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2027年度予算要求、143兆円前後、4年連続で過去最大、「成長」と「持続可能性」は両立し得るか?

2027年度予算要求が143兆円前後となり、4年連続で過去最大を更新する見通しとなったことは、日本の財政政策が明確に「成長重視」へと軸足を移していることを示している。
高市総理(AP通信)
現状(2026年9月時点)

2026年9月時点で、日本の財政政策は大きな転換点を迎えている。2027年度予算編成に向けた各省庁の概算要求は、一般会計で総額143兆円前後に達する見通しとなり、4年連続で過去最大を更新する規模となった。前年度の概算要求総額が122兆4454億円だったことを考えると、今回の膨張は単なる物価上昇や社会保障費の自然増だけでは説明しにくく、政府が経済成長を促すための財政支出を積極的に拡大しようとしていることが背景にある。

ただし、ここで注意すべきなのは、「143兆円」という数字がそのまま2027年度に実際に支出される金額を意味するわけではない点である。概算要求は各省庁が必要と考える経費を財務当局に要求する段階の数字であり、今後の査定や政府・与党間の調整を経て、最終的な政府案と当初予算が決定されるためである。

それでも今回の要求額が重要なのは、単に過去最大という規模だけではない。従来の予算編成では、各省庁の要求額を一定の上限や削減基準の中で抑制する仕組みが重視されてきたのに対し、今回は成長投資を促すための新たな枠組みが導入され、財政支出を抑える従来型の発想から、政府が重点分野へ資金を投入して経済成長を押し上げる発想への転換が鮮明になっている。

この政策転換を評価するためには、「予算が大きくなったか」という一点だけを見るのでは不十分である。重要なのは、増加した支出が将来の生産性や所得、税収を生み出す投資になっているのか、それとも一時的な需要喚起にとどまり、将来世代の負担だけを増やす支出になっているのかという点である。

2027年度予算要求の全体像と主な特徴

2027年度予算要求の最大の特徴は、政府が「経済成長のための財政」という方向性を明確に打ち出していることである。各省庁の要求には、従来型の行政経費や社会保障関係費だけでなく、産業競争力の強化、先端技術、経済安全保障、エネルギー、インフラ、防災など、中長期的な成長力を高めることを狙った政策が盛り込まれている。

この背景には、日本経済が長期間にわたって抱えてきた低成長問題がある。政府が財政支出を通じて需要を下支えすると同時に、民間企業の設備投資や研究開発を誘発できれば、単純な景気対策ではなく、供給能力そのものを高める政策となる可能性がある。

一方、歳出の拡大には構造的な問題もある。国の予算では社会保障、地方交付税、国債費など、政策判断によって短期間で削減することが難しい経費の割合が大きくなっており、新たな成長分野へ予算を振り向けようとすれば、既存歳出を削るか、税収などの歳入を増やすか、あるいは国債発行によって財源を確保する必要がある。

つまり、2027年度予算の本質は「143兆円という巨大な要求額」そのものではなく、限られた財政資源をどこに配分し、その支出によって将来どれだけの経済的リターンを得られるのかという問題にある。政府が積極財政を掲げるのであれば、支出額の大きさだけではなく、支出の質と効果について説明責任を果たす必要がある。

さらに、今回の予算編成では、当初予算と補正予算の関係を見直す方向も打ち出されている。これまで日本では、年度途中に大型の補正予算を組み、当初予算とは別枠で経済対策を追加するケースが繰り返されてきたが、政府はこれをより一体的に扱う方向を示している。この変更は、予算の透明性や政策の継続性を高める可能性がある一方、結果として政府が成長分野へ投入できる資金枠を拡大する効果を持つ点にも注意が必要である。

「青天井」の投資枠の新設

今回の予算要求を過去最大規模へ押し上げた大きな要因の一つが、成長投資を対象とする新たな予算枠である。報道によれば、政府は「強く豊かな日本」投資枠を設け、従来のような一律の上限を設けず、成長に資すると判断される政策について各省庁が積極的に要求できる仕組みを導入した。

この方式には明確なメリットがある。例えば、AI、半導体、量子技術、宇宙、エネルギー、安全保障関連技術などは、短期的には巨額の政府支援を必要とする場合があるが、成功すれば民間投資や雇用、輸出、税収を通じて長期的な経済効果を生む可能性がある。従来の予算制度で一律に上限を設定すれば、こうした将来性の高い投資まで抑制してしまう危険があるため、「成長のためには必要なところへ大胆に資金を投入する」という考え方には一定の合理性がある。

しかし、「上限を設けない」という仕組みには同時に重大な問題がある。各省庁にとっては、自らの政策を「成長投資」と位置付けることで予算を要求しやすくなるため、結果として本来なら優先順位の低い事業まで投資枠に入り込む可能性があるからである。

ここで重要になるのが、「投資」という言葉の定義である。将来の生産性を高める研究開発やインフラ整備と、単年度の所得補填や需要刺激を目的とした給付などを同じ「成長投資」として扱えば、財政支出の効果を検証することが難しくなる。政府が積極財政を正当化するためには、単に「成長につながる」と説明するだけでなく、どの程度の経済効果を期待し、どのような指標によって事後評価するのかを明確にする必要がある。

したがって、「青天井」の投資枠は、積極財政の象徴であると同時に、その成否を左右する最大の試金石でもある。政府がこの枠を単なる歳出拡大の抜け道として利用するのか、それとも民間投資を呼び込み、日本の潜在成長率を引き上げるための戦略的な投資制度として運用できるのかによって、2027年度予算の評価は大きく変わってくる。

この点を考えると、143兆円という要求額を「過去最大だから危険」とだけ評価するのも、「成長投資だから必要」とだけ評価するのも適切ではない。問われているのは、拡大した財政余力をどの分野へ振り向け、その支出が将来の成長によって回収可能な仕組みを作れるかという、財政政策の質そのものである。

補正予算の「一本化」方針

2027年度予算要求が過去最大となったもう一つの重要な要因が、これまで補正予算で対応してきた恒常的な政策を、できるだけ当初予算に組み込むという政府の方針である。日本では近年、年度途中に大型の補正予算を編成し、物価高対策や経済対策、産業支援などを追加する手法が常態化していたが、政府はこうした「補正予算依存」から脱却し、必要な政策を当初予算に計上する方向へ転換している。

この方針には財政運営の透明性を高めるという合理性がある。本来、毎年度継続的に必要となる政策まで補正予算に計上すれば、当初予算だけを見ても政府が実際にどれだけの支出を予定しているのか把握しにくくなるためである。政府は、当初予算に必要な経費を盛り込むことで、事業者や地方自治体にとっての予見可能性を高めることも狙っている。

ただし、一本化には統計上の見え方を大きく変える側面もある。これまで別の年度・別の予算として処理されていた支出が当初予算の要求額に移れば、予算要求総額は当然ながら膨らむため、143兆円という数字には「新たに発生した支出」と「従来補正予算で処理していた支出」が混在している。

したがって、2027年度の財政規模を評価する際には、143兆円という単年度の要求額だけを見るのではなく、過去の補正予算を含めた実質的な歳出規模と比較する必要がある。実際、2026年度当初予算と2025年度補正予算を合わせた規模は約140兆6000億円であり、143兆円前後という2027年度要求額との差は、見かけほど巨大ではないとの指摘もある。

もっとも、ここで重要なのは「一本化したから問題がない」ということではない。補正予算を当初予算に移したとしても、財源が自然に生まれるわけではなく、最終的には税収、その他の歳入、歳出削減、あるいは国債発行によって賄う必要があるからである。

つまり、補正予算の一本化は財政規律を緩める政策そのものではなく、むしろ予算の実態をより正確に表すための制度改革と見ることができる。しかし、それによって恒常的な歳出が予算に固定化されれば、将来の予算編成における自由度が低下するという別の問題が生じる。

硬直化する義務的経費の増加

政府が成長投資を拡大しようとしても、予算全体を自由に組み替えられるわけではない。国の一般会計には、法律や制度上、毎年度一定程度の支出が必要となる義務的経費が存在し、人件費、社会保障関係費、国債費などがその代表例となる。

義務的経費の問題は、景気が悪化したからといって簡単に削減できないことである。企業の設備投資であれば景気や収益見通しに応じて増減させられるが、年金、医療、介護、国債の利払いなどは、政府が短期間で大幅に削減することが難しい。

2027年度概算要求でも、義務的経費には強い増加圧力がかかっている。特に高齢化に伴う社会保障費の増加と、金利上昇によって膨らむ国債費は、成長投資とは直接関係なくても予算総額を押し上げる要因となっている。

この点から見ると、「積極財政によって143兆円まで歳出を増やした」という理解には修正が必要である。政府が新たに政策判断によって追加できる歳出と、制度上ある程度自動的に増加する歳出を分けて考えなければ、財政の実態を正しく評価できないからである。

国債費(借金の元利払い)

2027年度予算要求において特に注目すべきなのが国債費である。財務省の概算要求では、国債費は36兆6386億円となり、2026年度当初予算の31兆2758億円から5兆3628億円増加した。これは単なる債務残高の増加だけではなく、金利環境の変化が予算に直接影響し始めていることを示している。

内訳を見ると、債務償還費は20兆25億円、利子及び割引料は16兆5888億円となっている。特に利子及び割引料は前年度の13兆371億円から3兆5516億円増加しており、国債の利払い負担が急速に拡大している。

ここには日本財政が直面する重要な変化が表れている。これまで日本では、長期間にわたる低金利によって巨額の政府債務を抱えていても、利払い費の増加が比較的抑えられてきたが、金利が上昇すれば過去に発行した国債が順次借り換えられる過程で、財政負担が徐々に増加する。

つまり、政府債務の問題は「借金がいくらあるか」だけではなく、「その借金を何%の金利で維持するのか」という問題へ移行している。仮に名目金利が上昇し続ければ、成長投資へ振り向けるはずだった財源が利払いへ移動し、積極財政そのものの政策余地を狭める可能性がある。

この意味で、2027年度の国債費36兆6386億円という数字は、単なる予算項目の一つではない。それは、日本が低金利時代から金利正常化の時代へ移行するなかで、過去に積み上げてきた政府債務が現在の予算編成にどの程度の影響を及ぼし始めているかを示す重要な指標である。

さらに、政府は2027年度の新規国債発行額をおおむね40兆円程度に抑える方針を示している。これは積極財政を掲げながらも、国債発行を無制限に拡大させない姿勢を示すものだが、143兆円規模の要求をどのように40兆円程度の新規国債発行と整合させるのかは、今後の予算編成における最大の焦点の一つとなる。

社会保障費

国債費と並んで予算を構造的に押し上げているのが社会保障費である。2027年度の厚生労働省の概算要求は36兆5803億円となり、2026年度当初予算と比べて4.4%増加し、このうち高齢化などによる社会保障費の自然増は3397億円とされている。

社会保障費の特徴は、景気対策として政府が自由に増減させる歳出とは性質が異なる点にある。高齢者人口が増えれば年金、医療、介護などの給付需要も増加するため、制度を維持するだけでも一定の財源が必要となる。

もちろん、社会保障費について「高齢化だから仕方がない」と結論付けるだけでは不十分である。医療・介護サービスの効率化、給付と負担の適正化、デジタル技術による行政コスト削減、予防・健康増進による将来支出の抑制など、制度そのものの改革によって増加率を抑える余地は存在する。

ここで積極財政との関係が問題になる。政府が成長投資を拡大する一方で社会保障費の改革を先送りすれば、新規投資に必要な財源が既存制度の維持費によって圧迫される可能性があるからである。

逆に言えば、成長投資によって名目GDPや雇用者所得が増加し、税収や社会保険料収入が増えれば、社会保障制度の財政基盤を強化することも可能になる。この意味では、成長政策と社会保障改革は対立するだけの関係ではなく、成長によって財源を拡大しながら制度改革によって支出の伸びを抑えるという組み合わせが必要になる。

予算膨張の本質――「新しい支出」だけではない

ここまでを見ると、2027年度予算要求の143兆円前後という数字は、三つの異なる要因によって形成されていることが分かる。第一は、AI、半導体、経済安全保障などを対象とする新たな成長投資であり、第二は、補正予算から当初予算への恒常的経費の移管、第三は、国債費や社会保障費などの構造的な歳出増加である。

この三つを区別することは、積極財政の是非を判断するうえで極めて重要である。例えば、将来の生産性を高める研究開発費が増えた場合と、過去の政府債務に対する利払い費が増えた場合では、同じ「歳出増加」でも経済成長に与える意味がまったく異なる。

特に注意すべきなのは、成長投資を拡大する一方で、国債費と社会保障費も同時に増えている点である。予算全体が拡大するなかで、本当に政府が政策判断によって新たに重点配分できる資金がどれだけあるのかを見極めなければ、「積極財政」という言葉だけが先行する危険がある。

内閣府の中長期試算では、追加的な財政支出を毎年10兆円程度行った場合でも、十分な経済成長が実現すれば債務残高対GDP比が概ね安定的に低下するシナリオが示されている。これは積極財政が理論的に財政再建と両立し得ることを示す一方、前提となる「十分な経済成長」が実現しなければ、同じ支出拡大が財政負担を増やす結果にもなり得る。

したがって、2027年度予算をめぐる本当の争点は「143兆円は多すぎるのか、少なすぎるのか」という単純な金額論ではない。重要なのは、増加する義務的経費を抑制しながら、国債費の金利上昇リスクを管理し、限られた財源を将来の成長率を高める投資へ振り向けられるかどうかである。

この問題は次の段階で、「積極財政は実際にどのような経済効果を生み得るのか」という論点へつながる。政府が期待する官民連携による投資誘発、名目成長率の上昇による税収増、そして従来の「緊縮の罠」からの脱却が本当に成立するのであれば、財政拡大は単なる赤字拡大ではなく、将来の税収基盤を拡大する政策となる可能性がある。

「積極財政(成長志向)」がもたらすメリットと論点

積極財政とは、政府が公共投資や研究開発支援、産業政策、社会基盤整備などを積極的に行い、経済活動を下支えする政策である。特に日本のように長期間にわたって低い潜在成長率に直面してきた国では、民間企業だけでは十分に供給されにくい長期的な投資を政府が先導することには一定の意味がある。

2027年度予算要求で特徴的なのは、単純な景気刺激よりも「成長力そのものを高める」ことに重点を置いている点である。AI、半導体、量子技術、宇宙、次世代エネルギー、防衛・経済安全保障などは、初期投資が大きく、技術開発に失敗するリスクも高いため、政府が研究開発や設備投資を支援することで民間企業の投資を誘発できる可能性がある。

経済学的には、このような政策には「クラウディング・イン」の効果が期待される。政府が基礎研究、インフラ、人材育成などに先行投資することで民間企業の期待収益率が高まり、それまで採算が取れなかった投資が実行されれば、政府支出以上の経済活動を生み出すことができる。

もっとも、政府支出の増加が自動的に成長につながるわけではない。需要が不足している局面では公共投資や給付によって短期的なGDPを押し上げられる一方、供給能力が十分に増えなければ、物価上昇や輸入増加を通じて効果が薄れる可能性がある。

さらに、政府が特定産業を選択して支援する場合には、「政府による勝者選び」の問題も生じる。市場では将来性があると判断されなかった技術や企業に補助金を投入し続ければ、経済全体の生産性向上どころか、非効率な企業や事業を温存する結果になりかねない。

したがって、積極財政を評価する際には、支出額の大きさではなく「その支出によって民間経済の行動がどの程度変化したか」を見る必要がある。政府が1000億円を支出しても、民間企業の投資や研究開発がほとんど増えなければ効果は限定的だが、政府支援を契機として民間投資が数兆円規模で動き出すなら、財政政策の経済的価値は大きく異なる。

官民連携の投資促進

政府が成長投資を重視する背景には、国家だけで巨大な産業投資を担うことには限界があるという現実がある。財政支出を呼び水として民間企業、金融機関、大学、研究機関などの資金と技術を動員する「官民連携」が、今後の経済政策において重要な位置を占めることになる。

例えば、半導体工場やデータセンター、電力網、再生可能エネルギー関連設備などでは、政府の補助金だけで事業が成立するわけではない。政府による初期支援に加えて、民間企業が設備投資を行い、金融機関が資金を供給し、大学や研究機関が人材と技術を提供するという複合的な仕組みが必要となる。

この方式が成功すれば、政府の財政支出は「最終的な費用」ではなく「民間資金を呼び込むためのレバレッジ」となる。例えば政府が一定額を補助することで民間企業がそれを上回る規模の設備投資を行えば、政府支出に対する経済効果は大きくなる。

しかし、官民連携にも注意点がある。政府が補助金を出すことで企業が本来自己資金で行うはずだった投資を置き換えるだけなら、政府支出による追加的な効果は小さいからである。

したがって、政策評価では「政府がいくら支出したか」ではなく、「政府支援がなければ実施されなかった民間投資がどれだけ発生したか」を検証する必要がある。これを厳格に評価しなければ、企業への補助金が単なる利益補填となり、財政支出の費用対効果が低下する。

また、官民連携は将来の税収にも影響する。企業の設備投資が増えれば、建設需要、雇用、賃金、企業利益、輸出などが増加し、それらを通じて所得税、法人税、消費税などの税収が増える可能性がある。

この「財政支出→民間投資→所得・利益→税収」という循環が成立するなら、積極財政には財政赤字を将来的に縮小させる方向の作用も生まれる。反対に、政府支援が一時的な需要を生むだけで民間の生産能力や収益力を高めなければ、税収増による財政改善は限定的となる。

名目成長率の維持による税収増

積極財政のもう一つの重要な論点は、名目経済成長率である。名目GDPは実質GDPの増加に物価上昇を加えたものであり、政府の税収は基本的に企業利益、所得、消費などの名目的な経済規模と連動するため、名目GDPが拡大すれば税収も増えやすくなる。

日本では長期間にわたるデフレによって、名目GDPの伸びが弱い状態が続いてきた。実質的な生産量がある程度増加していても、物価と賃金が十分に上昇しなければ企業の名目利益や家計所得が伸びにくく、結果として税収の増加も限定される。

現在の日本では、以前よりも物価上昇と賃上げが定着し、名目経済規模が拡大する局面に入っている。この環境を維持し、実質成長と適度な物価上昇を組み合わせることができれば、税収の自然増によって政府の財政基盤が強化される可能性がある。

実際、近年の日本では税収が当初の政府見積もりを上回るケースが続いてきた。背景には企業収益の改善、雇用・賃金の増加、消費の名目額の拡大などがあり、名目経済成長が財政に与える影響の大きさを示している。

ただし、「名目GDPが増えれば財政問題は解決する」と考えるのは危険である。インフレによって名目GDPが増加しているだけなら、実質的な生活水準や生産性が改善しているとは限らず、政府支出の増加が物価上昇をさらに加速させる可能性もある。

また、政府債務についても名目GDPの増加は一定の意味を持つ。政府債務残高が増加していても、GDPがそれ以上のペースで増えれば、債務残高の対GDP比は低下するからである。

このため財政の持続可能性を考える際には、政府債務の絶対額だけでなく、名目GDP成長率と名目金利の関係が重要になる。名目成長率が金利を上回る状態が持続すれば、一定の条件の下で政府債務の対GDP比を安定・低下させやすくなる一方、金利が成長率を上回れば、債務負担を抑えるためにより大きな財政収支改善が必要となる。

「緊縮の罠」からの脱却

積極財政を支持する側からは、日本は長期間にわたって財政再建を優先しすぎた結果、公共投資や研究開発、人材育成などへの支出が不足し、経済成長率を低下させる「緊縮の罠」に陥ったとの見方がある。

この議論の核心は、景気が弱いときに政府が歳出を削減すると、政府部門だけでなく民間部門の需要も縮小し、それによって企業収益や雇用、所得が減少し、さらに税収が落ち込むという悪循環が発生する可能性にある。財政赤字を減らそうとして実施した歳出削減が、結果として経済規模を縮小させ、債務残高対GDP比を十分に改善できないという逆説である。

特にデフレ局面では、企業や家計が将来の需要に慎重になり、民間投資が弱くなりやすい。このような場合、政府が一定の需要を創出し、企業が将来の成長を期待できる環境を作ることには経済合理性がある。

しかし、「緊縮の罠」を批判することと、「財政支出には上限がない」と考えることは全く別の問題である。景気回復後も恒常的に歳出を拡大し続ければ、財政需要が民間の供給能力を上回り、インフレや金利上昇を引き起こす可能性がある。

したがって、積極財政には「いつまで拡大するのか」という出口戦略が不可欠となる。景気が弱いときには財政を支え、成長率が回復した後には支出の質を厳格に評価し、効果の低い事業を終了させるという柔軟な財政運営が求められる。

積極財政の成否を分ける「支出の質」

ここまでの議論から明らかなのは、積極財政そのものを一括して評価することはできないということである。研究開発、人材育成、インフラ、エネルギー網、デジタル基盤など、将来の供給能力を高める支出と、単純な消費刺激や恒常的な所得補填では、経済成長への効果も財政負担の意味も異なる。

さらに、成長投資には「時間差」が存在する。AIや半導体、基礎研究などへの投資は、支出した年度にGDPを大きく押し上げるとは限らず、数年から十数年後に生産性や企業収益として効果が現れる場合もある。

そのため、2027年度予算を評価する際には、短期的なGDP押し上げ効果だけでなく、潜在成長率、生産性、民間投資、実質賃金、雇用、輸出競争力などの中長期的な指標を追跡する必要がある。

結局のところ、積極財政が成功するかどうかは、「どれだけ使うか」ではなく「何に使い、どのような経済行動を誘発し、将来どれだけの経済的価値を生み出すか」にかかっている。143兆円前後という過去最大の予算要求を正当化できるかどうかも、この支出の質に対する検証によって決まることになる。

そして、ここから財政政策の最大の難題が現れる。政府が成長を目指して積極的に支出すればするほど、国債発行、金利、インフレ、市場の信認という問題が無視できなくなるからである。

「財政の持続可能性」におけるリスクと懸念

積極財政を評価する際に避けて通れないのが、財政の持続可能性である。政府が景気や成長を支えるために支出を拡大すること自体には経済合理性があるとしても、その支出を長期間にわたって国債発行で賄い続ければ、政府債務の累積と利払い負担の増加という問題が発生する。

日本はすでに政府債務残高が極めて大きい国であり、財政政策の自由度は必ずしも高くない。重要なのは、現在の低金利環境を前提として「国債を発行しても問題はない」と判断することではなく、金利が上昇した場合にも財政運営を維持できるかどうかを検証しておくことである。

財政の持続可能性は、単純に「赤字があるかないか」で判断するものではない。政府債務残高、名目GDP成長率、名目金利、基礎的財政収支、政府の税収力などを総合的に考える必要があり、特に日本では今後の金利上昇が財政に与える影響が大きな論点となる。

積極財政を支持する立場からは、政府が成長投資によって名目GDPを拡大できれば、債務残高対GDP比を低下させることが可能だとの主張がある。これは一定の条件下では成立するが、その前提となる成長率が実現しなかった場合には、支出だけが残って債務負担が拡大するという反対方向のリスクも存在する。

資金の性格

財政支出を評価する際には、その資金が何に使われるのかを区別する必要がある。同じ1兆円の国債発行でも、将来の生産能力を高める研究開発投資と、短期的な消費を支える一時給付では、将来の税収や経済成長に与える影響が大きく異なる。

この観点から重要になるのが、政府が「投資」と位置付ける支出の実効性である。例えば、半導体工場への支援、電力網の整備、研究開発、人材育成などは将来の供給能力を増やす可能性がある一方、単に企業や家計の負担を一時的に軽減するだけの政策は、恒久的な成長力向上につながらない場合がある。

国債による資金調達が必ずしも悪いわけではない。将来世代も利用するインフラや研究基盤を現在の世代だけの税負担で賄うより、国債を通じて長期間にわたり費用を分担する考え方には一定の合理性がある。

問題は、国債で調達した資金が将来にわたる経済的価値を生むかどうかである。将来の税収増や生産性向上につながらない恒常的な支出を国債で賄えば、現在の負担を将来世代へ移しているだけになりやすい。

したがって、「国債発行額が何兆円か」という量的な基準だけでなく、「その国債によって何を購入したのか」という質的な基準が必要になる。2027年度予算では、この資金の性格を厳格に分類することが財政政策の信頼性を左右する。

金利環境

日本の財政を取り巻く環境は、過去10年ほどとは明らかに変化している。日本銀行が金融政策の正常化を進めるなかで、長期金利も以前の超低金利時代と比べて高い水準となり、政府が新たに国債を発行したり既存国債を借り換えたりする際の調達コストが上昇する環境になっている。

この変化は政府にとって非常に重要である。政府債務残高が巨大である以上、金利が1%上昇したからといって、翌年度からすべての国債の利払いが一斉に1%増えるわけではないが、満期を迎えた国債が新しい金利で借り換えられるにつれて、利払い費は徐々に増加する。

2027年度概算要求で国債費が36兆6386億円まで増加し、そのうち利子及び割引料が16兆5888億円に達したことは、この金利環境の変化がすでに予算に表れ始めていることを示す。過去の低金利によって隠れていた政府債務のコストが、金利上昇局面では徐々に表面化する構造にある。

さらに、金利上昇には二つの異なる側面がある。経済成長やインフレ率の上昇を背景として金利が上がる場合には、名目GDPや税収も増加しやすいが、政府の財政運営に対する不安などによってリスクプレミアムが上昇する場合には、税収増よりも国債利払いの増加が先行する可能性がある。

したがって、単に「金利が上がったから危険」と判断するのも正確ではない。問題は、金利上昇の背景にある経済状況と、名目成長率との関係である。

市場の信認

財政政策では、市場の信認も重要な要素となる。政府が将来的に必要な税収や歳出改革を確保し、債務を安定的に管理できると市場が判断している限り、国債市場は比較的安定して機能する。

逆に、政府が成長投資を名目に際限なく支出を増やし、財政再建への道筋を示せなくなれば、投資家が将来のインフレや財政リスクを意識し、より高い利回りを要求する可能性がある。国債利回りの上昇は新規国債の調達コストを高め、最終的には国債費を通じて一般会計を圧迫する。

ただし、日本の場合、政府債務の大部分が自国通貨建てであることや、国内金融機関・機関投資家などが国債市場を支えていることから、他国の財政危機と単純比較することも適切ではない。日本の財政リスクを評価するには、債務残高だけでなく、国債の保有構造、金融政策、経常収支、家計・企業の金融資産などを総合的に見る必要がある。

一方で、「自国通貨建てだから財政制約は存在しない」という結論にも飛躍がある。政府が必要な支出を増やし続ければ、最終的な制約は国債発行能力ではなく、インフレ、金利、為替、実物資源などに現れる可能性があるからである。

財政政策における市場の信認とは、単に国債が売れるかどうかという問題ではない。政府が長期的に「成長投資を行いながら、必要に応じて歳出・税制を調整し、債務を管理できる」と市場に認識されることが重要となる。

インフレ圧力

積極財政のもう一つのリスクがインフレである。政府支出の増加は需要を押し上げるため、経済に余剰の生産能力が存在する局面では景気回復を促す効果が期待できるが、供給制約が強い局面では需要超過によって物価上昇を加速させる可能性がある。

現在の日本では、人口減少や人手不足、エネルギー・原材料価格、物流能力など、供給側の制約が以前より意識されるようになっている。この状況で大規模な財政支出を続ければ、実質的な生産量を増やすより先に、人件費や資材価格などの上昇につながる可能性がある。

もっとも、インフレをすべて悪いものとして扱う必要もない。デフレから脱却し、賃金と物価が緩やかに上昇することは、日本経済の正常化にとってむしろ重要な条件となる。

問題は、政府支出による需要増加と、企業の生産能力拡大のバランスである。政府が需要だけを増やすのではなく、設備投資、人材、エネルギー、物流、デジタルインフラなど供給能力への投資を同時に行えば、インフレ圧力を抑えながら成長力を高められる可能性がある。

金利上昇と国債費のプレッシャー

金利上昇が財政に与える影響は、時間をかけて累積する。現在発行されている国債の平均的な償還期間が長ければ、金利上昇の影響はすぐには全額現れないが、借換えが進むにつれて利払い負担が増加する。

これは政府にとって非常に大きな制約となる。国債費が増加すれば、社会保障や教育、科学技術、公共投資などに使える一般財源が相対的に圧迫されるため、積極財政を続けるためにも、むしろ財政規律を維持する必要が生じる。

つまり、積極財政と財政規律は必ずしも正反対ではない。将来の成長率を高めるために必要な投資を優先しながら、利払い費の増加によって政策余地が失われないようにすることが、持続的な積極財政の条件となる。

「投資」と「消費(バラマキ)」の境界線の曖昧さ

2027年度予算を評価するうえで最も難しい問題の一つが、「投資」と「消費」の境界である。政府が成長分野への支出を「投資」と呼んでも、それだけで将来の経済成長が保証されるわけではない。

例えば、企業への補助金が研究開発や設備投資を促し、将来的な生産性向上につながるなら投資としての意味は大きい。しかし、企業が補助金を受け取っても自己負担分を減らすだけであれば、政府資金による置き換えにすぎない。

家計支援についても同様である。物価高によって生活が困難になっている世帯を一時的に支援する政策には社会的な意義があるが、恒常的な給付を国債で賄い続ければ、将来の経済成長を生む投資とは性格が異なる。

したがって、予算項目の名称ではなく、政策効果によって投資性を判断する必要がある。少なくとも、①将来の生産能力を高めるか、②民間投資を誘発するか、③生産性を改善するか、④将来の税収基盤を拡大するか、⑤政策終了後にも効果が残るか、といった基準が求められる。

この基準から見ると、「青天井」の成長投資枠は大きな可能性を持つ一方、最も厳格な評価を必要とする制度でもある。成長投資という看板の下に効果の低い事業が積み上がれば、積極財政への支持そのものが弱まり、市場の信認にも悪影響を与える可能性がある。

最終的に重要なのは、「赤字か黒字か」という二分法ではない。将来の成長力を高めるために必要な赤字と、単に現在の支出を維持するための赤字を区別し、前者に財政資源を集中させることが、2027年度以降の財政政策に求められる。

「成長」と「持続可能性」は両立し得るか?

ここまでの分析を総合すると、積極財政と財政の持続可能性は、必ずしも相反するものではない。むしろ、人口減少や生産性の伸び悩みという構造問題を抱える日本にとって、将来の成長力を高めるための財政支出は、長期的な財政基盤を強化するための手段にもなり得る。

ただし、その成立には明確な条件がある。政府支出によって名目GDPだけを膨らませるのではなく、企業の生産性、設備投資、研究開発、人材、エネルギー供給、インフラなど、経済の供給能力そのものを高める必要がある。

政府が100兆円単位の予算を組んだからといって、それだけで日本の潜在成長率が上昇するわけではない。支出が民間企業の行動を変え、新たな投資を誘発し、労働生産性を高め、賃金と企業収益を押し上げ、その結果として税収が増えるという循環が形成されて初めて、積極財政は持続可能な成長政策となる。

逆に、歳出だけが拡大し、成長率が期待したほど上昇しなければ、政府債務と国債費だけが増加する可能性がある。特に金利上昇局面では、過去の債務が徐々に高い金利で借り換えられるため、財政政策の余裕が縮小するリスクがある。

したがって、2027年度予算の評価は「143兆円だから危険」でも「成長投資だから問題ない」でもない。143兆円規模の要求のうち、どの程度が将来の成長力を高める支出なのか、そしてその支出を継続しても財政が耐えられるのかという二つの問いを同時に検証する必要がある。

「良い赤字」への絞り込み

財政赤字をすべて悪と考える必要はない。将来の所得や生産能力を高めるための投資であれば、現在の世代だけでなく将来世代もその恩恵を受けるため、国債を活用して世代間で費用を分担する考え方には合理性がある。

例えば、基礎研究、教育、人材育成、交通・通信インフラ、電力網、デジタル基盤、先端技術などへの投資は、将来の経済活動を支える資産となる可能性がある。これらについては、短期的な財政収支だけを基準に削減するより、将来の社会的収益率まで考慮して判断する必要がある。

一方、効果の検証が難しい補助金や、期限を設定しない恒常的な給付、既存制度の単純な拡大などは、「成長投資」という名称だけで正当化するべきではない。政府が積極財政を続けるほど、むしろ支出の選別基準を厳格にする必要がある。

ここで重要になるのが「良い赤字」と「悪い赤字」の区別である。良い赤字とは、将来の税収や生産性向上によって財政負担を相対的に軽減できる可能性がある赤字であり、悪い赤字とは、将来の経済的リターンが乏しいまま恒常的な支出だけを増やす赤字である。

もちろん、実際の政策を完全に二分類することはできない。教育や防災、社会保障などは直接的な税収を生まなくても社会全体の安定や人的資本を維持する効果があるため、財政的リターンだけで評価することにも限界がある。

それでも、「何のための赤字なのか」を明確にすることには大きな意味がある。積極財政を持続させるためには、赤字そのものを否定するのではなく、赤字によって形成される社会的・経済的資産を明確にし、その効果を継続的に検証する仕組みが必要となる。

歳出改革(聖域なき見直し)の並行

積極財政を成功させるためには、歳出改革を同時に進めなければならない。新しい成長投資を増やす一方で、既存の支出について何も見直さなければ、国の予算は雪だるま式に膨張してしまうからである。

特に重要なのは、社会保障、公共事業、補助金、行政組織などについて、政策目的が現在も妥当なのか、費用に見合った効果が出ているのかを定期的に検証することである。過去には必要だった制度でも、人口構造や産業構造が変化すれば、制度設計を変更する必要が生じる。

社会保障については、単純な給付削減だけではなく、医療・介護のデジタル化、重複サービスの削減、予防政策、負担能力に応じた制度設計などを組み合わせる必要がある。目標は社会保障を縮小することではなく、限られた財源で制度を持続させることである。

公共事業や補助金についても同様である。事業開始時には高い効果が期待されていても、環境変化によって費用対効果が低下する場合があるため、事業を終了する仕組みや、補助金に期限を設定する仕組みが重要となる。

また、「成長投資」を理由として既存事業の評価を甘くしてはならない。成長分野だからこそ、目標、期限、成果指標、民間資金の誘発額などを設定し、一定期間後に継続・縮小・終了を判断する制度が必要となる。

この意味で、「聖域なき見直し」と「積極財政」は対立概念ではない。むしろ、低効果の歳出を削り、その財源を高い成長効果が期待できる分野へ移すことこそ、財政資源を有効活用する積極財政の本来の姿と考えられる。

今後の展望

2027年度予算編成では、143兆円前後という概算要求が最終的にどの程度まで圧縮されるのかが第一の焦点となる。概算要求は各省庁の希望額を含むため、最終的な政府案や国会で成立する当初予算とは一致しないが、今回の要求規模は政府が今後どの方向へ財政政策を進めようとしているのかを示す重要なシグナルとなる。

第二の焦点は、「青天井」とされる成長投資枠が実際にどのような事業へ配分されるかである。AI、半導体、エネルギー、経済安全保障などの重点分野に資金が集中するのであれば、産業政策としての意味は大きいが、個別企業への過剰な補助や効果の乏しい事業まで広がれば、財政リスクだけが増えることになる。

第三の焦点は、金利環境である。2027年度予算では国債費の増加がすでに大きな問題となっており、今後さらに金利が上昇すれば、利払い費が他の政策経費を圧迫する可能性がある。成長投資を増やすためにも、政府には金利上昇を想定した中長期的な財政管理が求められる。

第四の焦点は、名目成長率である。名目GDPが安定的に拡大し、賃金と企業収益が増加すれば、税収の自然増によって財政赤字を縮小する余地が生まれる。一方、物価だけが上昇して実質成長率が低迷すれば、家計負担が増える一方で財政の実質的な改善が進まないという問題が生じる。

したがって、政府が目指すべきなのは単純な「高インフレ」でも「財政支出の最大化」でもない。実質的な生産性向上と賃金上昇を伴う名目成長を維持し、その成長率が金利上昇による財政負担を上回るような経済環境を作ることが重要となる。

また、官民連携の成否も大きな意味を持つ。政府資金を呼び水として民間企業の投資が増えれば、限られた財政資金から大きな経済効果を生み出せるが、政府支援がなければ成立しない事業を恒久的に支え続けるのであれば、成長戦略としての合理性は弱くなる。

まとめ

2027年度予算要求が143兆円前後となり、4年連続で過去最大を更新する見通しとなったことは、日本の財政政策が明確に「成長重視」へと軸足を移していることを示している。補正予算の一本化や成長投資枠の新設によって、政府は従来よりも積極的に経済政策を展開しようとしている。

その一方で、予算規模の拡大をそのまま積極財政の成功と評価することはできない。社会保障費や国債費などの義務的経費が増加するなかで、政府が自由に配分できる財源には限界があり、金利上昇による利払い負担も今後の財政運営を制約する可能性が高い。

積極財政が成功するためには、政府支出が民間投資を誘発し、生産性を高め、雇用と賃金を増やし、最終的に税収を拡大する循環を作る必要がある。そのためには、単なる需要刺激よりも、研究開発、人材、インフラ、エネルギー、デジタル、産業競争力など、将来の供給能力を高める分野への重点配分が重要となる。

同時に、歳出改革を避けてはならない。社会保障や既存補助金などの制度を聖域化したまま新規の成長投資だけを積み上げれば、財政全体が硬直化し、金利上昇時には政策余地が急速に失われる可能性がある。

したがって、2027年度予算に求められるのは「大きな政府」か「小さな政府」かという単純な選択ではない。必要な分野には大胆に支出し、効果の低い支出は削減し、成長によって税収基盤を拡大しながら、政府債務と金利リスクを管理する「選択的な積極財政」こそが現実的な方向となる。

最終的に、143兆円という数字そのものが日本財政の健全性を決めるわけではない。その中身が将来の成長資産へ変わるのか、それとも恒常的な支出として積み上がるのかが、本当の分岐点となる。

2027年度予算は、日本がデフレ・低成長時代の財政運営から脱却し、新たな成長軌道へ移行できるかを試す重要な予算となる。同時に、それは「成長のためなら財政を拡大してよい」という単純なメッセージではなく、成長を生む財政支出だけを選び抜き、その成果によって財政そのものを持続可能にできるかという厳しい課題を政府に突き付けている。


参考・引用リスト

  • 財務省「令和9年度予算概算要求」関連資料
  • 財務省「日本の財政を考える」
  • 内閣府「経済財政運営と改革の基本方針」関連資料
  • 内閣府「中長期の経済財政に関する試算」
  • 内閣府「月例経済報告」
  • 日本銀行「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」
  • 日本銀行「金融政策決定会合」関連資料
  • 総務省「人口推計」
  • 厚生労働省「令和9年度予算概算要求」関連資料
  • OECD, OECD Economic Surveys: Japan
  • International Monetary Fund, Japan: Article IV Consultation
  • 日本経済研究センター、各種経済・財政分析
  • 日本経済新聞、2027年度予算要求・財政政策関連記事
  • Reuters、Japan budget・fiscal policy関連記事
  • 毎日新聞、2027年度予算要求関連記事
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