙支援を提供する医療機関は十分とはいえず、専門的な支援体制の整備も課題となっている。
