ハイチギャングが首都の「ほぼ全域」を支配、国連が警告
ハイチはここ数十年の慢性的な政情不安、独裁政権、自然災害などにより、アメリカ大陸で最も貧しい国のひとつとなっている。2010年の大地震では20万人以上が死亡、その復興が進まぬ中、21年に地震が発生した。
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中米ハイチのギャングが首都ポルトープランスの「ほぼ全域」を支配した。国連薬物犯罪事務所(UNODC)が2日、明らかにした。
UNODCのワーリー(Ghada Fathy Waly)事務局長は国連安全保障理事会に対し、ポルトープランスのおよそ90%がギャングの支配下にあると指摘。「ギャングは首都だけでなく、周辺地域でも攻勢を強め、支配地域を拡大している」と警告した。
またワーリー氏は「ギャングが首都の支配をほぼ確立し、暫定政府は暴力を阻止できずにいる」と述べた。
さらに、南部や東部地域でもギャング暴力が急増しているとし、ギャングが幹線道路を支配し、警察や税関職員を攻撃していると非難した。
ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
ポルトープランスでは3年ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。大統領のポストは今も空席のままだ。
ポルトープランスの90%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。
ポルトープランスと周辺地域の暴力は昨年10月頃から激化。アルティボニット県ではグラン・グリフとみられる武装ギャングが複数の地区を襲撃し、市民少なくとも115人を虐殺した。逮捕者は出ていない。
最新のギャング間抗争は3月初めに勃発。ポルトープランスの大部分を支配するギャング連合「ヴィヴ・アンサム(Viv Ansam)」と対立する複数のギャングが民間人を巻き込みながら激しい縄張り争いを繰り広げている。
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は今月、ギャングがポルトープランスを越えて中央地域に影響力を拡大していると警告。今年1月から5月末までの間に少なくとも2680人がギャング暴力で死亡し、130万人もの市民が避難を余儀なくされていると報告した。
ワーリー氏はギャングが支配地域の空白を埋める形で並行政府を樹立していると指摘。主要な貿易ルートを支配することで利益を上げ、その結果、調理用燃料や主食である米の価格が急騰していると述べた。
暫定大統領評議会のアルフォンス・ジャン(Fritz Alphonse Jean)議長は先月、ギャングとの戦いを有利に進めるため、外国の民間軍事会社を雇っていることを初めて認めた。
米国やカナダはハイチ国連支援ミッション(MSS)を平和維持部隊に格上げするよう求めているが、中国とロシアが難色を示している。