◎ハイチの治安は2021年7月のモイーズ大統領暗殺と8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
ハイチ、首都ポルトープランスのギャング(Getty Images/AFP通信)

国連のグテレス(António Guterres)事務総長は23日、未曽有の危機に直面しているハイチに国連平和維持軍を派遣するよう国際社会に呼びかけた。

グテレス氏は国連ハイチ事務所が公表したレポートの中で、「ギャング関連の暴力と人権侵害が危機的なレベルに達している」と警告した。

またグテレス氏はハイチの現状について、「過去数十年で最悪の人権・人道危機に見舞われている」と強調した。

ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。

首都ポルトープランスでは半年ほど前から複数の武装ギャングが地域の支配権をめぐって戦闘を繰り広げており、国連はこの抗争で民間人数百人が死亡または行方不明となり、数十万人が国内避難民になったと推定している。

グテレス氏は「ポルトープランスの主要燃料ターミナは昨年運用を再開したが、総選挙を実施するためには平和維持軍の派遣が必要である」と指摘した。

国連ハイチ事務所によると、昨年報告された全国の殺人件数は一昨年比で35%増となり、確認できているだけで2100人以上が殺害されたという。誘拐事件は一昨年から2倍以上に増加した。

ハイチ国家警察は資金および人員不足に悩まされ、現役警察官は人口1100万人の0.1%以下。約9700人しかいない。

グテレス氏はレポートの中で、「警察官の数が足りないのは言うまでもなく...さらに、多くの警察官がギャングと連携している可能性がある」と指摘している。

ハイチ警察は米国とカナダの支援(装甲車や装備の供与)および訓練を受けているが、ギャングに押されているよう見える。

さらに、ギャングの台頭で医療は崩壊し、コレラが蔓延。この1年間で数万人が国外に逃亡した。国連は数十万人が食料をまともに確保できず、人道機関の支援に頼っていると警告している。

国連安保理はハイチの問題について24日の会合で協議する予定だ。

安保理は昨年末、ハイチの主要なギャングリーダーや個人に制裁を科したが、ハイチ政府が求めているPKO派遣については決定を先送りした。

ハイチの連邦議会は今月初めに任期満了を迎えた上院議員10人の選挙を実施できていない。大統領は未だに空席のままである。

アンリ(Ariel Henry)首相は早いうちに総選挙を実施すると約束しているものの、ポルトープランスの約60%(国連推計)をギャングに支配されている状態で選挙を行うことはできないだろう。

アンリ氏は先週、総選挙に向けた準備のひとつとして、選挙管理委員会を統括する評議会の委員3人を選出した。この評議会は経済・人権改革を推進し、公安計画も策定するとしている。

ハイチ、首都ポルトープランスの暴動(Getty Images/AFP通信)
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