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ハイチ首都でギャング間抗争激化、国境なき医師団が活動停止

ハイチでは2021年にモイーズ(Jovenel Moise)大統領が暗殺されて以降、政治空白と治安悪化が続いている。
2021年10月22日/ハイチ、首都ポルトープランス、武装ギャング「G9&Family」のリーダー(Matias Delacroix/AP通信)

カリブ海の島国米ハイチでギャング間抗争が激化し、首都ポルトープランスの医療体制が深刻な危機に陥っている。国際医療支援団体「国境なき医師団(MSF)」は11日、首都北部シテ・ソレイユ地区での活動停止を発表した。周辺の病院も患者の避難を余儀なくされ、同地域では事実上、医療機能が崩壊した状態となっている。

MSFによると、シテ・ソレイユでは2週間前から複数の武装ギャングによる戦闘が続き、週末にかけて銃撃戦が激化した。住民数百人がMSFの病院施設に逃げ込み、多くが院内で一夜を過ごしたという。しかし、流れ弾が施設内にまで飛び込み、警備員1人が負傷したことで、MSFは「患者と職員の安全を確保できない」と判断し、無期限で活動を停止した。

地元の病院も新生児集中治療室(NICU)の乳児を避難させた。MSFは移送されてきた妊婦や新生児の治療を続けてきたが、戦闘の長期化によって医療支援そのものが困難になっている。MSFは声明で「紛争地域では現在、開いている病院が一つもない」と強い危機感を示した。

この衝突はかつて同盟関係にあったギャング間の対立が原因とされる。現地ではギャング連合「ヴィヴ・アンサム(Viv Ansam)」が首都の大部分を支配してきたが、最近になって内部抗争が激化した。港湾地区や国際空港に近いシテ・ソレイユは戦略上重要な地域であり、勢力争いが市民生活を直撃している。

国連は4月末、シテ・ソレイユを含む北部地区で約5000人が避難を余儀なくされたと発表した。さらに5月初旬には穀倉地帯であるアルティボニット県でも4400人以上が家を追われたという。国内避難民は昨年末時点で145万人に達し、人口の1割超が住居を失っている。その多くが簡易テントや親族宅での生活を強いられている。

ハイチでは2021年にモイーズ(Jovenel Moise)大統領が暗殺されて以降、政治空白と治安悪化が続いている。選挙は長年実施されず、国家機能は著しく弱体化した。ギャングは警察を上回る武装力を身に着け、首都の9割を実効支配している。国連支援の多国籍部隊も展開されているが、人員不足や資金難に苦しみ、状況改善には至っていない。

暫定政府のフィスエイム(Alix Didier Fils-Aimé)首相は11日、「現在の治安状況では大統領選を8月に実施することは不可能」と認めた。民主的統治の回復が見通せない中、暴力と人道危機はさらに深刻化している。医療崩壊と大量避難が同時進行するハイチでは、国家そのものの存続が問われる事態となっている。

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