アジア燃料危機、ガソリン不足や物価高への対応迫られる各国政府
国連はこのエネルギー危機によってアジア太平洋地域で約880万人が新たに貧困状態に陥る可能性があると警告している。
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中東で続く米イラン戦争がアジア経済に打撃を与えている。原油や液化天然ガス(LNG)の供給混乱によるエネルギー危機が広がり、各国政府は燃料不足や物価高への対応を迫られている。戦争長期化によって、これまでの備蓄放出や補助金政策だけでは危機を抑えきれなくなりつつあり、アジア経済全体に深刻な影響が及んでいる。
発端となったのは、ペルシャ湾とインド洋を結ぶホルムズ海峡の機能不全である。同海峡は世界の石油輸送の2割を担う重要航路であり、日本、中国、韓国、インドなどアジア諸国は中東産エネルギーへの依存度が高い。戦闘激化によりタンカー航行が大幅に制限され、供給網が混乱した結果、国際指標であるブレント原油価格は一時1バレル=120ドル近くまで上昇した。
当初、各国は国家備蓄の放出やガソリン価格補助で危機をしのいでいた。中国は大量の石油備蓄を活用し、日本も戦略備蓄の一部を市場に供給した。しかし、戦争が長期化するにつれ、備蓄や財政支援には限界が見え始めている。専門家は「アジアの最初の防衛線が破られようとしている」と指摘する。
影響が特に深刻なのは新興国だ。バングラデシュでは燃料不足による停電が頻発し、縫製工場の稼働低下が輸出産業を直撃している。パキスタンやスリランカでも燃料価格高騰によって財政悪化が進み、公共交通機関の運行縮小や電力制限が導入された。タイやフィリピンでは企業活動時間の短縮や燃料配給制が導入され、市民生活への影響が拡大している。
国連はこのエネルギー危機によってアジア太平洋地域で約880万人が新たに貧困状態に陥る可能性があると警告している。また、地域経済全体で2990億ドル(約4.7兆円)規模の損失が発生するとの試算も出ている。原油高は輸送費や食品価格にも波及し、インフレ圧力を強めている。特に食料やガソリン・ディーゼルへの支出割合が高い低所得層への打撃は大きい。
こうした中、各国はエネルギー安全保障政策の見直しを急いでいる。東南アジア諸国連合(ASEAN)は緊急時の地域燃料備蓄制度や電力網統合の検討を開始した。韓国では原子力発電拡大論が再燃し、台湾でも停止中原発の再稼働議論が進むなど、脱中東依存を目指す動きが広がっている。
もっとも、専門家は「仮に戦争が終結しても、市場正常化には数カ月以上かかる」と指摘する。エネルギー価格高騰は企業収益や消費活動を圧迫し、世界経済全体の減速要因になりかねない。ロシアのウクライナ侵攻後に起きたエネルギー危機に続き、アジアは再び地政学リスクによる大規模な供給不安に直面している。今回の危機はエネルギーを海外依存に頼るアジア諸国の脆弱性を改めて浮き彫りにした。
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