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「ペプチド注射」ブーム、欧米で急拡大、知っておくべきこと

ペプチドとは、複数のアミノ酸が短く結合した化合物で、人体ではホルモンや酵素などの働きに関与している。
ペプチド注射のイメージ(Getty Images)

美容や筋力増強、若返り効果をうたう「ペプチド」が、欧米を中心に新たな健康ブームとして急速に広がっている。SNSでは「肌が若返る」「脂肪が燃える」「筋肉の回復が早まる」などの体験談があふれ、インフルエンサーや著名人が積極的に紹介している。しかし医療専門家の間では、その多くが科学的根拠に乏しく、安全性も十分に確認されていないとして懸念が強まっている。

ペプチドとは、複数のアミノ酸が短く結合した化合物で、人体ではホルモンや酵素などの働きに関与している。糖尿病治療に使われるインスリンや、肥満治療薬として知られるGLP-1系薬剤も広い意味ではペプチドの一種であり、医療現場で正式に利用されている。だが近年話題になっているのは、こうした承認薬ではなく、筋肉増強や美肌、老化防止を目的に販売される未承認のペプチド製剤である。

SNS上では「バイオハッキング」や「ウェルネス最適化」といった言葉とともに、ペプチド注射を日常的に利用する動画が拡散している。特にボディビルダーや美容系インフルエンサーの間で人気が高く、日焼け効果をうたう製品や、創傷回復を促進するとされる製品、集中力向上や睡眠改善を掲げる製品まで登場している。複数の種類を組み合わせて使う「ペプチドスタック」と呼ばれる手法も広がり、オンライン通販を通じて簡単に入手できる状況になっている。

しかし専門家は、こうした流行に強い警鐘を鳴らしている。専門家によると、未承認ペプチドの多くは人間を対象とした大規模な臨床試験が行われておらず、効果だけでなく副作用も十分に分かっていない。SNSで紹介される「驚異的な改善例」の多くは個人的体験にすぎず、医学的な証明は存在しないという。米ABCニュースの番組では医療専門家が「インターネット上では万能薬のように宣伝されているが、実際には裏付けが乏しい」と指摘した。

さらに問題視されているのが安全性と品質管理である。オンラインで販売される製品の中には「研究目的専用」「人体使用禁止」と明記されながら、実際には自己注射用として流通しているものも多い。各国当局は不純物の混入や誤表示の危険性を指摘しており、重度のアレルギー反応や炎症、動悸、不眠などの健康被害も報告されている。オーストラリアの規制当局は今年、未承認ペプチドについて「重大な公衆衛生リスク」とする警告を発表した。

背景には、コロナ禍以降に拡大した健康志向と、若さや長寿への関心の高まりがあるとみられる。特にGLP-1系の減量薬が世界的に注目を集めたことで、「ペプチド」という言葉自体が先進的な健康法として広く浸透した。そこへSNSアルゴリズムが加わり、短期間で爆発的な人気を生んだ形だ。専門家は「自然由来だから安全という考えは誤りだ」と指摘し、安易な個人輸入や自己注射を避けるよう呼びかけている。

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