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YouTubeクリエイター収益化ハードル引き上げ、何が変わる?

今回のYouTubeパートナープログラム改定は、「YouTubeの収益化が難しくなる」という一言だけでは説明できない。
YouTubeのロゴ(Getty Images)
現状(2026年8月時点)

YouTubeのクリエイター収益化をめぐり、大きな転換点が訪れようとしている。YouTubeは2026年8月10日、YouTubeパートナープログラム(YPP)の制度変更を発表し、2027年2月1日から、新規クリエイターが広告およびYouTube Premiumによる収益分配を受けるための参加条件を引き上げる方針を明らかにした。これは2018年以来初となる大規模なYPP制度変更であり、YouTube自身は現在YPPに参加するクリエイターが300万人を超えているとしている。

現在のYouTubeでは、収益化への入り口が一つだけ存在するわけではない。すでにYPPには段階的な仕組みがあり、登録者500人、過去90日間に3本以上の公開動画を投稿し、さらに「過去365日間の長尺動画3,000時間」または「過去90日間のShorts 300万回再生」のいずれかを満たせば、チャンネルメンバーシップ、Super Chat、Super Thanksなどのファン支援機能を利用できる仕組みが存在する。

これに対し、広告収益やYouTube Premium収益の分配を受けるためには、現在、登録者1,000人に加えて、過去365日間の長尺動画による公開総再生時間4,000時間、または過去90日間の公開Shorts 1,000万回再生のどちらかを満たす必要がある。したがって、今回の改定を理解するには、「YouTubeの収益化条件が一律に引き上げられる」と考えるのではなく、ファン支援型の収益化と広告・Premium型の収益化が明確に分離されると考える必要がある。

この区別は非常に重要だ。今回の変更によって500人規模の小規模チャンネルが、いきなり一切の収益化手段を失うわけではなく、むしろYouTubeはファン支援やShoppingなどの早期収益化ルートを維持すると明言している。つまり、YouTubeが目指しているのは「小規模クリエイターを収益化市場から締め出すこと」ではなく、「広告を中心とした大規模な収益分配の対象者を、より厳しく選別すること」と見る方が実態に近い。

YouTubeパートナープログラム(YPP)の大規模な改定(2027年2月1日適用)

今回の変更は、2027年2月1日に発効する。YouTube公式発表によれば、新規にYPPへ申請して広告およびYouTube Premiumの収益分配を受けようとするクリエイターは、登録者1,000人という条件を維持したうえで、長尺動画の場合は過去365日間に8,000時間の適格な公開総再生時間、またはShortsの場合は過去90日間に2,000万回の適格な再生を達成する必要がある。

数字だけを比較すると、今回の変更はかなり大きい。長尺動画では4,000時間から8,000時間へと必要視聴時間が2倍になり、Shortsでは1,000万回から2,000万回へと必要再生数が2倍になるためだ。しかもShortsの条件は90日という短い期間で達成する必要があるため、単純に動画を蓄積すればよい長尺動画とは異なり、継続的に大量の視聴を獲得する能力が問われる。

ただし、ここで注意すべきなのは、2027年2月1日から既存のYPP参加者まで一律に8,000時間・2,000万回へ引き上げられるわけではないという点である。YouTubeは公式発表で、今回の新しい広告・Premium収益の参加基準は「新規クリエイター」に適用され、すでにYPPに参加しているクリエイターには今回の変更が影響しないと説明している。

したがって、今回の改定は既存クリエイターに対する突然の「収益化剥奪政策」というより、これからYouTubeで広告収益を目指す新規参入者に対する入口の再設計と位置付けるべきである。もっとも、Shortsについては別途、広告・サブスクリプション収益を得るための新しい継続条件が設けられるため、既存クリエイターもShorts収益については従来とは異なる考え方を求められることになる。

今回の発表が注目されるもう一つの理由は、単純な「ハードル引き上げ」と同時に、新しい収益機会を用意していることである。YouTubeはPremium Liteの対象地域拡大、Shopping、ブランド案件、トレンド形成などを利用した新たなインセンティブ制度を打ち出しており、広告収益だけに依存しないクリエイター経済圏を拡大しようとしている。

つまり今回の改定は、「収益化を難しくする政策」という一面だけを見ると本質を見失う。より正確には、広告収益を受け取るための資格を厳しくする一方で、ファン支援、ショッピング、ブランド案件、Premiumなど複数の収益経路へクリエイターを誘導する制度改革である。

変更の概要(何が変わるのか)

制度変更を整理すると、最も大きな変更は三つある。第一に、新規クリエイターが広告・YouTube Premium収益の分配対象になるための長尺動画の条件が4,000時間から8,000時間へ引き上げられること、第二にShortsの新規参加条件が1,000万回から2,000万回へ引き上げられること、第三にShortsについてはYPP参加後の広告・サブスクリプション収益にも90日間1,000万回という新しい基準が設けられることである。

一方、登録者500人、3本の公開投稿、3,000時間または300万Shorts再生という早期YPP参加の条件は維持される。YouTubeはこの入り口を通じて、チャンネルメンバーシップ、Super Chat、Super Thanks、Shoppingなど、視聴者との直接的な関係を基盤とする収益化機能を引き続き提供する方針である。

この構造を見ると、YouTubeが収益化を「一つのゴール」から「複数段階の収益化モデル」へ変えようとしていることが分かる。登録者を増やして一定の視聴実績を作ればファン支援型の収益化に進める一方、広告市場から継続的に収益を得るには、さらに大規模な視聴実績を証明しなければならないという二層構造である。

この変更は、YouTubeがクリエイターを単に「動画を投稿する人」として扱う段階から、継続的な視聴者を獲得し、広告価値やファンとの関係を生み出す「事業主体」として評価する段階へ移行していることを示唆する。

新規YPP参加(長尺動画)

2027年2月1日以降、新たにYouTubeパートナープログラム(YPP)へ参加して広告およびYouTube Premiumの収益分配を受ける場合、登録者1,000人に加えて、過去365日間で8,000時間の適格な公開総再生時間が必要になる。現在の4,000時間から2倍になるため、今回の改定の中でも長尺動画クリエイターにとって最も直接的な変更である。

ただし、「8,000時間」という数字を単純に動画の本数に置き換えることはできない。必要なのは視聴者が実際に動画を視聴した時間の累積であり、動画を大量に投稿するだけでは条件を満たせないため、再生数、平均視聴時間、視聴維持率など複数の指標を同時に改善する必要がある。

例えば平均視聴時間が5分の動画だけで考えた場合、8,000時間は約9万6,000回の視聴に相当する。一方、平均視聴時間が10分なら約4万8,000回、20分なら約2万4,000回となるため、同じ8,000時間でも動画の長さや視聴維持率によって必要な再生数は大きく変化する。

この点から見ると、今回の制度変更は単純な「再生数競争」の強化ではない。むしろ、視聴者を長時間引きつけられる動画を継続的に制作できるかどうかを、広告収益の対象となるクリエイターの重要な選別基準にしようとしていると考えられる。

長尺動画には、Shortsにはない構造的な強みもある。一本の動画が数か月、場合によっては数年間にわたって検索や関連動画から視聴されれば、過去365日間の視聴時間を積み上げることができるため、一度の爆発的ヒットだけに依存しなくても8,000時間を目指せる。

一方で、4,000時間から8,000時間への変更は、新規参入者にとって明確な負担増である。特に専門性の高い分野、地域密着型チャンネル、趣味性の強いジャンルなど、潜在視聴者そのものが限定されるチャンネルでは、広告収益へ到達するまでの期間が長期化する可能性がある。

ここで重要になるのが「登録者1,000人」と「8,000時間」の組み合わせである。登録者だけが多くても視聴時間が不足していれば広告収益には到達できず、逆に視聴時間が多くても登録者が1,000人未満なら条件を満たせないため、YouTubeが求めるのは単発的な動画人気ではなく、一定規模の固定視聴者と継続的な視聴行動の両方だと考えられる。

この考え方は、2018年にYPPの基準が4,000時間・登録者1,000人へ変更された際のYouTubeの説明とも通じる。当時YouTubeは、より高い基準を設けることで、コミュニティに貢献するクリエイターを識別し、不適切なコンテンツへの広告配信を抑える狙いを示していた。

つまり2027年の8,000時間化は、2018年に始まった「一定規模以上の実績を確認してから広告収益を分配する」という考え方を、現在の巨大化したクリエイター市場に合わせてさらに強化する動きと見ることができる。

新規YPP参加(Shorts)

Shortsでは変更がさらに分かりやすい。2027年2月1日以降、新規クリエイターが広告およびYouTube Premiumの収益分配を受けるためには、登録者1,000人に加えて、過去90日間で2,000万回の適格なShorts再生が必要になる。

現在の基準は1,000万回であるため、必要再生数は2倍になる。しかも長尺動画の365日間という期間に対し、Shortsは90日間という短期間で条件を達成しなければならないため、制度上は長尺動画以上に「継続的な集客能力」が問われる仕組みになっている。

2,000万回という数字を90日間で考えると、単純平均では1日約22万2,000回の再生が必要になる。もちろん実際の再生は均等には発生せず、一部の動画が大きく伸びることもあるため、この数字を毎日達成する必要はないが、それでも新規チャンネルにとって非常に高い水準であることは間違いない。

Shortsは長尺動画と比較して、一本の動画が短期間で大量の視聴を獲得しやすいという特徴がある。一方で、視聴者が動画そのものではなく、次々と流れてくる短尺コンテンツを消費する構造になっているため、一本のヒットがそのまま長期的なファン化や登録者増加につながるとは限らない。

学術研究でもShortsを含む短尺動画市場については、長尺動画とは異なる視聴・制作行動が確認されている。約7万チャンネル、約990万本のShortsと約690万本の通常動画を分析した研究では、Shortsの投稿頻度は時間とともに増加し、特に新規チャンネルでは通常動画を上回る傾向が確認されている一方、Shortsは一般に再生数や「いいね」を集めやすいものの、1再生当たりのコメント数では通常動画を下回る傾向も示されている。

この研究結果は、今回の制度変更を考えるうえで重要である。Shortsは「大量の視聴を獲得する」ことには強い一方、視聴者との深い関係形成や長時間視聴という点では長尺動画とは異なるため、YouTubeが広告収益の入口を2,000万再生まで引き上げることで、単純なバズだけではなく、継続的にShortsを伸ばせるチャンネルを選別しようとしている可能性がある。

さらに、Shortsにはもう一つ大きな問題がある。短尺動画では一つ一つの視聴時間が短いため、長尺動画と同じ「総再生時間」を主要基準にするとShortsクリエイターを適切に評価しにくいことである。

そのためYouTubeは、Shortsについては「視聴時間」ではなく「適格な再生回数」を中心に評価している。今回1,000万回から2,000万回へ引き上げたことは、Shortsというフォーマットそのものを否定するのではなく、Shortsにおいて広告収益を受け取るに値する規模の視聴者基盤を、より大きく設定したと解釈できる。

Shorts収益の維持(既存含む)

今回の改定で特に注意が必要なのは、新規YPP参加条件と、YPP参加後にShortsから収益を得続ける条件が別になっていることである。2027年2月1日以降、Shorts広告収益の分配対象となるには、90日間で1,000万回の適格なShorts再生を維持することが必要になるとYouTubeが示している。

ここには制度上の重要な違いがある。新規クリエイターが広告収益分配に参加するための入口は2,000万回だが、すでに対象となったクリエイターがShortsのCreator Poolから収益を得るための継続基準は1,000万回であり、「2,000万回を毎90日維持しなければならない」という意味ではない。

さらに、90日間のShorts再生数が1,000万回を下回ったからといって、それだけでYPPから即座に追放されるわけではない。報道によれば、1,000万回を下回った場合にはShorts Creator Poolからの収益を得る資格に影響する一方、YPPそのものから自動的に除外される仕組みではない。

この点は、今回の制度を「一度YPPに入ったら永久に安定」という従来型のイメージから、「参加後も一定の活動実績を求められる制度」へ変化させる重要な部分である。ただし、ここでも単純な「収益化剥奪」と理解するのは適切ではなく、YouTubeが広告・サブスクリプション収益の対象となるShortsについて、継続的な視聴規模を確認する制度と捉えるべきである。

さらに、YPPそのものを活動状態に保つための条件も変更される。2027年以降は、過去365日間で1,000時間の適格視聴時間、過去90日間で100万回のShorts再生、または過去90日間に長尺動画2本もしくはShorts 5本を投稿するなど、一定の活動実績が求められると報じられている。

この仕組みは、YouTubeが「登録者数」だけでなく「現在も活動しているチャンネルか」を重視する方向へ進んでいることを示す。少なくとも制度設計上は、過去に大きな人気を得たものの現在ほとんど活動していないチャンネルより、継続的に動画を制作し視聴者との接点を維持しているチャンネルを評価しやすい構造になっている。

ここから見えてくるのは、今回のYPP改定が単なる「参加ハードルの引き上げ」ではなく、新規参加→広告収益化→継続的な活動→Shorts収益の維持という一連のライフサイクルを再設計する改革だということである。

ファンディング機能の入り口

一方、YouTubeは小規模クリエイター向けの収益化ルートを閉じてはいない。登録者500人、過去90日間に3本以上の公開動画、さらに過去365日間の3,000時間の適格視聴時間または過去90日間の300万回の適格Shorts再生という条件を満たせば、ファン支援系機能などを利用できる仕組みは維持される。

ここで重要なのは、500人規模のチャンネルでも収益化への道が残されていることである。メンバーシップ、Super Chat、Super Thanksなどは、広告を大量に表示して得る収益とは異なり、視聴者が特定のクリエイターを直接支援することで成立するため、必ずしも巨大な再生数を必要としない。

この制度設計は、YouTubeがクリエイター経済の収益源を「広告一本」に戻すのではなく、むしろ広告以外の収益源を拡大しようとしていることを示している。実際、YouTubeは2022年の時点ですでに、広告だけではなくファン支援やブランドスポンサーシップなどを含む複数の収益手段をクリエイターに提供する方向性を打ち出していた。

この意味で、500人の入り口は「広告収益への近道」ではなく、ファンとの直接的な関係を収益化するための入口と位置付けた方が分かりやすい。広告収益については8,000時間または2,000万Shorts再生という大きな規模を求める一方、ファン支援については比較的小さなコミュニティでも収益を生み出せる余地を残すことで、YouTubeは二つの収益モデルを使い分けようとしている。

これは新規参入者にとって重要な意味を持つ。2027年以降、単に「登録者1,000人を達成して広告を付ける」という従来型の目標だけを設定するのではなく、500人程度の段階からメンバーシップやSuper Thanksなどを活用して、視聴者との関係そのものを価値に変える発想が必要になる。

したがって、今回の制度変更によって最も大きく変わるのは、「YouTubeを始めれば、一定の数字を達成することで広告収益に移行できる」という単線型の成功モデルである。2027年以降は、広告収益を目指すならより大きな視聴規模が必要になる一方、小規模な段階ではファン支援やShoppingなど別の収益源を育てるという、複線型のクリエイター戦略がより重要になる。

そして、この制度変更の核心は数字そのものではない。なぜYouTubeが現在、2018年以来となる大規模なYPP改定を行い、8,000時間・2,000万再生という高い基準を設定したのかという点にある。

背景には、YouTubeそのものの巨大化、Shortsの爆発的な普及、生成AIによる大量コンテンツ制作、広告市場の変化、そして「一度だけバズった動画」と「継続的に価値を生み出すクリエイター」をどう区別するかという、プラットフォーム側の新しい課題が存在する。

変更の背景とプラットフォームの意図

今回のYPP改定を理解するうえで最も重要なのは、YouTubeがなぜ2027年になって収益化条件を引き上げるのかという点である。表面的には「4,000時間を8,000時間へ、1,000万Shorts再生を2,000万回へ」という単純な数字の変更に見えるが、その背景にはYouTubeを取り巻くクリエイター市場そのものの巨大化と、コンテンツ供給量の急増がある。

YouTubeは2018年にもYPPの参加基準を大きく変更している。当時は登録者1,000人と過去12か月4,000時間の総再生時間という条件が導入され、広告収益を受け取るクリエイターを一定規模以上に絞り込む方向へ転換した。

それから約8年が経過し、YouTubeは当時とは比較にならない規模のクリエイター経済圏へ成長した。2026年8月時点でYPP参加クリエイターは300万人を超えており、広告収益だけでなく、メンバーシップ、Super Thanks、Shopping、ブランド案件など、クリエイターが収益を得る方法も多様化している。

ここでプラットフォーム側に生じる問題は、クリエイターの増加そのものではない。より重要なのは、広告市場における価値の異なるコンテンツが同じYPPという枠組みに大量に流入することで、広告主にとってのブランド安全性、視聴者体験、コンテンツ品質、収益分配の効率などを同時に管理しなければならなくなることである。

特に近年は生成AIの普及によって、動画制作のコストそのものが大幅に低下している。研究でも、生成AIを利用したYouTube上の収益化手法について、広告、アフィリエイト、直接販売、収益分配など複数の収益モデルを組み合わせる動きが確認される一方、収益実績の検証困難性、コンテンツの流用、合成的なエンゲージメント、作者性をめぐる問題などが指摘されている。

この状況では、プラットフォームにとって「誰でも一定条件を達成すれば広告収益を受け取れる」という仕組みを維持することのコストが高くなる。特にAIなどを使えば大量の動画を短期間で生成できるため、単純な投稿数や一時的な再生数だけでは、そのチャンネルが長期的に視聴者へ価値を提供する存在なのかを判断しにくくなる。

そのため、今回の制度変更は「収益を減らす」ことだけが目的ではなく、広告収益を配分する対象をより慎重に選別する制度と見るべきである。YouTube側から見れば、広告市場にとって価値の高い視聴者を継続的に集められるクリエイターへ資源を集中させることは、プラットフォーム全体の収益効率を高める可能性がある。

プラットフォームの爆発的成長

YouTubeの規模を考えると、今回の条件引き上げがなぜ必要になったのかがより明確になる。2026年現在、YouTubeは単なる動画共有サイトではなく、検索、SNS、テレビ視聴、音楽、ライブ配信、ショート動画、広告、サブスクリプションを横断する巨大な映像プラットフォームとなっている。

特に重要なのがテレビ視聴である。YouTubeは2026年の発表において、世界で毎日10億時間以上のコンテンツがテレビ画面上で視聴されているとしている。また、Shortsについては1日あたり2,000億回を超える視聴が発生していると報じられており、短尺動画がYouTubeの主要な消費形態の一つになっている。

この数字は、YouTubeがクリエイター市場を「少数の有名YouTuberが動画を投稿する世界」から、膨大な数の個人・企業・メディア・AI支援型チャンネルがコンテンツを供給する巨大産業へ変化させたことを示している。研究者による2026年の大規模調査でも、YouTubeのクリエイターと視聴者を長期間追跡できる大規模データセットが構築され、YouTubeが現代のマスメディアの中心的存在になっていることが指摘されている。

この巨大化によって、YouTubeは二つの相反する課題を抱えることになる。一方では、より多くのクリエイターを参加させることがコンテンツの多様性や視聴時間を増やすが、他方では広告収益を分配する対象が増えるほど、プラットフォームとして「どのコンテンツに広告価値があるのか」を厳格に管理する必要が出てくる。

しかもShortsは長尺動画以上に大量消費されるため、視聴回数のインフレが起こりやすい。一本の動画が短期間で数百万回、場合によっては数千万回再生されることがあるため、1,000万回という数字だけでは「大規模な視聴者基盤を持つクリエイター」と「一度だけアルゴリズムに乗った動画」を十分に区別できなくなっている可能性がある。

この問題に対してYouTubeが取った対応が、2,000万回という新しい入口と、1,000万回という継続的なShorts収益基準の組み合わせである。つまり、入口では極めて大きな実績を求め、その後も一定規模の視聴を維持できるかを確認することで、広告収益の対象となるクリエイターを「継続的に視聴者を集める能力を持つ主体」に近づけようとしている。

「一度きりのクリア」から「継続的な実績」へ

今回の制度改革を最も端的に表現するなら、「一度条件をクリアする制度」から「継続的に活動していることを確認する制度」への移行である。

従来のYPPでは、登録者1,000人と4,000時間、あるいは1,000万Shorts再生を達成することが広告収益への大きな壁だった。条件を満たしてYPPに参加すれば、その後はチャンネルの活動状況に関係なく永続的に同じ条件で収益化できるという単純なイメージが広く存在していた。

しかし、2027年以降はこの考え方が変化する。新規参加者にはより高い入口条件が設定されるだけでなく、YPP内の活動状態についても一定の実績が求められるようになる。具体的には、年間1,000時間の適格視聴時間、90日間で100万Shorts再生、または90日間に長尺動画2本もしくはShorts5本を投稿するなどの活動基準が設けられ、6か月間活動していないチャンネルはYPPから除外される可能性がある。

これはYouTubeにとって合理的な制度設計である。広告収益を受け取る資格を持つチャンネルが長期間休眠している場合、そのチャンネルが現在のYouTube市場にどの程度価値を持つのかを判断しにくくなるからである。

また、継続的な活動を求めることで、過去の一度の成功だけに依存したチャンネルと、現在も視聴者を獲得し続けているチャンネルを制度上区別しやすくなる。これは広告主にとっても重要であり、広告が掲載される環境をより「現在進行形のコンテンツ市場」として維持することにつながる。

特にShortsではこの意味が大きい。Shortsは動画単位の寿命が短く、アルゴリズムによって短期間に大量の露出が発生する一方、その後急激に視聴が減少するケースもあるため、一度のバズだけでは長期的なチャンネル価値を判断しにくい。

したがって、90日間で1,000万回という基準は、単なるペナルティではなく「今も視聴者を集められているか」を確認する指標として機能する。これによってYouTubeは、広告収益を一度得たクリエイターではなく、継続的に広告価値を生み出すクリエイターへ収益を配分する方向へ進もうとしている。

この変化はクリエイター側の戦略にも大きな影響を与える。これまでなら「収益化条件を達成するために一度大きくバズる」ことが合理的な戦略になり得たが、今後は「毎月、毎週、一定水準の視聴を生み出す」ことがより重要になる。

つまり、YouTubeで成功するための評価軸が「最高再生数」から「再現性」へ移っていく可能性がある。これはクリエイターにとって厳しい変化である一方、広告主やプラットフォームにとっては安定した視聴者基盤を持つチャンネルを見つけやすくするというメリットがある。

ファン支援機能との住み分け

今回の改定をさらに理解するためには、広告収益とファン支援収益を分けて考える必要がある。YouTubeは500人の登録者と一定の投稿・視聴実績があれば、メンバーシップ、Super Chat、Super Thanks、Shoppingなどを利用できる早期YPPの仕組みを維持している。

ここにはYouTubeの明確な意図があると考えられる。広告収益については巨大な視聴者規模を要求する一方、ファン支援については小規模なコミュニティでも収益化できるようにすることで、「視聴者数は少ないが熱量の高いクリエイター」を排除しない仕組みを作っている。

例えば登録者500人のチャンネルでも、視聴者との関係が強ければメンバーシップやSuper Thanksなどによって一定の収益を生み出せる可能性がある。反対に登録者が数万人いても視聴者との関係が弱ければ、ファン支援収益は必ずしも大きくならない。

この違いは広告モデルとファンモデルの本質的な違いでもある。広告モデルは「どれだけ多くの視聴者に広告を届けられるか」が重要なのに対し、ファン支援モデルは「どれだけ少数でも強い支持者を獲得できるか」が重要になる。

YouTubeがこの二つを制度上分離することは、クリエイター市場の裾野を維持しながら、広告収益の対象を絞るという意味で合理性がある。つまり、「小さなクリエイターは歓迎するが、大規模な広告収益を分配するには、より大きな実績を証明してほしい」という二段階構造である。

これはクリエイターにとって必ずしも悪い話だけではない。広告収益だけを目標にすると8,000時間や2,000万再生が巨大な壁になるが、ファン支援、Shopping、ブランド案件などを組み合わせれば、広告収益化以前から収益を生み出すことが可能になる。

むしろ今回の制度変更は、「YouTubeで稼ぐ=広告を付ける」という従来型の認識を改める契機になる可能性がある。YouTubeがクリエイターに求めているのは、大量の再生数だけではなく、視聴者との継続的な関係、商品・サービスとの接点、ブランドとしての価値など、複数の経済的価値を生み出す能力へと変わりつつある。

この流れは、クリエイターエコノミー全体の変化とも一致する。2026年の研究では、YouTube上のアフィリエイトマーケティングについて約10年間・約200万本の動画、約54万人のクリエイターを分析した研究があり、YouTubeが広告収益だけではなく、商品紹介やアフィリエイトを含む取引型の収益経済へも広がっていることが示されている。

したがって、2027年のYPP改定は「YouTubeが小規模クリエイターを締め出す」という単純な構図ではない。むしろ、広告収益を得るための基準は厳しくする一方、小規模クリエイターにはファン支援やShoppingなど別の収益ルートを残し、クリエイター経済全体を複数の収益モデルへ分散させる政策と捉える方が妥当である。

そして、この二層構造が次の問題を生み出す。広告収益を得るための条件が厳しくなれば、当然ながら新規参入者の一部は脱落する一方、条件をクリアできるクリエイターには広告市場の価値が集中する可能性がある。

つまり、今回の制度変更はクリエイター市場の「入口」を狭くするだけではなく、市場内部の競争構造そのものを変える可能性がある。

クリエイター・市場への影響分析

今回のYPP改定は、すべてのクリエイターに同じ影響を与えるわけではない。最も大きな影響を受けるのは、これから広告収益を目指す新規参入者と、Shortsを中心に大量の再生数を獲得してきたクリエイターであり、反対に、すでに大規模な固定視聴者を持つチャンネルや複数の収益源を確立しているクリエイターは相対的に影響を吸収しやすい。

まず長尺動画について見ると、4,000時間から8,000時間への引き上げは、新規参入者にとって明確な負担増になる。特に、動画制作に時間とコストがかかる教育、解説、ドキュメンタリー、専門知識などのジャンルでは、投稿頻度を単純に増やすだけでは対応できず、一本当たりの視聴時間とリピーターを増やす必要がある。

一方で、長尺動画には「蓄積効果」がある。過去に公開した動画が検索、関連動画、再生リストなどから継続的に視聴されれば、一本一本の動画が長期間にわたって視聴時間を生み出すため、365日という評価期間の中で安定した視聴基盤を構築しやすい。

これに対してShortsは、爆発的なリーチを獲得しやすい反面、視聴が短期間に集中しやすい。YouTube自身も2026年7月、Shortsには1日数十億回規模の視聴がある一方、Shortsだけを見る視聴者は長尺動画へ自然には移行しない場合があると説明しており、Shortsと長尺動画の視聴者行動には明確な違いがあるとしている。

したがって、2027年以降の制度では「Shortsで大量の視聴を集める能力」と「その視聴者をチャンネルの継続的なファンへ転換する能力」がより重要になる。単純な再生数だけでなく、登録、再訪、長尺動画への移行、ライブ配信、メンバーシップなど、視聴者との関係を深める導線を設計できるかどうかが競争力になる。

さらに市場全体を見ると、YouTubeはすでに巨大なクリエイター経済圏となっている。YouTubeによれば、2025年3月時点でYPP参加チャンネルは300万以上に達し、過去3年間でクリエイター、アーティスト、メディア企業などに700億ドル以上を支払っている。

これは、YPPが単なる「動画投稿者向けの広告収益プログラム」ではなく、一つの巨大な産業インフラになっていることを意味する。参加者が300万人を超える市場では、全員に同じように広告収益を配分するという考え方より、広告市場において継続的な価値を生み出す層を明確に区別する方が、プラットフォームにとって管理しやすい。

その意味で、今回の条件引き上げは市場の「入口」を狭くする政策であると同時に、YPP参加者の中で収益力の高いクリエイターへ資源を集中させる政策でもある。新規参入者にとっては厳しいが、一定規模以上に成長したクリエイターにとっては競争相手の増加速度を抑える効果を持つ可能性もある。

ただし、ここには注意点がある。条件を厳しくすれば低品質なチャンネルを排除できるとは限らず、逆に「再生数を取るためのコンテンツ」への競争を激化させる可能性もあるからだ。

① Shorts特化型クリエイターへの「アメとムチ」

今回の改定を最も象徴的に表しているのが、Shortsに対する「アメとムチ」である。YouTubeはShortsを非常に重要な成長分野として扱っており、2026年にはShortsが平均で1日2,000億回以上視聴されていると公表しているため、Shortsそのものを縮小する意図は見えない。

むしろYouTubeはShortsへの投資を続けている。2026年にはShortsの視聴体験を改善するアップデートを実施し、さらにShortsから長尺動画へ視聴者を誘導するための「関連動画」機能や縦型ライブ配信などを活用する方法も公式に紹介している。

これが「アメ」の部分である。Shortsは新規視聴者に発見されるための強力な入口であり、短期間でチャンネルを成長させる能力を持つため、YouTube側もShortsをクリエイター成長の重要な手段として位置付けている。

しかし「ムチ」の部分は明確だ。新規に広告・Premium収益へ参加する場合、90日間で必要となるShorts再生数が1,000万回から2,000万回へ倍増するため、Shortsだけで広告収益化を目指す難易度は大きく上昇する。

さらに重要なのは、Shortsを大量に投稿すれば必ず有利になるわけではないことだ。YouTubeが評価するのは単なる投稿本数ではなく適格な再生であり、視聴者が実際に動画を見続け、繰り返しチャンネルへ戻ってくる構造を作れなければ、短期間のバズを繰り返すだけでは安定した事業になりにくい。

そのため、今後のShortsクリエイターには「Shorts単独型」から「Shortsを入口とする複合型」への転換が求められる可能性が高い。例えばShortsで新規視聴者を獲得し、その視聴者を10分程度の長尺動画、ライブ配信、メンバーシップ、Shoppingなどへ誘導することで、一人の視聴者から得られる経済価値を高める戦略である。

これはYouTube側の方向性とも一致している。YouTube自身がShortsから長尺動画への視聴者転換方法を公式に解説していることからも、Shortsを単独の視聴フォーマットとして完結させるのではなく、YouTube全体の視聴体験へ接続する役割を強めようとしていることが分かる。

したがって、今回の制度変更を「Shorts潰し」と評価するのは正確ではない。むしろShortsを入口として積極的に利用してもらいながら、最終的には長尺動画、ライブ、ファン支援、Shoppingなどへ視聴者を移動させることを促す制度設計と見る方が合理的である。

Shorts特化型クリエイターにとっては、ここが最大の分岐点になる。短期間で数百万再生を取る能力だけではなく、その再生を登録者、固定視聴者、購買者、メンバーへ変換できる能力が、2027年以降の収益力を左右する可能性がある。

② 広告・サブスク収益構造の多様化

今回のYPP改定を市場構造の観点から見ると、もう一つ重要な変化がある。それは、YouTubeがクリエイターの収益を広告だけに依存させない方向を明確にしていることである。

YouTubeは2025年時点で、年間5桁ドル以上を稼ぐチャンネルのうち50%超が広告とYouTube Premium以外の収益源からも収益を得ていたと説明している。また、チャンネルメンバーシップは前年に40%以上増加したとしており、収益の多様化がすでに進んでいる。

これは今回の制度変更を理解するうえで極めて重要なデータである。広告収益の参加条件を引き上げる一方で、ファン支援、Shopping、ブランド案件などを拡大するなら、YouTubeはクリエイターに「広告だけで稼ぐ」モデルから「複数の収益源を組み合わせて事業化する」モデルへの移行を促していることになる。

特にShoppingの拡大は注目すべきである。YouTubeは2025年7月時点でShoppingに参加するクリエイターが世界で50万人を超え、取引総額が前年比5倍になったと発表している。

さらに2026年3月には、一定条件を満たす500人以上の登録者を持つYPPクリエイターへShoppingアフィリエイトへのアクセスを拡大した。これは広告収益の本格的な参加条件を引き上げる一方で、比較的小規模なクリエイターにも「商品を紹介して収益を得る」という別ルートを開く政策である。

この構造は非常に興味深い。YouTubeにとって広告収益は大量の視聴者を必要とするが、Shoppingやファン支援は必ずしも巨大な視聴者数を必要としないからである。

例えば専門的なカメラ、釣具、PC、自動車、料理用品などを扱うチャンネルでは、登録者数が数千人でも視聴者の購買意欲が高ければ、広告収益よりShoppingやアフィリエイトの方が重要な収益源になる可能性がある。

このモデルでは「登録者数が多いチャンネル=最も価値が高いチャンネル」とは限らなくなる。視聴者がどの程度商品を購入するのか、ブランドにとってどれだけ価値のある顧客を集めているのか、メンバーシップにどれだけ転換するのかといった、より複雑な経済指標が重要になる。

YouTubeはすでにこの方向へ動いている。2025年にはクリエイターとブランドの関係を強化するため、広告主がクリエイターを探して提携できる仕組みを拡張し、長尺動画のスポンサー枠を後から入れ替えられる新しい仕組みなども発表している。

これはクリエイターにとって大きな意味を持つ。動画一本を「一度公開して広告収益を得るだけのコンテンツ」ではなく、スポンサー、Shopping、メンバーシップ、Premiumなど複数の収益源を生み出す「デジタル資産」として扱えるようになるからだ。

その結果、2027年以降のYouTube市場では、広告収益のYPP参加条件をクリアすることだけが成功ではなくなる。むしろ、広告、Premium、メンバーシップ、Super Thanks、Shopping、ブランド案件などを組み合わせ、一本のコンテンツから複数の経済的価値を引き出せるクリエイターほど、制度変更に強い構造になる。

日本市場にもこの影響は及ぶ。YouTubeが2025年に公表した(オックスフォード・エコノミクス)による日本のレポートでは、YouTubeのクリエイティブエコシステムが2024年に日本のGDPへ4,600億円を貢献し、8.5万人のフルタイム相当の雇用を創出したとされている。

これは、YPPの条件変更が単なる個人YouTuberの問題ではなく、広告、EC、芸能、メディア、教育、企業マーケティングなどを含む周辺産業にも影響し得ることを意味する。YouTubeが巨大な経済圏になった現在、YPPの制度変更はクリエイター個人の収益化条件だけではなく、動画を中心としたデジタル産業の競争条件そのものを変える可能性がある。

市場競争は「再生数」から「収益効率」へ

ここまでを総合すると、今回の制度変更によってYouTube市場の競争軸が少しずつ変わる可能性がある。これまでの競争では、登録者数、再生数、投稿頻度などの分かりやすい数字が重視されてきたが、今後は「一人の視聴者からどれだけ長期的な価値を生み出せるか」が重要になる。

例えば100万人に一度だけ見られる動画と、10万人に何度も見られるチャンネルでは、広告以外の収益まで含めた場合、後者の方が強い事業になる可能性がある。固定視聴者はメンバーシップ、Shopping、ライブ、スポンサー案件など複数の収益源へ転換できるためである。

YouTubeが広告市場だけではなく、Shoppingやブランド連携を強化していることは、この方向性を裏付けている。2025年にはYouTube自身が「クリエイター、コンテンツ、コミュニティが購買を生み出す」というShoppingエコシステムの成長を分析し、オンライン上のクリエイターが商品の発見や購買決定に影響を与えていることを示している。

したがって、今後の勝者は必ずしも「最も再生数を稼ぐ人」ではない。最も安定して視聴者を獲得し、その視聴者を長期的なファン、顧客、メンバー、コミュニティへ転換できる人が、制度変更後の市場で強くなる可能性が高い。

今回のYPP改定は、この変化を制度面から後押しするものと考えられる。広告収益の入口を厳しくすることで「大量再生だけを目的とした参入」を難しくし、同時にファン支援やShoppingなどの収益手段を拡大することで、「クリエイター自身が事業を構築する」方向へ誘導しているからである。

その意味では、2027年2月1日は単なる収益化条件の変更日ではない。YouTubeが「動画を投稿して広告収益を得る場所」から、「視聴者との関係を基盤に複数の事業を展開するクリエイター経済圏」へ、さらに一段階進もうとする転換点になる可能性がある。

今後の勝ち残り戦略

2027年2月1日からのYPP改定によって、YouTubeで収益を得るための基本戦略は変化する。これまでの「登録者1,000人と4,000時間、またはShorts 1,000万回を達成して広告収益化する」という単純な目標から、広告、ファン支援、Shopping、ブランド案件、YouTube Premiumなど複数の収益源を組み合わせる戦略へ移行する必要がある。

特に重要なのは、収益化のゴールを一つに設定しないことである。500人規模の段階ではファン支援やShopping、1,000人を超えて大規模な視聴実績を作れば広告・Premium、さらにチャンネルが成長すればスポンサーや商品販売などへ展開するという、段階的な事業モデルを構築する方が新制度には適合しやすい。

YouTube公式の現行制度でも、500人以上の登録者と一定の投稿・視聴実績があれば、メンバーシップ、Super Chat、Super Thanksなどのファン支援機能へ早期アクセスできる。広告・Premium収益については別に1,000人と4,000時間または1,000万Shorts再生という基準が設定されており、2027年からこの後者の条件が8,000時間または2,000万Shorts再生へ引き上げられる。

したがって、新制度下で強いクリエイターは「広告収益化できるまで何も考えない人」ではない。広告収益化以前から視聴者との関係を作り、ファン支援、商品紹介、アフィリエイト、スポンサーなどを組み合わせ、広告収益がなくても一定の事業価値を生み出せるクリエイターである。

もう一つ重要なのが、視聴者を「再生数」ではなく「資産」として考えることである。一度だけ動画を見て離脱する100万人よりも、毎週動画を見る10万人の方が、長期的には広告、メンバーシップ、Shopping、ライブなど複数の収益源へ転換しやすい。

このため、今後は「バズる動画」を作る能力と同時に、「バズを固定視聴者へ変換する能力」が重要になる。YouTubeのアルゴリズムから一時的に大量のアクセスを得るだけではなく、次の動画を見てもらい、チャンネルを登録してもらい、さらに長期的な関係へつなげる設計が必要になる。

新規参入者

2027年以降にYouTubeを始める新規参入者にとって、最大の変化は広告収益化までの距離が遠くなることである。長尺動画なら8,000時間、Shortsなら2,000万回という基準になるため、「とりあえず1,000人を目指す」という従来型の目標だけでは不十分になる。

しかし、これは新規参入を不可能にする数字ではない。むしろ重要なのは、広告収益化を最初の目標ではなく、一定規模まで成長した後の第二段階、第三段階の目標として設定することである。

最初の段階では、テーマを明確にし、誰に向けたチャンネルなのかを決める必要がある。広範囲の視聴者を狙って何でも投稿するよりも、「特定の悩みを解決する」「特定の商品を比較する」「特定ジャンルのニュースを解説する」など、視聴者がチャンネルを見る理由を明確にした方が固定視聴者を形成しやすい。

また、500人段階から利用可能になるファン支援機能を活用することも重要になる。YouTubeの現行制度では、一定条件を満たせば500人規模からメンバーシップ、Super Thanks、Super Chatなどの機能へアクセスできるため、広告収益化以前から視聴者との直接的な収益関係を構築できる。

新規参入者にとって特に避けるべきなのは、収益化条件だけを目的にした大量投稿である。Shortsを大量に投稿して一時的な再生数を稼いでも、その視聴者が登録者や固定ファンにならなければ、2,000万回という新基準を継続的に突破することは難しい。

今後は「一本の動画で何回再生されたか」より、「一本の動画を見た視聴者が次に何をしたか」を見る必要がある。次の動画を見たのか、チャンネル登録したのか、長尺動画へ移動したのか、ライブへ参加したのか、商品を購入したのかという行動まで含めてチャンネルを分析することが重要になる。

Shortsクリエイター

Shortsクリエイターにとって、今回の改定は特に大きな転換点になる。新規YPP参加で必要な再生数が90日間1,000万回から2,000万回へ倍増するため、Shortsだけで広告収益化を目指す難易度は明確に上がる。

しかし、Shorts自体の重要性が低下するわけではない。YouTubeは2026年時点でShortsが1日2,000億回以上視聴されていると説明しており、プラットフォームにとってShortsは依然として巨大な成長エンジンである。

したがって、Shortsクリエイターが取るべき戦略は「Shortsをやめる」ことではなく、「Shortsの役割を変える」ことである。Shortsを収益そのものの中心にするのではなく、新規視聴者を獲得するための入口として利用し、その後に長尺動画、ライブ、メンバーシップ、Shoppingなどへ接続する構造を作ることが重要になる。

例えば料理系チャンネルなら、Shortsで料理の完成映像や簡単なテクニックを見せ、長尺動画で完全なレシピを説明し、Shoppingで調理器具を紹介するという流れを作れる。ゲーム系ならShortsでプレーのハイライトを見せ、長尺動画で攻略を解説し、ライブ配信でコミュニティを形成するという構造が考えられる。

このような「Shorts→長尺→ファン→収益」という導線ができれば、2,000万回という数字そのものに依存する必要性を下げられる。もちろん広告収益を得るには高い再生基準を突破する必要があるが、Shortsから得た視聴者を他の収益源へ移行できれば、一人の視聴者から得られる経済価値を高めることができる。

一方、Shortsだけで毎回大量再生を狙うクリエイターは、より厳しい競争に直面する。90日という期間が短いため、過去に一度大きくバズった実績だけでは安定した収益基盤にならず、継続的に視聴者を獲得する仕組みが必要になる。

この意味でShorts市場では、「バズを作る能力」より「バズを再現する能力」の価値が上昇する可能性がある。これは今回の制度改定がクリエイターに求めている「継続的な実績」という考え方と一致する。

長尺動画クリエイター

長尺動画クリエイターにとっても8,000時間への引き上げは大きな負担になるが、Shortsとは異なる強みがある。それは、一つの動画が長期間にわたって視聴時間を生み出せることである。

検索需要のある動画、教育コンテンツ、商品レビュー、解説、ハウツーなどは、公開直後に爆発的な再生がなくても、半年、1年、数年にわたって視聴される可能性がある。こうした「蓄積型コンテンツ」を増やせれば、8,000時間という基準に対して比較的安定したアプローチが可能になる。

また長尺動画は、視聴者との関係を深めやすいという特徴もある。10分、20分、30分と視聴者が同じクリエイターの話を聞く時間が増えれば、単純なShorts視聴よりも専門性や人格、ブランドへの理解を形成しやすい。

したがって、2027年以降はShortsと長尺動画を対立させるのではなく、それぞれの役割を明確に分けることが重要になる。Shortsは発見、長尺は理解、ライブは交流、メンバーシップは支援、Shoppingは購買というように、各機能を一つのチャンネル内で連携させる考え方が有効になる。

今後の展望

今回のYPP改定によって、YouTubeのクリエイター市場は二極化する可能性がある。一方では、8,000時間や2,000万Shorts再生を突破できる大規模クリエイターが広告収益市場でより強い立場を持ち、他方では、広告収益に依存せずファン支援、Shopping、スポンサー、商品販売などを組み合わせる小規模・中規模クリエイターが増える可能性がある。

この変化は、必ずしもクリエイター数の減少を意味しない。むしろYouTubeが500人規模からファン支援やShoppingへのアクセスを提供することで、広告収益化できないクリエイターでも一定の収益を得られる経路を残しているからである。

今後さらに重要になるのは、YouTubeが広告以外の収益源をどこまで拡大できるかである。YouTube Shopping、メンバーシップ、Super Thanks、ブランド案件、Premiumなどが成長すれば、YPPは「広告を配るプログラム」から「クリエイターの事業インフラ」へと性格を変えていく。

特にYouTube Premiumの存在は重要である。広告が表示されない視聴者からもクリエイターへ収益が分配される仕組みは、YouTubeの広告モデルをサブスクリプションモデルと接続する役割を持つため、今後は広告再生数だけではチャンネルの収益力を判断できなくなる。

また、AIによる動画制作の普及も市場を大きく変える可能性がある。制作コストが低下すればコンテンツ供給量が増え、視聴者の限られた時間をめぐる競争はさらに激しくなるため、単純な量産よりも、独自性、専門性、信頼性、コミュニティなど「模倣されにくい価値」が重要になる。

この点から考えると、2027年のYPP改定はAI時代のクリエイター市場にも適応しようとする動きとして見ることができる。ただし、YouTube公式が今回の改定をAIコンテンツ対策そのものとして説明しているわけではないため、「AI排除が改定の目的」と断定することはできない。

むしろ確認できる事実は、YPP参加者が300万人を超える巨大な市場になり、Shortsが1日2,000億回以上視聴され、広告以外の収益源も拡大しているという環境変化である。YouTubeはこの巨大化した経済圏を、単純な登録者数や一度のバズだけではなく、継続的な視聴者との関係と複数の収益モデルによって再設計しようとしていると考えるのが妥当である。

まとめ

今回のYouTubeパートナープログラム改定は、「YouTubeの収益化が難しくなる」という一言だけでは説明できない。確かに2027年2月1日から、新規クリエイターが広告・YouTube Premium収益の分配対象となるための条件は、長尺動画で4,000時間から8,000時間、Shortsで1,000万回から2,000万回へと大幅に引き上げられる。

しかし、500人以上の登録者と一定の投稿・視聴実績を持つクリエイターに対するファン支援などの早期収益化ルートは維持される。つまりYouTubeは、すべての小規模クリエイターを広告市場から締め出すのではなく、「小規模段階ではファンとの関係を収益化し、大規模な広告収益を得るにはより高い視聴実績を求める」という二層構造へ移行している。

今回の変更で最も重要なのは、収益化の評価軸が「一度条件をクリアしたか」から「継続的に価値を生み出しているか」へ変わりつつある点である。特にShortsでは、90日間1,000万回という継続的な視聴規模が広告・サブスクリプション収益を維持するうえで重要になるため、一度のバズより再現性のある視聴者獲得能力が重要になる。

この変化によって、クリエイターの戦略も変わる。Shortsは新規視聴者の獲得、長尺動画は視聴時間と専門性、ライブはコミュニティ、メンバーシップはファン支援、Shoppingやブランド案件は購買・広告以外の収益というように、複数の機能を組み合わせることが重要になる。

したがって、2027年以降のYouTubeで最も強いクリエイターは、単に「再生数が多い人」ではない。安定して視聴者を集め、その視聴者との関係を長期的に維持し、広告、Premium、ファン支援、EC、スポンサーなど複数の収益へ転換できるクリエイターである。

今回のYPP改定は、YouTubeが成熟したことの一つの表れでもある。プラットフォームが小規模だった時代には「条件を満たしたクリエイターを広告市場へ参加させる」ことが中心だったが、300万人を超えるYPP参加者を抱える現在では、誰に広告収益を分配し、誰をファン支援市場へ誘導し、どのようにクリエイター経済全体を成長させるかという、より高度な制度設計が必要になっている。

その意味で2027年2月1日は、単なる収益化条件の変更日ではない。YouTubeが「動画を投稿して広告収益を得る場所」から、「視聴者との関係そのものを事業化する巨大なクリエイター・プラットフォーム」へ移行する転換点として捉えることができる。

最終的に今回の改定で問われるのは、クリエイターが8,000時間や2,000万回を突破できるかだけではない。変化するYouTubeの経済構造を理解し、Shorts、長尺、ライブ、ファン支援、Shopping、スポンサーなどを組み合わせながら、「一度だけ見られる動画」ではなく「何度も戻ってきてもらえるチャンネル」を作れるかどうかである。


参考・引用リスト

  • YouTube公式「New opportunities to earn and changes to the YouTube Partner Program」2026年8月10日。2027年2月1日からのYPP変更、新規参加条件、Shorts収益、クリエイター経済圏の拡大についての一次資料。
  • YouTube Help「拡充版 YouTube パートナー プログラムの概要」。500人登録者、3,000時間、300万Shorts再生による早期YPP参加条件、および広告・Premium収益の現行条件を確認するための公式資料。
  • YouTube Help「YouTube で収益を得るには」。YPPにおける広告、Shorts、YouTube Premium、メンバーシップ、Super Chat、Super Thanks、Shoppingなど各収益機能の概要。
  • YouTube公式「Additional changes to the YouTube Partner Program」2018年。登録者1,000人・4,000時間という旧来の主要基準が導入された際の制度変更を検証するための一次資料。
  • The Verge「YouTube is making it harder to earn money on YouTube」。2027年のYPP改定について、8,000時間、2,000万Shorts再生、Shorts収益維持条件、活動条件などを報道した主要テクノロジーメディア記事。
  • Business Insider「YouTube is making it harder for creators to start earning money」。今回の改定について、Shortsの視聴の不安定性や継続的なエンゲージメントを重視するYouTube側の考えを報じた記事。
  • Music Business Worldwide「New YouTube creators will need 8,000 watch hours to start earning from ads」。8,000時間・2,000万Shorts再生という新規参加条件を報じたメディア資料。
  • YouTube公式「The future of YouTube in 2026」。Shortsの大規模な視聴規模やYouTube全体のプラットフォーム戦略を確認するための資料。
  • YouTube公式「10 ways to monetize on YouTube」。広告以外を含むYouTubeの複数の収益化手段についての公式資料。
  • YouTube公式「YouTube Shopping expansion」。小規模クリエイターを含めたShopping機能の拡大と、広告以外の収益源に関する公式資料。
  • YouTube公式「Earn more with brand partnerships」。クリエイターとブランドの提携、スポンサーシップ、広告以外の収益機会に関する公式資料。
  • YouTube公式「Our big bets for 2025」。クリエイターの収益多様化、メンバーシップ、Shoppingなどについての公式説明。
  • YouTube公式・日本「2024年YouTube Impact Report」。日本国内におけるYouTubeクリエイティブエコシステムのGDP・雇用への経済的貢献を確認する資料。
  • YouTube公式「YouTube Shopping report」。クリエイター、コミュニティ、商品発見・購買行動の関係を分析した資料。
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