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ハイチは「戦争地帯」へ、米国からの強制送還者を待ち受けるギャング支配と人道危機

米国のシンクタンク「米外交問題評議会(CFR)」の現地報告によると、ギャングが都市の大部分を支配し、住民の大量避難、食料不足、医療体制の崩壊が同時に進行している。
2024年2月6日/ハイチ、首都プルトープランス中心部から避難する住民(AP通信)

カリブ海の島国ハイチで、武装ギャングによる暴力が首都ポルトープランスを「戦争地帯」と呼ぶべき状況に変えている。米国のシンクタンク「米外交問題評議会(CFR)」の現地報告によると、ギャングが都市の大部分を支配し、住民の大量避難、食料不足、医療体制の崩壊が同時に進行している。こうした中、米国ではハイチ人約35万人が対象となり得る一時保護資格(TPS)が終了し、強制送還された人々が深刻な治安環境に戻される可能性が高まっている。

CFRのサム・ヴィガースキー(Sam Vigersky)氏は2026年6月、14年ぶりにポルトープランスを訪問した。かつて自由に車で移動できた地域にはギャングが築いた防衛拠点が広がり、政府機関が治安を確立した場所は限られていた。

ギャングは住宅地を焼き、建物を破壊し、道路を支配している。推計では国内で約150万人がギャングの暴力によって住む場所を追われ、首都では最大90%がギャングの影響下にあるとされる。

食料危機も深刻だ。世界食糧計画(WFP)は避難民への現金給付などを続けているが、支援を受けても食料を十分に確保できない住民が多い。ギャングは農村から市場への流通を遮断し、住民への食料供給を支配することで、食料そのものを武器として利用している。現在、人口の半数以上が急性食料不安に直面しているという。

医療体制も限界に近づいている。首都の入院施設は約100カ所のうち37カ所しか機能しておらず、ギャング間の銃撃戦が病院周辺まで迫ることもある。国際医療支援団体「国境なき医師団(MSF)」の医療施設では、銃撃による負傷者だけでなく、暴力から逃れてきた数百人の住民が安全を求めて押し寄せる事態も発生した。医療スタッフ自身が移動することさえ危険であり、施設の一時閉鎖が患者をさらに遠方へ追いやる悪循環が生じている。

この状況と並行して、米国はハイチへの送還政策を強化してきた。6月、米連邦最高裁はトランプ政権によるハイチ人のTPS終了を認めた。TPSは自然災害や紛争などによって安全な帰国が困難な国の出身者に、米国での合法的な滞在・就労を認める制度で、ハイチ人については2010年の大地震を契機に適用されてきた。今回の措置により、最大35万人が送還対象となり得る。

一方、米国はハイチ国内でギャング掃討を支援している。国連安保理が承認したギャング掃討部隊には複数国が参加し、米国も治安能力の強化を進めている。ただし、CFRは治安作戦に比べて人道支援が不足していると指摘する。米国のハイチ向け援助はトランプ政権発足後に48%削減され、医療機関では職員削減や給与未払いも発生している。

さらに、ギャング掃討作戦そのものにも問題がある。2025年3月から2026年1月までに、ハイチの治安部隊や民間請負業者が運用するドローン攻撃によって少なくとも1243人が死亡し、その中には民間人43人、子ども17人が含まれるとの人権団体の報告もある。それでも主要ギャングの指導者は排除されず、支配地域を拡大している。

問題は、米国から帰国する人々が単に「母国へ戻る」だけでは済まない点にある。帰国先では住居、仕事、医療、食料、移動の安全という生活基盤そのものが崩れている。しかもギャングの支配地域は首都から農村部へ広がっており、安全とみなされていた地域まで危険になっている。治安対策、人道支援、医療、食料供給、政治再建を同時に進めなければ危機を止めることが難しい。

治安作戦だけを強化しながら人道支援を縮小すれば、暴力から逃れた住民をさらに不安定な環境へ追い込むことになる。米国から送還されるハイチ人の増加は、この矛盾を最も鮮明に映し出す問題となっている。

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