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南ア大統領、ファームゲート疑惑で窮地に、国会が調査委員会設置へ

問題となっているのは、ラマポーザ氏所有の農場で多額の現金が盗まれた事件、いわゆる「ファームゲート」疑惑である。
2022年6月5日/南アフリカのラマポーザ大統領(Phando Jikelo/AfricanNews)

南アフリカのラマポーザ(Cyril Ramaphosa)大統領が自身の進退を揺るがす政治スキャンダルを受けて国民向け演説を行うことになり、同国政界に緊張が広がっている。問題となっているのは、ラマポーザ氏所有の農場で多額の現金が盗まれた事件、いわゆる「ファームゲート」疑惑である。憲法裁判所が大統領弾劾手続きを事実上再開させる判断を示したことで、ラマポーザ政権は就任以来最大級の危機に直面している。

問題の発端は2020年、ラマポーザ氏が所有する農場で起きた窃盗事件だった。農場内のソファに隠されていた大量の米ドル現金が盗まれたとされ、その後、この現金の出所や保管方法をめぐって疑惑が噴出した。ラマポーザ氏はこの現金について、水牛の売買による正当な収益であり、盗まれた額は約58万ドルだったと説明している。しかし、野党側や内部告発者は、実際には400万ドル近い現金が隠されていた可能性があると主張し、違法な外貨保有や脱税、さらには事件隠蔽の疑いまで指摘してきた。

2022年には独立調査委員会が、大統領による「重大な不正行為」があった可能性を示唆する報告書を提出した。しかし当時、与党・アフリカ民族会議(ANC)は国会で多数派を握っており、調査委員会の設置を阻止した。これによって、ラマポーザ氏は失職を免れたが、野党は「与党が大統領を守った」と強く反発していた。

情勢が大きく変化したのは今月8日である。憲法裁判所は2022年に国会が弾劾調査を止めた対応について「憲法に反する」と判断し、国会に調査委員会の設置を命じた。これにより弾劾手続きが再び動き出すことになり、ラマポーザ政権への圧力が一気に強まった。憲法裁は、国会には大統領を監視する責務があり、それを果たさなかったと指摘している。

ラマポーザ氏は憲法裁の判断について、「法の支配を尊重する」と述べ、自らの潔白を改めて主張した。一方、ANC幹部は「大統領は辞任しない」と明言しており、党としてラマポーザ支持を維持する姿勢を示している。もっとも、2024年総選挙でANCは過半数を失い、以前のように単独で政権を安定維持できる状況ではない。連立相手の動向次第では、政権基盤が揺らぐ可能性もある。

政治アナリストの間では、ラマポーザ氏が今回の国民向け演説で辞任を否定し、徹底抗戦の姿勢を打ち出すとの見方が強い。2018年に汚職体質からの脱却を掲げて当選したラマポーザ氏にとって、「ファームゲート」疑惑は政治的な正統性を根底から揺さぶる問題となっている。南アフリカでは近年、ズマ(Jacob Zuma,)前大統領時代の大規模汚職への反省から政治倫理への視線が厳しくなっており、今回の問題は民主政治の行方を占う試金石としても注目を集めている。

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