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フィリピン議会下院、サラ副大統領の弾劾決議案を可決

フィリピンで副大統領が弾劾されたことはない。
2026年5月11日/フィリピン、サラ副大統領の弾劾を求める集会(AP通信)

フィリピンの議会下院は11日、サラ・ドゥテルテ(Sara Duterte)副大統領の弾劾決議案を賛成多数で可決した。資産隠しや公金流用疑惑に加え、マルコス・ジュニア(Ferdinand Marcos Jr.)大統領への脅迫発言などが問題視されており、今後は上院で罷免の是非を判断する審議が行われる。サラ氏は2028大統領選の有力候補と目されていただけに、今回の可決はフィリピン政界に大きな衝撃を与えている。

下院採決では、318議席中257人が賛成、25人が反対、9人が棄権した。

フィリピンで副大統領が弾劾されたことはない。上院では24議席のうち3分の2以上、16人以上が支持した場合、ドゥテルテ氏は失職し、公職への立候補資格も失う。

問題の中心となっているのは、巨額資産をめぐる疑惑だ。下院調査ではサラ氏と夫に関連する銀行口座で、2006年から2025年にかけて約67億ペソ(約172億円)規模の不正取引が確認されたとされる。捜査当局は630件の高額取引報告と33件の疑わしい取引報告が存在すると説明している。野党は「説明不能な資産形成」と追及しているが、サラ陣営は「政治的攻撃だ」と全面否定している。

さらに問題視されているのが公金流用疑惑だ。サラ氏は副大統領府と教育省長官時代に機密費を不適切に支出したとされ、一部支出先が実在しない可能性も指摘されている。2024年以降、この問題を巡って複数の市民団体や宗教団体が弾劾請求を提出してきた。

今回の弾劾で特に政治的波紋を広げたのが、マルコス・ジュニア氏らへの脅迫発言だ。サラ氏は昨年のオンライン会見で、「私が殺害された場合には、暗殺者にマルコス・ジュニア大統領夫妻や下院議長を殺すよう指示した」と語り、大きな批判を浴びた。本人は「比喩的表現だった」と釈明したが、下院採決では「国家指導者への重大な脅迫」と認定された。

サラ氏は強硬な麻薬対策で知られたドゥテルテ(Rodrigo Roa Duterte)前大統領の長女で、2022大統領選でマルコス氏と連携し圧勝した。しかし政権発足後、両者の関係は急速に悪化した。外交・安全保障政策や予算配分を巡る対立が続き、昨年には内閣ポストを辞任。以後、政権批判を強めていた。

ドゥテルテ一族を巡っては、国際刑事裁判所(ICC)の動きも波紋を広げている。ドゥテルテ氏は麻薬戦争での超法規的殺害を巡り人道に対する罪で訴追されているほか、元国家警察長官で盟友のデラローサ(Ronald dela Rosa)上院議員にもICCが逮捕状を出したことが明らかになった。こうした国際的圧力もドゥテルテ陣営への逆風となっている。

ただ、上院で可決されるかは依然不透明だ。上院にはドゥテルテ家に近い議員も多く、上院議長もドゥテルテ派として知られる。世論調査でもサラ氏は依然高い人気を維持しており、支持者らは今回の弾劾を「マルコス陣営による政治的排除」と反発している。フィリピン政界は2028大統領選を見据えた権力闘争の色彩を一段と強めている。

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