ハイチで広がる性暴力、ギャングが地域支配の手段として利用
ハイチでは国家の統治能力が大きく低下し、ギャングが首都ポルトープランスを中心に広範な地域を支配している。
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カリブ海の島国ハイチでギャングによる性暴力やジェンダーに基づく暴力が深刻化している。組織犯罪に関する調査機関「Global Initiative Against Transnational Organized Crime(超国境犯罪に関するグローバル・イニシアティブ、略称:GI-TOC)は18日、こうした暴力が単なるギャング犯罪の副産物ではなく、地域社会を支配するための手段として組織的に利用されていると指摘した。
ハイチでは国家の統治能力が大きく低下し、ギャングが首都ポルトープランスを中心に広範な地域を支配している。2024年から2025年にかけてギャング間の抗争などで1万1000人以上が死亡し、4900人以上が負傷。140万人以上が避難を余儀なくされている。
その中でも女性や少女が特に深刻な被害を受けている。2026年上半期だけで性暴力・ジェンダーに基づく暴力が5500件以上記録された。これは1日当たり約30件に相当する。このうち87%が集団強姦だったとされる。女性や少女が自宅や公共交通機関から連れ去られ、数日から数週間拘束された上で繰り返し性的暴行を受けるケースも報告されている。さらに、一部のギャングは暴行を撮影し、家族への身代金要求や被害者の辱めに利用しているという。
GI-TOCは、こうした行為には地域住民を威圧し、反対者を処罰し、ギャングの権威を強化する目的があると分析する。性的暴力によって、食料や水、医療、移動など生活に必要なサービスへのアクセスまで左右される状況が生じており、性暴力を個別の犯罪として扱うだけでは実態を捉えきれないとしている。
GI-TOCが参考例として挙げるのが、1990年代から2000年代初頭にかけて内戦を経験したコロンビアだ。コロンビアでは、被害者や研究者、市民団体、政府機関による記録の蓄積を通じ、性暴力が単なる戦闘の副次的被害ではなく、地域社会への威圧や支配を目的とした組織的行為だったとの認識が形成された。GI-TOCは、この経験からハイチでも性暴力のパターンを体系的に記録し、将来の司法手続きや賠償につなげる必要があると提言している。
また、今後の武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)や移行期司法の取り組みに性暴力を組み込むことも重要だとする。ハイチでは司法制度の機能低下や報復への恐怖、社会的偏見などから被害者が被害を申告しにくい。女性団体や人道支援組織が緊急医療、心理的支援、避難場所、法的支援を担っているものの、資金や人員には限界がある。
ハイチの治安危機への対応では、ギャングの武装や領土支配だけでなく、性暴力を通じて地域社会を統制する構造にも目を向ける必要がある。被害の記録と長期的な被害者支援をどこまで制度化できるかが、今後の司法と国家再建の課題となる。
