SHARE:

米国の移民政策、高齢者介護に打撃、ハイチ移民TPS打ち切り

TPSは自然災害や紛争などで帰国が困難な外国人に一時的な滞在と就労を認める制度で、ハイチ人には2010年の大地震後に適用された。
中米ドミニカ共和国のハイチ国境近く、ハイチから逃れた難民(Getty Images/AFP通信)

米国で移民政策の厳格化が、高齢者介護の現場に深刻な影響を及ぼすとの懸念が広がっている。連邦最高裁判所がトランプ政権によるハイチ移民への一時保護資格(TPS)の終了を認めたことで、多くのハイチ出身介護職員が就労資格を失う可能性が高まり、人手不足に悩む介護施設や在宅介護サービスが対応を迫られている。影響を受けるのは介護職員だけでなく、日常生活を支えられてきた高齢者や障害者にも及ぶ。

ニューヨークで暮らす91歳のソランジュ・フレンチ(Solange French)さんは3年前からハイチ出身の介護士マーサ・ネルソン(Martha Nelson)さんの支援を受けてきた。食事や入浴の介助、通院の付き添い、買い物や家事まで日常生活のほとんどをネルソンさんに頼っており、「彼女なしでは生活は成り立たない」と話す。しかし、TPSが失効すればネルソンさんは米国に滞在し働き続けることが難しくなるため、フレンチさんは将来への不安を募らせている。

TPSは自然災害や紛争などで帰国が困難な外国人に一時的な滞在と就労を認める制度で、ハイチ人には2010年の大地震後に適用された。最高裁は6月、約35万人のハイチ人と約6000人のシリア人を対象とするTPSの終了を認める判断を示した。移民支援団体はこの決定が最大130万人規模のTPS保持者に影響する可能性があると警戒している。

介護業界では慢性的な人材不足が続いており、移民労働者への依存度が高い。米労働統計局などによると、米国の介護職全体の5人に1人は外国生まれで、在宅介護職員では約3分の1を移民が占める。ニューヨーク州の介護施設では、TPSを持つハイチ人職員19人を失う可能性があり、他施設でも代替要員の確保や既存職員の時間外勤務で対応せざるを得ない状況となっている。

ハイチでは現在も武装ギャングによる暴力や治安悪化が続き、多くのTPS保持者は帰国すれば生命の危険にさらされると訴える。一方で、米国内に残れば不法滞在となる可能性が高く、摘発への恐怖を抱えながら生活しなければならない。

介護施設の関係者は移民政策の変更は労働力不足をさらに悪化させるだけでなく、高齢化が進む米国社会全体の介護体制を揺るがしかねないと警鐘を鳴らしている。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします