米国の大手法律事務所に「ガラスの天井」、パートナー昇格における数的格差、是正に向けた動きと今後の課題

大手法律事務所における男女の報酬格差は、女性弁護士の能力や努力が不足しているために生じるものではない。長時間労働を前提とした評価制度、顧客獲得をめぐる人的ネットワークの偏り、同質性バイアス、母親ペナルティなど、複数の要因が重なって形成されている。
弁護士事務所のイメージ(Getty Images)
現状(2026年10月時点)

米国の大手法律事務所では、女性弁護士の採用や若手層への進出が進み、法律専門職における男女構成は大きく変化している。かつて男性が多数を占めていた法科大学院の学生や法律事務所の若手弁護士では、すでに女性が過半数を占めるようになった。

しかし、法律事務所の経営や収益配分を左右する上級職では、依然として男性が優位に立っている。特に、法律事務所の共同経営者に相当するパートナーへの昇格、さらに事務所の利益配分に参加できる持分パートナーへの昇格では、男女間の構成比に大きな隔たりが残っている。

この問題は、単純な採用人数の差では説明できない。若手段階で女性が十分な割合を占めているにもかかわらず、キャリアを積み重ねる過程で女性の比率が低下し、最終的に経営上の意思決定や高額報酬を得る地位に到達する女性が少なくなるという、組織内部の構造的な問題である。

2026年10月には、米国の大手法律事務所200社を対象としたパートナー報酬調査をめぐり、男女間の報酬格差が改めて注目された。調査対象となったパートナーの平均報酬は、男性が168万ドル、女性が111万ドルであり、男性の報酬は女性を約51%上回っていた。

中央値で比較しても男女差は約33%に達しており、一部の高額報酬者だけが平均値を押し上げているという説明では不十分だ。しかも、今回の問題はパートナーに昇格できる女性が少ないという従来の格差に加え、昇格した後も男性と同等の経済的地位を確保できないという、もう1つの格差を浮き彫りにしている。

こうした状況を理解するには、法律事務所における昇進制度と報酬決定の仕組みを分けて考える必要がある。昇格前の人数格差と、昇格後の報酬格差は相互に関係しているものの、それぞれ異なる仕組みから生じているためだ。

何が起きているのか

米国の大手法律事務所では、一般的に若手弁護士として採用された後、経験と実績を積み重ね、上級弁護士であるパートナーへの昇格を目指すキャリア構造が採用されている。パートナーは単に経験年数が長い弁護士ではなく、重要な顧客を担当し、案件を獲得し、事務所の収益や経営にも責任を負う立場である。

ただし、パートナーには複数の区分が存在する。特に重要なのが、事務所の利益配分や経営上の意思決定に参加する持分パートナーと、原則として固定給や業績連動報酬を受け取る非持分パートナーの違いである。

非持分パートナーへの昇格は、一定の専門性や実務能力を認められたことを意味するが、必ずしも事務所の経営権や利益配分への参加を意味しない。したがって、女性がパートナーという肩書を獲得していても、持分パートナーになれなければ、男性と同じ経済的・組織的な地位を確保したとはいえない。

ここに、法律事務所特有の「ガラスの天井」が存在する。表面的には昇進機会が開かれていても、昇格の判断基準、顧客との関係構築、収益への貢献度の評価などにおいて、女性が不利になりやすい仕組みが残っているのである。

さらに問題なのは、パートナーになった後の報酬が一律ではないことだ。担当案件の規模、顧客から獲得した収益、時間当たりの請求単価、事務所内での貢献度などによって報酬が決定されるため、同じパートナーという肩書でも年収に大きな差が生じる。

つまり、女性弁護士がパートナーに昇格する段階で人数上の不利を経験し、昇格後には報酬決定の仕組みを通じて経済的な不利を経験するという二重構造が形成されている。前者を第1のガラスの天井、後者を第2のガラスの天井と捉えることができる。

この問題は、女性弁護士個人の能力や意欲だけで説明できるものではない。法律事務所が長年採用してきた労働時間中心の評価、顧客獲得を重視する報酬制度、男性中心の人的ネットワークなどが複雑に絡み合っている。

パートナー昇格における「数的格差」

米国の法律事務所における男女構成の実態を示す代表的な資料が、全米法律人材配置協会による2025年の多様性調査である。同調査によると、2025年時点で女性は法律事務所のアソシエイト全体の52.09%を占めている一方、パートナー全体に占める割合は29.55%にとどまっている。

この数字は、若手弁護士の段階では女性が男性を上回っているにもかかわらず、パートナーに昇格する段階で女性の割合が大幅に低下していることを示す。アソシエイトにおける女性の割合とパートナーにおける女性の割合には、約22.5ポイントの開きがある。

さらに注目すべきなのが、持分パートナーにおける女性の割合である。複数階層制を採用する法律事務所では、2025年に女性が持分パートナー全体の26.5%を占めた一方、非持分パートナーでは34.4%だった。

この差は、女性がパートナーに昇格できるかどうかだけでなく、昇格後にどの階層へ進めるかという問題も存在することを示している。女性はパートナーという肩書を獲得しても、事務所の利益配分や経営権に直接参加できる地位には到達しにくい傾向がある。

また、2025年の調査では、複数階層制の法律事務所において、男性パートナーの58%超が持分パートナーであるのに対し、女性パートナーでは49%にとどまった。男性と女性では、パートナーに昇格した後の経済的な階層にも違いが生じているのである。

英国でも同様の傾向が確認できる。英国事務弁護士規制機構の2025年調査によると、法律事務所に所属する弁護士全体では女性が55%を占める一方、持分パートナーでは35%にとどまっている。

米国と英国では法律制度や法律事務所の組織形態が異なるため、両国の数値を単純に比較することはできない。しかし、若手・一般弁護士層では女性が多数を占めながら、経営権や利益配分に関わる上級職では男性が優位に立つという共通点が認められる。

重要なのは、女性パートナーの割合が少しずつ上昇していることだけで、問題が解消に向かっていると判断しないことだ。女性がパートナー全体の約3割を占めるようになっても、持分パートナーや経営幹部への進出が遅れていれば、法律事務所の権限と利益配分をめぐる男女格差は残り続ける。

昇格後(第2のガラスの天井)の報酬格差

女性弁護士がパートナーに昇格できたとしても、それによって男女間の経済的な格差が解消するわけではない。むしろ、パートナーという同じ肩書を持ちながら、男性と女性の報酬に大きな差が生じていることが、米国の大手法律事務所における新たな問題として浮上している。

2026年10月27日に公表された法律専門職の人材紹介会社メジャー・リンジー・アンド・アフリカの「2026年パートナー報酬調査」は、この問題を具体的な数字で示している。米国の大手法律事務所200社に所属するパートナー1,016人から回答を得た調査では、2025年の男性パートナーの平均報酬は168万ドル、女性は111万ドルだった。

男性の平均報酬は女性を57万ドル上回り、女性の報酬を基準にすると約51%高い。反対に、男性の報酬を基準にすれば、女性の報酬は約34%低いことになるため、格差を示す際には比較の基準を明確にする必要がある。

さらに、平均値だけでなく中央値でも約33%の男女差が確認された。平均値は一部の極めて高額な報酬を得るパートナーの影響を受けやすいが、中央値にも大きな差があることから、格差が一部の特殊な事例に限定されていないことが分かる。

この調査で重要なのは、女性パートナーの報酬が男性より低いという結果だけではない。報酬の決定に大きく影響する顧客獲得額や請求単価にも男女差が存在しており、その差が報酬格差と密接に結びついている点である。

同調査では、パートナーの報酬は2024年の平均140万ドルから2025年には155万ドルへと約10%上昇した。一方、中央値の上昇率は約3%にとどまっており、法律事務所の収益拡大による恩恵が、パートナー全体に均等に分配されているわけではないことも示されている。

また、持分パートナーと非持分パートナーの報酬差も大きい。2025年の調査では、持分パートナーの平均報酬が217万ドルだったのに対し、非持分パートナーは61万1,000ドルであり、持分パートナーの報酬は約3.6倍に達した。

この数字を第1回で確認した男女の構成比と組み合わせると、問題の深刻さが見えてくる。女性は男性と比べて持分パートナーになりにくいだけでなく、持分パートナーになった後も、顧客獲得額や報酬評価の違いによって収入格差に直面する可能性がある。

つまり、女性がパートナーという地位を獲得することと、男性と同等の経済的地位を獲得することは別問題なのである。

格差を生み出す主要因の分析

法律事務所におけるパートナー報酬は、一般企業の給与体系とは大きく異なる。多くの大手事務所では、基本給だけでなく、担当案件から得られる収益、顧客を新たに獲得した実績、時間当たりの請求単価、事務所経営への貢献などが報酬に反映される。

そのため、同じ職位であっても、どの顧客を担当しているか、どれだけの案件を獲得しているか、どの程度の収益を事務所にもたらしているかによって報酬が大きく変わる。個人の成果を報酬に反映する仕組みは、優れた実績を持つ弁護士に高い報酬を支払うという点では合理性がある。

しかし、その評価に使われる実績そのものが、男女間で平等な条件の下で形成されているとは限らない。顧客を紹介される機会、重要案件への参加機会、経営幹部との接点、長時間働ける環境などに差があれば、最終的な業績評価にも差が生じる。

ここで注意すべきなのは、報酬格差が存在することだけで、直ちに同一労働に対する差別的な賃金支払いが証明されるわけではないという点だ。専門分野、経験年数、顧客獲得額、請求単価、持分の有無などを調整した比較が必要になる。

実際、今回の調査では、顧客獲得額がパートナー報酬の変動を説明する最大の要因となり、報酬の違いの約62%を説明すると分析されている。これは顧客を獲得する能力や、その実績をどのように評価するかが、法律事務所の報酬格差を理解するうえで極めて重要であることを意味する。

しかし、顧客獲得額が報酬差の大部分を説明できるとしても、それだけで問題が解決するわけではない。なぜ女性パートナーの顧客獲得額が男性より少なくなりやすいのか、また、同じような貢献をした場合に同等の評価を受けているのかという、さらに根本的な検証が必要になる。

この点から、男女の報酬格差は大きく3つの構造的要因に分けて考えることができる。

第1は、労働時間と請求可能時間を重視する評価制度である。長時間働ける弁護士ほど多くの案件を担当しやすく、結果として収益面で有利になる仕組みが、育児や介護などの負担を抱える人に不利に作用する可能性がある。

第2は、顧客を獲得する能力や人脈を重視する評価制度である。大口顧客との関係は短期間で形成できるものではなく、既存の男性中心の人的ネットワークが案件獲得機会の偏りを生み出す可能性がある。

第3は、人事評価や報酬決定における無意識の偏見である。同じ成果を上げても、男性の能力や将来性は高く評価される一方、女性にはより厳しい実績証明が求められるといった評価上の不均衡が存在すれば、昇進後の報酬にも影響する。

この3つは独立して存在するわけではない。長時間労働が難しいことで重要案件への参加機会が減り、顧客との関係構築が遅れ、結果として顧客獲得実績が低く評価されるというように、複数の要因が連鎖して格差を拡大させる可能性がある。

① 「アワー(ビルカブル・アワー)」至上主義と長時間労働モデル

米国の大手法律事務所における男女の報酬格差を生み出す要因の1つが、請求可能時間を重視する評価制度である。ビルカブル・アワーとは、弁護士が顧客に対して請求できる業務時間を指し、法律事務所では担当案件に費やした時間を積み上げ、その実績を収益や人事評価に反映させる仕組みが長年採用されてきた。

大手法律事務所では、年間2,000時間前後、あるいはそれ以上の請求可能時間を目標として設定する事例がある。実際には、顧客との打ち合わせ、契約書の作成、訴訟準備、証拠の検討、法的調査など、膨大な業務を継続的に処理する必要があり、夜間や休日の勤務も珍しくない。

この制度には、弁護士の労働投入量を数値化し、顧客に対する請求額や事務所の収益を管理しやすいという利点がある。しかし、請求可能時間を弁護士の能力や貢献度を測る主要指標として扱うと、短時間で質の高い仕事を完成させる能力や、組織運営への貢献などが十分に評価されないという問題が生じる。

さらに、長時間労働を前提とする働き方は、育児や介護などの家庭責任を担う弁護士に不利に作用しやすい。家庭内の無償労働を女性が多く担う社会的傾向があるため、女性弁護士は仕事に投入できる時間を確保しにくく、その結果として請求可能時間の実績で男性に後れを取る可能性がある。

米国法曹協会の女性専門委員会が公表した2023年の「親と介護者の法律家キャリア」に関する報告書も、この問題を指摘している。調査参加者は、請求可能時間を生産性や報酬の主要な判断基準にすることが、女性、とりわけ母親である女性弁護士に不利益を与えていると述べている。

同報告書では、法律事務所内の人間関係を維持する仕事、若手弁護士の指導、職場環境の改善、各種委員会への参加など、事務所の運営に必要な業務についても問題が提起された。こうした業務は請求可能時間に含まれにくく、女性が多く担っているにもかかわらず、昇進や報酬の評価では十分に考慮されない場合がある。

つまり、女性弁護士は顧客に直接請求できる業務だけでなく、組織を維持するための目立たない仕事も担いながら、その貢献が報酬に反映されにくいという二重の不利益に直面することがある。

構造的弊害

この制度の問題は、単純に労働時間が長いことではない。長時間働けること自体が能力や将来性の証明として扱われ、重要な案件への参加、顧客との接点、昇進候補としての評価にまで影響する点にある。

例えば、同じ能力を持つ2人の弁護士がいたとしても、一方が夜間や休日も含めて長時間働ける環境にあり、もう一方が育児のため勤務時間に制約を抱えていれば、前者に重要案件が集中する可能性がある。重要案件を経験した弁護士は専門性を高め、顧客との信頼関係を築き、次の案件を獲得する機会も得やすくなる。

その結果、当初は勤務時間の違いにすぎなかったものが、数年後には案件実績、顧客獲得額、報酬、昇進機会の差へと拡大する。これは、個人の努力や能力だけでは埋めにくい、機会配分を通じた構造的な格差である。

もっとも、2026年10月に公表されたパートナー報酬調査は、従来の長時間労働モデルが変化しつつあることも示している。2025年のパートナーの平均請求可能時間は1,656時間で、前年から約4%減少した一方、平均報酬は10%増加し、時間当たりの請求単価も11%上昇していた。

この結果は、法律事務所の報酬が労働時間だけで決まる時代から、専門性や価格決定力、顧客獲得力を重視する時代へ移行していることを示唆する。しかし、時間評価の比重が下がっても、顧客獲得実績を重視する仕組みが残れば、別の形で男女格差が再生産される可能性がある。

② クライアント・アトラクション(案件獲得力)の評価バイアス、ネットワークの壁、顧客のアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)

長時間労働と並んで、パートナー報酬を左右する重要な要素が、顧客を獲得する能力である。法律事務所では、弁護士自身が企業や個人の顧客を開拓し、継続的な法律業務を受注することが重要な経営貢献とみなされる。

こうした案件獲得実績は、一般に顧客獲得額や案件獲得実績として管理され、報酬や持分パートナーへの昇格判断に利用される。2026年のパートナー報酬調査でも、顧客獲得額は報酬の変動を説明する最大の要因であり、その説明力は約62%とされている。

つまり、どれほど高度な法律知識を持ち、訴訟や契約交渉で優れた成果を上げても、自分自身の顧客基盤を形成できなければ、報酬面で不利になる可能性がある。ここに、女性弁護士が直面する案件獲得機会の不均衡という問題がある。

ネットワークの壁

大口顧客との関係は、単に営業活動をすれば獲得できるものではない。企業経営者や法務責任者、金融機関の幹部、他の専門家などとの長期的な信頼関係が必要であり、重要な案件の紹介や継続的な受注は、既存の人的ネットワークを通じてもたらされることが多い。

米国の大手法律事務所では、長年にわたって男性が経営や顧客対応の中心を担ってきた。そのため、男性パートナー同士がゴルフ、会食、業界団体、大学の同窓関係などを通じて築いた人脈が、案件の紹介や共同受任につながる場合がある。

女性弁護士がこうした非公式なネットワークから排除されれば、同じ能力を持っていても顧客と接触する機会そのものが少なくなる。特に、顧客企業の経営幹部や法務責任者が男性中心である場合、仕事上の信頼関係が既存の男性同士の人脈を通じて形成されやすい。

米国法曹協会の2022年の分析でも、女性弁護士は非公式な交流や顧客との関係構築の機会において不利な立場に置かれることがあると指摘されている。同協会が紹介した調査では、女性の有色人種の46%、白人女性の60%が、性別を理由に公式または非公式のネットワーク形成機会を拒まれたと回答している。

また、退職する男性パートナーが長年担当してきた顧客を誰に引き継ぐかという問題も重要だ。後継者の選定が明文化された基準ではなく、個人的な信頼関係や過去の師弟関係に基づいて行われれば、男性の後輩が顧客を引き継ぎやすくなり、女性には顧客基盤を拡大する機会が回ってこない可能性がある。

このような仕組みでは、男性は既存の顧客基盤を引き継ぎ、さらに新しい顧客を獲得する好循環に入りやすい。一方、女性は顧客獲得の実績が少ないと評価され、重要な顧客を任される機会も減るという悪循環に陥りやすい。

顧客側のアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)

案件獲得の機会を左右するのは、法律事務所内部の人脈だけではない。顧客企業側の無意識の偏見も、女性弁護士が大口案件を獲得するうえでの障壁となり得る。

例えば、企業の経営者や法務責任者が、重大な訴訟や企業買収などの重要案件を担当する弁護士として、無意識に男性を想定している場合がある。女性弁護士が高度な専門性や豊富な経験を持っていても、最初から男性弁護士の方が適任であると判断されれば、顧客との接点や案件獲得の機会に差が生まれる。

また、顧客との初回面談や営業活動では、女性弁護士が実務担当者として扱われ、男性の同僚が最終的な意思決定者や責任者として認識されることもある。女性が実際の案件を主導していても、顧客が男性パートナーを中心に関係を構築すれば、将来的な案件の紹介や追加受注は男性側に集中しかねない。

こうした偏見は、必ずしも露骨な女性差別として表れるわけではない。顧客が男性弁護士を選ぶ理由を経験や専門性の違いだと認識していても、その判断の背景に性別に関する固定観念が影響している可能性がある。

さらに、女性弁護士が顧客獲得に成功しても、案件の紹介者や事務所内の上級パートナーが獲得実績の一部を要求することがある。米国法曹協会が紹介する法律事務所の案件獲得実績の配分に関する分析では、女性が顧客との主要な窓口を務め、実際の業務の大部分を担当していても、男性の上級パートナーに獲得実績が配分される問題が指摘されている。

この場合、女性は顧客との関係維持や実務を担いながら、報酬決定に影響する案件獲得実績を十分に得られない。結果として、同じ案件から生まれた収益への貢献と、個人に付与される評価との間に不均衡が生じる。

したがって、案件獲得力の男女差を分析する際には、実際にどれだけの顧客を獲得したかだけでなく、顧客と接触する機会が平等に与えられていたか、獲得実績が適正に配分されたかまで検証する必要がある。

2025年に発表された米国の大手法律事務所に関する研究でも、男女間の請求可能時間や新規顧客数の差について、従来重視されてきた案件配分、指導関係、就業前の属性だけでは大部分を説明できないとの分析が示された。研究者は、人的ネットワーク、偏見の軽減、組織的支援などの重要性を指摘している。

この研究は、女性弁護士の実績が低いことを、そのまま個人の能力や営業努力の不足と結びつけることの危険性を示している。組織がどのような機会を提供し、誰に顧客との接点を与え、どのように成果を認定しているかという制度面の検証が不可欠なのである。

③ 評価における同質性バイアスと「母親ペナルティ」

法律事務所の男女格差を考えるうえで、請求可能時間や顧客獲得実績と並んで重要なのが、パートナー昇格や報酬を決める評価過程そのものに潜む偏りである。評価基準が形式上は男女共通であっても、評価する側の認識や職場で共有されている「優秀な弁護士像」が男性を基準に形成されていれば、女性は同じ成果を上げても異なる評価を受ける可能性がある。

この問題の背景にあるのが、同質性バイアスである。人は自分と似た経歴、価値観、性格、働き方を持つ相手に親近感を抱き、その能力や将来性を高く評価しやすい傾向がある。

大手法律事務所のパートナー層が男性中心であれば、昇格候補者を評価する側も男性が多数を占めることになる。その結果、男性パートナーと似た働き方や顧客対応のスタイルを持つ男性弁護士が「将来の経営を担える人材」と認識されやすく、異なる働き方をする女性弁護士の貢献が見落とされる可能性がある。

例えば、積極的に発言し、強い交渉姿勢を示す男性弁護士は「リーダーシップがある」と評価される一方、同様の行動を取る女性弁護士は「攻撃的」「協調性に欠ける」と受け止められることがある。反対に、周囲との調整やチームへの貢献を重視する女性弁護士は「補佐役として優秀」と評価されても、経営を担うパートナーとしての能力を十分に認められない場合がある。

こうした評価の違いは、必ずしも評価者が意識的に女性を低く扱っていることを意味しない。むしろ、同じ行動に対して異なる意味づけを行い、その積み重ねが昇進や報酬の格差につながる点に問題がある。

2025年に公表された法律事務所の男女評価に関する研究論文も、採用や人事評価において無意識の偏見が作用する仕組みを整理している。弁護士には、積極性、競争心、強い自己主張などが求められるという固定観念があり、こうした特性が男性と結びつけられやすいことが、女性や少数派の評価に影響するという分析である。

評価基準の曖昧さが格差を広げる

同質性バイアスが強く作用するのは、評価基準が曖昧な場合である。例えば、「リーダーシップがある」「将来性が高い」「顧客から信頼されている」といった評価項目は、一見すると合理的だが、具体的な判断基準がなければ評価者の主観に左右されやすい。

さらに、パートナー昇格では、過去の実績だけでなく、将来どれだけ事務所に貢献できるかという予測も重視される。顧客との関係構築や経営能力について、明確な評価方法が定められていなければ、評価者が自分と似た経歴を持つ候補者に高い将来性を見いだす可能性がある。

問題は、こうした評価が1度の昇格審査だけで完結しないことだ。若手時代の案件配分、上級パートナーからの指導、顧客との接点、重要な会議への参加機会などが、本人の実績と評価を形成し、その後の昇進判断にも影響する。

つまり、女性が初期段階で重要案件や顧客対応の機会を得にくければ、昇格審査の時点で男性候補者と同じ実績を示すこと自体が難しくなる。評価制度が過去の実績を重視するほど、過去の機会配分に存在した格差が、そのまま次の格差を正当化する材料になりかねない。

このような循環を断つには、評価者の意識改革だけでは不十分である。案件配分、顧客獲得実績の認定、昇格候補者の選定、報酬決定までの過程を一体として検証する必要がある。

「母親ペナルティ」――出産・育児がキャリア上の不利益に変わる

同質性バイアスと密接に関係するのが、「母親ペナルティ」と呼ばれる現象である。これは、子どもを持つ女性が、職場で能力や仕事への意欲、組織への貢献度を低く評価され、昇進や報酬の面で不利益を受ける現象を指す。

米国法曹協会の女性専門委員会が2023年に公表した、法律家の親や介護者のキャリアに関する報告書は、法律業界における母親への偏見を具体的な調査結果とともに示している。ハーバード・ロー・スクールが2024年に紹介した同報告書の内容によれば、法律事務所で働く母親の60%が、子どものいない人や父親と比べて、自分が能力や仕事への献身性を低く見られていると感じていた。

同じ調査で、父親について同様の認識を持つ割合は25%だった。育児を担うこと自体は男女に共通するにもかかわらず、母親に対して、仕事への責任感や職務への優先順位を疑う見方が強く働いていることがうかがえる。

この偏見は、母親が実際に仕事の成果を落としているかどうかとは別の問題である。子どもの送迎や看病などで勤務時間に制約が生じた場合、職場の上司や同僚が、それを一時的な生活上の事情ではなく、長期的な仕事への意欲の低下と結びつけてしまうことがある。

その結果、母親である女性弁護士は、重要な案件や顧客対応から外される、昇進候補としての評価を下げられる、責任の大きい仕事を任されなくなるといった不利益を受ける可能性がある。本人が育児休業から復帰し、従来と同等の業務を遂行できる状態に戻っても、周囲の認識が以前のままとは限らない。

「理想の弁護士像」と育児の衝突

大手法律事務所では、重要な案件が発生すれば、急な会議や顧客対応、期限直前の作業が求められることがある。顧客の要望に即応できることや、時間の制約なく業務を引き受けられることが、優秀な弁護士の条件として扱われやすい。

しかし、育児を担う弁護士にとって、夜間や休日の急な業務に常に対応することは容易ではない。勤務時間に制約があるという理由で重要案件から外されれば、顧客との関係や実績を積み上げる機会が減り、結果としてパートナー昇格に必要な評価を得にくくなる。

さらに、出産や育児による休業期間は、単に働いていない期間として扱われるだけではない。休業中に顧客との関係が途切れたり、担当案件が他の弁護士に移されたりすれば、復帰後に同じ顧客基盤や業務上の地位を取り戻すことは難しい場合がある。

この問題は、昇格審査の時期とも関係する。弁護士として経験を積み、パートナー候補として評価される重要な時期が、結婚、出産、育児と重なることがあるためだ。男性弁護士にはキャリアの継続を前提とした経験蓄積が期待される一方、女性弁護士には出産や育児による中断を想定した評価が行われることがある。

もっとも、母親ペナルティを単純に出産や育児だけの問題として説明することには注意が必要だ。2013年に公表された法律家の親であることと報酬の関係を調べた研究では、報酬決定において親であるかどうかよりも性別の影響が大きく、親であること自体の統計的な有意な影響は確認されなかった。

この研究結果は、母親であることがあらゆる職場で一律に報酬を下げると断定できないことを示す。一方、米国法曹協会の2023年報告書や近年の法律業界の分析は、母親が能力や仕事への献身性を疑われ、案件配分や昇進機会で不利益を受ける経験が存在することを示している。

したがって、母親ペナルティを検証する際には、報酬額だけでなく、育児休業の前後で担当案件がどう変わったか、顧客との関係が維持されたか、昇格審査の対象となる実績を積めたかまで見る必要がある。

女性パートナーにも続く「第2のガラスの天井」

女性がパートナーに昇格すれば、男女格差が解消するわけではない。パートナーになった後も、持分パートナーへの昇格、事務所の経営への参加、大口顧客の担当、報酬決定における発言力などで差が残る可能性がある。

特に、事務所の経営や報酬決定を担う委員会の構成が男性中心であれば、女性パートナーの意見が制度に反映されにくいことがある。女性がパートナーの肩書を得ても、経営上の重要な意思決定から遠ざけられていれば、実質的な権限や報酬の面で男性との差は残る。

また、女性パートナーが組織内の多様性推進、若手の指導、職場環境の改善などを担う場合、それらの業務が正式な評価項目に含まれていなければ、組織への貢献が報酬に結びつかない。こうして女性は、パートナー昇格後も、組織を支える仕事を多く担いながら、収益や顧客獲得を中心とする評価では不利になるという問題に直面する。

このような格差は、女性がパートナーになれないという従来型の「ガラスの天井」とは異なる。パートナーになった後も、権限や報酬の上位層へ進む道が狭められるという意味で、第2のガラスの天井と呼ぶことができる。

是正に向けた動きと今後の課題

こうした問題を受け、米国の法律事務所では、採用や昇格、報酬決定における偏りを減らすための取り組みが進められている。米国の法律事務所の採用・配置に関する調査では、約65%の事務所が、採用、業績評価、昇進、パートナー昇格などの少なくとも1つの段階で、偏見を抑えるための手続きを導入していると回答した。

ただし、取り組みの導入状況には段階による差がある。採用段階では偏見を抑える手続きを導入した事務所が89%に達する一方、持分パートナーへの昇格では54%にとどまっていた。

この差は、採用時の多様性確保に比べて、経営権や報酬配分に直結する段階で制度改革が進みにくいことを示している。採用した女性弁護士をパートナーへ育成し、さらに経営や報酬決定に参加できるようにするには、採用後の長期的な制度改革が必要になる。

大手法律事務所の男女格差は、単に女性のパートナー昇格者が少ないという問題にとどまらない。評価する側の同質性バイアス、母親に対する能力や献身性への疑念、育児による案件配分や顧客関係の変化などが重なり、昇格後の報酬や経営参加にも影響を及ぼしている。

重要なのは、女性弁護士に男性と同じ働き方を求めるだけでは、格差の根本的な解消にはならないという点である。評価基準、案件配分、育児休業後の復帰支援、経営参加の機会を見直し、個人の事情や性別に左右されずに成果を評価できる仕組みを整える必要がある。

是正に向けた動きと今後の課題

大手法律事務所における男女格差を是正するには、女性弁護士の採用数を増やすだけでは不十分である。パートナー昇格、持分パートナーへの移行、顧客獲得実績の認定、報酬決定、経営への参加まで、キャリアの各段階に存在する障壁を取り除く必要がある。

そのためには、まず格差の実態を数値で把握し、改善目標を設定することが重要になる。女性パートナーの割合だけでなく、持分パートナーの割合、昇格率、平均報酬と中央値、顧客獲得実績、重要案件への参加状況などを継続的に調べなければならない。

数値目標の設定と透明性の確保

最初に必要なのは、法律事務所が自らの男女格差を正確に把握することである。例えば、女性弁護士が全体の半数を占めていても、パートナー層では3割に満たず、さらに持分パートナーに限ると割合が低下するのであれば、昇格過程のどこかに障壁が存在する可能性がある。

米国の全米法律人材協会が2026年3月に公表した2025年版報告書によれば、米国法律事務所の女性アソシエイトは52.09%に達した一方、女性パートナーは29.55%だった。複数階層のパートナー制度を採用する事務所では、持分パートナーに占める女性の割合は26.5%であり、非持分パートナーの34.4%を下回っている。

この数字は、女性が法律事務所に採用され、弁護士として働く段階では一定の存在感を持っていても、経営権や利益配分に関わる上位層へ進む過程で人数が減少することを示している。したがって、女性パートナーの比率だけを目標にするのではなく、持分パートナーへの昇格率や、昇格候補者に占める女性の割合も確認する必要がある。

英国でも同様の傾向が確認できる。英国事務弁護士規制局が2026年3月に公表した2025年のデータでは、法律事務所で働く弁護士の55%が女性だったが、持分パートナーでは35%にとどまっていた。さらに、従業員50人以上の大規模事務所では、持分パートナーに占める女性の割合は31%だった。

こうしたデータを踏まえ、各事務所は最終的に達成すべき目標と、その達成度を測る指標を分けて設定するべきである。例えば、女性の持分パートナー比率を一定水準まで引き上げることを最終目標とし、昇格候補者の男女構成、重要案件への参加率、顧客獲得実績の認定状況、報酬差などを進捗を測る指標とする。

ただし、数値目標を設定するだけでは実効性はない。目標の達成状況を毎年公表し、未達成の場合には理由を分析して改善策を示す仕組みが必要になる。

報酬の透明性も重要な課題である。2024年の法律事務所パートナー報酬調査では、報酬決定の仕組みが公開されている事務所のパートナーは、非公開の事務所のパートナーより報酬制度への満足度が高かった。報酬制度が不透明であれば、何を達成すれば報酬が上がるのか分からず、評価に対する不信感も強まりやすい。

報酬の算定基準を明確にし、請求可能時間、案件収益、顧客獲得実績、チームへの貢献、若手の指導、事務所運営への参加などをどのように評価するかを示すことが求められる。男女間の平均報酬や中央値の差についても、役職、専門分野、勤続年数、持分の有無などを考慮した分析を行い、差が生じている理由を説明する必要がある。

アサインメントや評価基準の見直し

2つ目の課題は、案件配分と評価基準の見直しである。女性弁護士が大口顧客や重要案件に参加する機会を得られなければ、顧客獲得実績を積み上げることは難しい。

そのため、案件の担当者や責任者を決める際には、過去の人間関係や上級パートナーの個人的な判断だけに依存しない仕組みが必要になる。案件の規模や専門性、弁護士の経験、育成上の必要性などを考慮し、候補者の選定過程を記録することが望ましい。

特に重要なのは、女性弁護士を単なる実務担当者として配置するのではなく、顧客との交渉や案件全体の管理を担う立場に積極的に登用することだ。顧客との関係構築を経験し、案件を主導する機会を与えなければ、将来のパートナー候補として必要な実績を形成できない。

顧客獲得実績の認定方法も改める必要がある。顧客を最初に紹介した弁護士、顧客との関係を維持した弁護士、実際の業務を主導した弁護士など、複数の貢献を区別して評価するべきである。

複数の弁護士が顧客獲得に貢献した場合には、実際の役割に応じて実績を配分する基準を明確にする。上級パートナーが顧客との関係を持っているという理由だけで、実務を担った女性弁護士の貢献が過小評価されることを防ぐためだ。

評価制度についても、曖昧な印象評価を減らす必要がある。「リーダーシップ」「将来性」「顧客からの信頼」といった項目を用いる場合には、それぞれをどのような行動や成果によって判断するのかを明文化するべきである。評価者を複数人にすることや、評価結果に対する異議申し立ての機会を設けることも、偏りを抑える手段となる。

2026年10月にロイターが報じた米国の法律事務所ハンソン・ブリジェットの取り組みは、制度改革の具体例である。同事務所は評価基準の標準化、報酬決定委員会の構成の多様化、評価期間の短縮、前年の報酬額を次年度の判断材料とする慣行の廃止などを進めた。

その結果、女性パートナーの基本報酬は男性の99%に達したと報じられている。ただし、これは同事務所の基本報酬に関する結果であり、報酬総額や全法律事務所における男女格差が解消したことを意味するものではない。それでも、報酬決定の仕組みを見直すことで格差を縮小できる可能性を示す事例といえる。

柔軟な働き方と男性の育児休業取得促進

3つ目は、長時間労働を前提とする働き方の見直しである。法律事務所では顧客の要望に迅速に対応する必要があるが、常に夜間や休日まで働けることを優秀さの基準にする必要はない。

リモートワーク、時差勤務、短時間勤務、業務の分担、休業後の段階的な復帰など、複数の働き方を整備することが求められる。重要なのは、柔軟な働き方を選んだ弁護士が、重要案件や昇進機会から排除されないようにすることだ。

また、育児休業や介護休業を女性だけの問題として扱わないことも重要である。男性パートナーや男性アソシエイトが育児休業を取得し、家庭責任を分担することが一般化すれば、育児を理由に女性だけがキャリア上の不利益を受ける構造を変えるきっかけになる。

休業を取得した男性が昇進や報酬で不利にならず、復帰後も重要案件を担当できることを組織として示す必要がある。男性の育児参加を例外的な行動ではなく、通常の働き方の一部として定着させることが、女性のキャリア継続にもつながる。

さらに、育児休業から復帰した弁護士に対して、休業前の顧客や案件をどのように引き継ぐか、復帰後の評価期間をどう設定するかを明確にしておく必要がある。休業によって顧客基盤や昇進機会を失わないよう、復帰後の支援を制度化することが重要だ。

今後の展望

大手法律事務所の男女格差は、短期間で解消できる問題ではない。パートナー層の構成は、採用、案件配分、育成、顧客獲得、昇格という長い過程の結果であり、現在の経営陣の構成にも過去の制度や慣行が反映されている。

それでも、女性パートナーの割合は緩やかに上昇している。米国の全米法律人材協会の2025年報告書では、女性パートナーの割合は29.55%となり、過去最高を記録した。英国でも、事務弁護士規制局のデータで女性パートナーの割合は2015年の32%から2025年には40%へ上昇している。

ただし、人数の増加と報酬・権限の平等は別の問題である。女性パートナーが増えても、持分パートナーへの昇格が少なく、報酬決定や経営への参加が限られていれば、格差の中心は形を変えて残る。

今後は、人工知能による文書作成や法的調査の効率化も、法律事務所の評価制度に影響する可能性がある。業務時間を積み上げる従来の収益モデルが変化すれば、弁護士の能力を測る基準も、作業時間から専門的判断、顧客への付加価値、案件全体の管理能力へと移っていく可能性がある。

その変化が男女格差の縮小につながるかどうかは、制度設計次第である。従来の長時間労働モデルが弱まっても、顧客獲得実績や非公式な人脈を重視する慣行が残れば、女性が不利な状況は続きかねない。

したがって、法律事務所に求められるのは、単に女性の登用を増やすことではない。誰に重要な案件を任せるのか、顧客獲得への貢献をどう認定するのか、どのような成果を報酬に反映させるのかという経営の根幹を見直すことである。

まとめ――「女性が少ない」のではなく、機会と評価の仕組みに問題がある

大手法律事務所における男女の報酬格差は、女性弁護士の能力や努力が不足しているために生じるものではない。長時間労働を前提とした評価制度、顧客獲得をめぐる人的ネットワークの偏り、同質性バイアス、母親ペナルティなど、複数の要因が重なって形成されている。

パートナー昇格の段階では、女性が重要案件や顧客との接点を得る機会に差が生じ、その結果として昇格に必要な実績を積みにくくなる。さらに、パートナーになった後も、持分パートナーへの昇格、報酬決定、経営参加の面で格差が残る可能性がある。

2026年の調査で示された男女のパートナー報酬の差は、こうした問題が現在も続いていることを示す重要な材料である。ただし、平均報酬の差だけを見て原因を性別に帰することはできない。案件獲得実績、請求単価、役職、専門分野、勤続年数などを考慮しながら、機会の配分や評価制度にどのような偏りがあるかを検証する必要がある。

本質的な改革は、女性弁護士に男性と同じ働き方を求めることではない。誰もが同じ基準で評価され、重要な案件を担当する機会を得て、実際の貢献に見合った報酬と権限を得られる仕組みをつくることだ。

「ガラスの天井」を取り除くには、女性の努力だけに解決を委ねるのではなく、法律事務所自身が評価と報酬の制度を変えなければならない。採用数の改善にとどまらず、パートナー昇格後の権限と報酬まで含めた改革を進められるかどうかが、今後の米国法律業界の競争力と持続可能性を左右することになる。


参考・引用リスト

米国の法律事務所における女性比率・昇格格差

1. National Association for Law Placement(NALP), 2025 Report on Diversity in U.S. Law Firms, 2026年3月。女性アソシエイト、女性パートナー、持分・非持分パートナーの構成比に関する資料。

2. Solicitors Regulation Authority(SRA), Diversity in Law Firms' Workforce, 2026年3月11日。英国の法律事務所における男女構成、役職別の女性比率、事務所規模別の格差に関する資料。

パートナー報酬と報酬決定制度

3. Major, Lindsey & Africa(MLA), 2026 Partner Compensation Survey, 2026年10月27日。米国の大手法律事務所のパートナー報酬、男女別平均報酬、顧客獲得実績、請求可能時間などに関する調査。

4. Major, Lindsey & Africa(MLA), 2024 Partner Compensation Survey, 2024年。報酬制度の透明性とパートナーの満足度などに関する調査。

5. Reuters, “Why women law firm partners still earn less than men,” 2026年10月28日。男女のパートナー報酬格差、顧客獲得実績の配分、報酬制度の透明化に関する報道。

顧客獲得実績と評価制度

6. American Bar Association(ABA), “Law Firm Origination Policies: Climbing the Mountain to Equity,” 2020年。法律事務所における顧客獲得実績の認定方法と、報酬・昇格への影響に関する論考。

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