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電動自転車や電動キックボードに関連する重度外傷が増加 米国


研究はマンハッタンにあるベルビュー病院において、2018年から2023年までに治療された患者データを分析したものである。
電動自転車のイメージ(Getty Images)

米国で電動アシスト自転車(eバイク)や電動キックスクーター(eスクーター)に関連する事故が急増し、重度外傷や脳損傷の増加につながっていることが、ニューヨーク市の病院の研究で明らかになった。都市部で急速に普及するマイクロモビリティの利便性の裏で、深刻な公衆衛生上の課題が浮き彫りになっている。

研究はマンハッタンにあるベルビュー病院において、2018年から2023年までに治療された患者データを分析したものである。それによると、この期間における外傷患者の約7%がeバイクやeスクーターなど小型電動移動手段に関連する事故によるものだった。さらに注目すべきは、その内訳の変化である。2018年には自転車・スクーター関連外傷のうち電動型が占める割合はわずか8%にすぎなかったが、2023年には過半数にまで急増した。

事故の主な原因は自動車との衝突で、次いで転倒が多かった。都市部の交通環境において、従来の自転車以上に高速で走行可能な電動機器が車両と混在することが、リスクを高めていると指摘されている。

被害の深刻さも際立つ。患者の約30%が外傷性脳損傷を負い、約26%が頭部や顔面に大ケガを負った。また、半数が手術を必要とする重傷であった。こうした結果について研究者は、マイクロモビリティ関連の事故が「これまでにない規模で神経外科的治療を必要とする重度の脳・脊椎損傷を生んでいる」と指摘している。

さらに、入院率の高さも問題となっている。別の分析では患者の3分の2以上が入院を要し、約3割が集中治療室での治療を受けた。軽傷にとどまらず、医療資源に大きな負担をかける事例が増えている現状がうかがえる。

ヘルメット着用率の低さも深刻である。調査では着用者は3割未満にとどまり、未着用は脳損傷や顔面損傷の増加と強く関連していた。また、患者の2割からアルコールが検出され、飲酒が事故の重症化と関係している可能性も指摘されている。

注目されるのは、歩行者への影響である。研究では、マイクロモビリティにはねられた歩行者は乗員よりも高い割合で脳損傷を負っていた。都市の歩道や車道で利用者と歩行者が混在する現状が、第三者へのリスクも高めていることが明らかになった。

事故の発生時間帯にも特徴がある。夕方6時から8時にかけてピークが見られ、特にフードデリバリーなどでeバイク利用が増える時間帯と重なる。需要の拡大が事故リスクの集中を招いている可能性がある。

背景にはマイクロモビリティの急速な普及がある。環境負荷の低さや利便性から都市部で利用が拡大し、交通手段として定着しつつある一方で、インフラ整備や安全対策が追いついていない。従来の自転車と比べて速度が速く、車両との衝突時の衝撃も大きくなるため、事故を起こすと重篤化につながりやすい。

専門家は対策として、ヘルメット着用の徹底、安全な自転車レーンの整備、交通ルールの厳格な運用などを挙げている。これらの措置により、多くの事故や重傷を防げる可能性がある。

今回の研究は単一の大都市病院のデータに基づくものではあるが、急増するマイクロモビリティと外傷の関連を示す重要な警鐘といえる。利便性と安全性のバランスをいかに確保するかが、今後の都市交通政策における大きな課題となっている。

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